枕草子 一本29 女房の参りまかでには

長谷に 枕草子
一本
29段
女房の
いやしげ

(旧)大系:一本29段
新大系:一本29段、新編全集:一本28段
(以上全て三巻本系列本。しかし後二本の構成は2/3が一致せず混乱を招くので、以後、三巻本理論の根本たる『(旧)大系』に準拠すべきと思う)
(旧)全集=能因本:316段
 


 
 女房の参りまかでには、人の車を借る折もあるに、いと心よういひて貸したるに、牛飼童、例のしもしよりもつよくいひて、いたう走り打つも、あなうたてとおぼゆるに、男どものものむつかしげなるけしきにて、「とう遣れ。夜ふけぬさきに」などいふこそ、主の心推しはかられて、またいひふれむともおぼえね。
 

 業遠の朝臣の車のみや、夜中暁わかず人の乗るに、いささかさることなかりけれ。
 ようこそ教へ習はしけれ。
 それに、道にあひたりける女車の、ふかき所に落とし入れて、えひき上げで、牛飼の腹立ちければ、従者して打たせさへしけれは、まいていましめおきたるこそ。
 
 

長谷に 枕草子
一本
29段
女房の
いやしげ