奥の細道 最上川:原文対照

立石寺 奥の細道
最上川
出羽三山


『おくのほそ道』
素龍清書原本 校訂
『新釈奥の細道』
   最上川乗らんと、 もかみ川のらんと
  大石田といふ所に日和を待つ。 大石田と云所に日和を待
  ここに古き俳諧の種こぼれて、 こゝに古き古きノ二字一本ニナシ俳諧のたねこぼれて
  忘れぬ花の昔を慕ひ、 忘ぬ花の昔をしたひ
  芦角一声の心をやはらげ、この道にさぐり足して、 蘆角一聲の心をやはらげ此道にさぐり足して
  新古二道に踏み迷ふといへども、 新古二道にふみまどふといへども
  道しるべする人しなければと、 道しるべする人〳〵なければと
  わりなき一巻残しぬ。 わりなき一卷をのこしぬ
  このたびの風流ここに至れり。 此度の風流こゝにいたれり
     
   最上川は陸奥より出でて、山形を水上とす。 もかみ川はみちのくより出で山形をみなかみとす
  碁点、隼などいふ恐ろしき難所あり。 こでん隼などいふおそろしき難所有り
  板敷山の北を流れて、果ては酒田の海に入る。 板敷山の北を流てはては酒田の海に入る
  左右山覆ひ、茂みの中に舟を下す。 左右山覆ひしげみの中に船を下す
  これに稲積みたるをや、稲舟といふならし。 是にいねつみたるをやいな舟といふならし
  白糸の滝は、青葉のひまひまに落ちて、 白糸の瀧は靑葉のひま〳〵に落て
  仙人堂、岸に臨んで立つ。 仙人堂岸に溢て立
  水みなぎつて、舟危し。 水漲て舟あやぶし
     

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 五月雨を あつめて早し 最上川  五月雨を あつめて早し一本涼しトアリ 最上川
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