源氏物語 藤袴:巻別和歌8首・逐語分析

行幸 源氏物語
和歌一覧
各巻別内訳
30帖 藤袴
真木柱

 
 源氏物語・藤袴(ふじばかま)巻の和歌8首を抜粋一覧化し、現代語訳と歌い手を併記、原文対訳の該当部と通じさせた。

 

 内訳:3(玉鬘)、1×5(夕霧、柏木、髭黒、蛍兵部卿宮、左兵衛督)※最初最後
 

藤袴・和歌の対応の程度と歌数
和歌間の文字数
即答 0  40字未満
応答 4首  40~100字未満
対応 4首  ~400~1000字+対応関係文言
単体 1首  単一独詠・直近非対応

※分類について和歌一覧・総論部分参照。

 

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 上下の句に分割したバージョン。見やすさに応じて。

 なお、付属の訳はあくまで通説的理解の一例なので、訳が原文から離れたり対応していない場合、より精度の高い訳を検討されたい。
 


  原文
(定家本校訂)
現代語訳
(渋谷栄一)
399
同じ野の
にやつるる
藤袴
あはれはかけよ
かことばかりも
〔夕霧〕あなたと同じ野の
露に濡れて萎れている
藤袴です
やさしい言葉をかけて下さい、
ほんの申し訳にでも
400
尋ぬるに
はるけき野辺の
ならば
薄紫や
かことならまし
〔玉鬘〕尋ねてみて
遥かに遠い野辺の
露だったならば
薄紫の
ご縁とは言いがかりでしょう
401
妹背山
深き道をば
尋ねずて
緒絶の橋に
踏み迷ひけるよ
〔柏木〕実の姉弟
という関係を
知らずに
遂げられない恋の道に
踏み迷って文を贈ったことですよ
402
惑ひける
道をば知らず
妹背山
たどたどしくぞ
誰も踏み見し
〔玉鬘〕事情を
ご存知なかったとは知らず

どうしてよいか分からない
お手紙を拝見しました
403
贈:
数ならば
厭ひもせまし
長月に
命をかくる
ほどぞはかなき
〔髭黒→玉鬘〕人並みであったら
嫌いもしましょうに、
九月を
頼みにしているとは、
何とはかない身の上なのでしょう
404
日さす
を見ても
玉笹の
葉分けの霜を
たずもあらなむ
〔蛍兵部卿宮:源氏弟〕朝日さす
帝の御寵愛を受けられたとしても

霜のようにはかない
わたしのことを忘れないでください
405
贈:
忘れなむ
と思ふもものの
悲しきを
いかさまにして
いかさまにせむ
〔左兵衛督→玉鬘〕忘れよう
と思う一方で
それがまた悲しいのを
どのようにして
どのようにしたらよいものでしょうか
406
心もて
に向かふ
葵だに
おく霜を
おのれやは
〔玉鬘〕自分から
光に向かう
葵でさえ
朝置いた霜を
自分から消しましょうか