枕草子303段 宮仕へする人々の出で集りて

十二月廿四日 枕草子
下巻下
303段
宮仕へ
見ならひ

(旧)大系:303段
新大系:284段、新編全集:284段
(以上全て三巻本系列本。しかし後二本の構成は2/3が一致せず混乱を招くので、以後は最も索引性に優れ三巻本理論の根本たる『(旧)大系』に準拠すべきと思う)
(旧)全集=能因本:283(宮仕え), 284段(家ひろく)
 


 
 宮仕へする人々の出で集りて、おのが君々の御ことめできこえ、宮のうち、殿ばらのことども、かたみに語りあはせたるを、その家のあるじにて聞くこそをかしけれ。
 

 家ひろく清げにて、わが親族はさらなり、うち語らひなどする人も、宮仕へ人を方々に据ゑてこそあらせまほしけれ。さべき折はひとところに集まりゐて物語し、人のよみたりし歌、なにくれと語りあはせて、人の文など持て来るも、もろともに見、返りごとを書き、また、むつまじう来る人もあるは、清げにうちしつらひて、雨など降りてえ帰らぬも、をかしうもてなし、参らむ折は、そのこと見入れ、思はむさまにして出だしいでなどせばや。
 

 よき人のおはしますありさまなどのいとゆかしきこそ、けしからぬ心にや。
 
 

十二月廿四日 枕草子
下巻下
303段
宮仕へ
見ならひ