枕草子24段 生ひ先なくまめやかに

清涼殿の 枕草子
上巻上
24段
生ひ先
すさまじき

(旧)大系:24段
新大系:21段、新編全集:22段
(以上全て三巻本系列本。しかし後二本の構成は2/3が一致せず、混乱を招くので、三巻本理論の根本たる『(旧)大系』に準拠すべきと思う)
(旧)全集=能因本:21段
 


 
 生ひ先なく、まめやかに、えせざいはひなど見てゐたらむ人は、いぶせくあなづらはしく思ひやられて、なほさりぬべからむ人のむすめなどは、さしまじらはせ、世のありさまも見せならはさまほしう、内侍のすけなどにてしばしもあらせばや、とこそおぼゆれ。
 

 宮仕へする人を、あはあはしう悪きことにいひ思ひたる男などこそ、いとにくけれ。
 げにそもまたさることぞかし。かけまくもかしこき御前をはじめ奉りて、上達部、殿上人、五位、四位はさらにもいはず、見ぬ人は少なくこそあらめ。女房の従者、その里より来る者、長女、御厠人の従者、たびしかはらといふまで、いつかはそれをはじかくれたりし。殿ばらなどはいとさしもやあらざらむ、それもあるかぎりかは、しかさぞあらむ。
 

 うへなどをいひてかしづきすゑたらむに、心にくからずおぼえむ、ことわりなれど、また内裏の内侍のすけなどいひて、折々内裏へ参り、祭の使などに出でたるも、おもだたしからずやはある。さてこもりゐぬるは、まいてめでたし。受領の五節いだすをりなど、いとひなびいひ知らぬことなど、人に問ひ聞きなどはせじかし。心にくきものなり。