枕草子145段 きよげなる男の

正月十よ日 枕草子
中巻上
145段
きよげなる男
碁を

(旧)大系:145段
新大系:138段、新編全集:139段
(以上全て三巻本系列本。しかし後二本の構成は2/3が一致せず混乱を招くので、以後、三巻本理論の根本たる『(旧)大系』に準拠すべきと思う)
(旧)全集=能因本:148段
 


 
 きよげなる男の、双六を日一日うちて、なほあかぬにや、みじかき灯台に火をともして、いとあかうかかげて、かたきの、賽を責め請ひてとみにも入れねば、筒を盤の上に立てて待つに、狩衣のくびの顔にかかれば、片手しておし入れて、こはからぬ烏帽子ふりやりつつ、「賽いみじく呪ふとも、うちはづしてむや」と、心もとなげにうちまもりたるこそ、ほこりかに見ゆれ。