古事記 倭建:女装で武装~原文対訳

熊襲を襲撃 古事記
中巻⑤
12代 景行天皇
ヤマトタケルの物語
④女装で武装
熊襲を襲名
原文 書き下し
(武田祐吉)
現代語訳
(武田祐吉)
爾臨其樂日。 ここにその樂の日になりて、 いよいよ宴會の日になつて、
如童女之髮。
梳垂。
其結御髮。
童女をとめの髮のごと
その結はせる髮を
梳けづり垂れ、
結つておいでになる髮を
孃子の髮のように
梳けずり下げ、
服其姨之
御衣
御裳。
その姨みをばの
御衣みそ
御裳みもを服けして、
叔母樣の
お衣裳をお著つけになつて
既成童女之姿。 既に童女の姿になりて、 孃子の姿になつて
交立女人之中。 女人をみなの中に交り立ちて、 女どもの中にまじり立つて、
入坐其室内。 その室内むろぬちに入ります。 その室の中におはいりになりました。
     
爾熊曾建
兄弟二人。
ここに熊曾建くまそたける
兄弟二人、
ここにクマソタケルの
兄弟二人が、
見感其孃子。 その孃子を見感めでて、 その孃子を見て感心して、
坐於己中而。 おのが中に坐ませて、 自分たちの中にいさせて
盛樂。 盛に樂うたげつ。 盛んに遊んでおりました。
     
故臨其酣時。 かれその酣たけなはなる時になりて、 その宴の盛んになつた時に、
自懷出劔。 御懷より劒を出だし、 命は懷から劒を出し、
取熊曾之
衣衿。
熊曾くまそが
衣の矜くびを取りて、
クマソタケルの
衣の襟を取つて
以劔自
其胸刺通之時。
劒もちて
その胸より刺し通したまふ時に、
劒をもつて
その胸からお刺し通し遊ばされる時に、
其弟建。 その弟おと建たける その弟のタケルが
見畏逃出。 見畏みて逃げ出でき。 見て畏れて逃げ出しました。
     

追至
其室之
椅本。
すなはち
その室の
椅はしの本に
追ひ至りて、
そこで
その室の
階段のもとに
追つて行つて、
取其背。 背の皮を取り 背の皮をつかんで
以劔自尻刺通。 劒を尻より刺し通したまひき。 うしろから劒で刺し通しました。
熊襲を襲撃 古事記
中巻⑤
12代 景行天皇
ヤマトタケルの物語
④女装で武装
熊襲を襲名