古今和歌集 巻三 夏:歌の配置・コメント付

目次
       

135
柿?

136
利貞
137
不知
138
伊勢
139
不知
140
不知
141
不知
142
不知
143
友則
144
素性
145
素性
146
不知
147
不知
148
不知
149
不知
150
不知
151
不知
152
不知
153
友則
154
友則
155
千里
156
貫之
157
忠岑
158
不知
159
秋岑
160
貫之
161
躬恒
162
貫之
163
忠岑
164
躬恒
165
遍昭
166
深養
167
躬恒
168
躬恒
   
 
※夏なのに柿から始まる。季節は秋春に偏重し冬夏が薄い。詞書も少ない。

 
 

巻三:夏

   
   0135
詞書 題しらす/このうた、ある人のいはく、
かきのもとの人まろかなり
作者 よみ人しらす
一説、かきのもとの人まろ(柿本人麻呂)
原文 わかやとの 池の藤波 さきにけり
 山郭公 いつかきなかむ
かな わかやとの いけのふちなみ さきにけり
 やまほとときす いつかきなかむ
   
  0136
詞書 う月にさけるさくらを見てよめる
作者 紀としさた(紀利貞)
原文 あはれてふ 事をあまたに やらしとや
 春におくれて ひとりさくらむ
かな あはれてふ ことをあまたに やらしとや
 はるにおくれて ひとりさくらむ
   
  0137
詞書 題しらす
作者 よみ人しらす
原文 さ月まつ 山郭公 うちはふき
 今もなかなむ こそのふるこゑ
かな さつきまつ やまほとときす うちはふき
 いまもなかなむ こそのふるこゑ
   
  0138
詞書 題しらす
作者 伊勢(伊勢の御)
原文 五月こは なきもふりなむ 郭公
 またしきほとの こゑをきかはや
かな さつきこは なきもふりなむ ほとときす
 またしきほとの こゑをきかはや
   
  0139
詞書 題しらす
作者 よみ人しらす
原文 さつきまつ 花橘の かをかけは
 昔の人の 袖のかそする
かな さつきまつ はなたちはなの かをかけは
 むかしのひとの そてのかそする
   
  0140
詞書 題しらす
作者 よみ人しらす
原文 いつのまに さ月きぬらむ あしひきの
 山郭公 今そなくなる
かな いつのまに さつききぬらむ あしひきの
 やまほとときす いまそなくなる
   
  0141
詞書 題しらす
作者 よみ人しらす
原文 けさきなき いまたたひなる 郭公
 花たちはなに やとはからなむ
かな けさきなき いまたたひなる ほとときす
 はなたちはなに やとはからなむ
   
  0142
詞書 おとは山をこえける時に
郭公のなくをききてよめる
作者 きのとものり(紀友則)
原文 おとは山 けさこえくれは 郭公
 こすゑはるかに 今そなくなる
かな おとはやま けさこえくれは ほとときす
 こすゑはるかに いまそなくなる
   
  0143
詞書 郭公のはしめてなきけるをききてよめる
作者 そせい(素性法師)
原文 郭公 はつこゑきけは あちきなく
 ぬしさたまらぬ こひせらるはた
かな ほとときす はつこゑきけは あちきなく
 ぬしさたまらぬ こひせらるはた
   
  0144
詞書 ならのいそのかみてらにて
郭公のなくをよめる
作者 そせい(素性法師)
原文 いそのかみ ふるき宮この 郭公
 声はかりこそ むかしなりけれ
かな いそのかみ ふるきみやこの ほとときす
 こゑはかりこそ むかしなりけれ
   
  0145
詞書 題しらす
作者 よみ人しらす
原文 夏山に なく郭公 心あらは
 物思ふ我に 声なきかせそ
かな なつやまに なくほとときす こころあらは
 ものおもふわれに こゑなきかせそ
   
  0146
詞書 題しらす
作者 よみ人しらす
原文 郭公 なくこゑきけは わかれにし
 ふるさとさへそ こひしかりける
かな ほとときす なくこゑきけは わかれにし
 ふるさとさへそ こひしかりける
   
  0147
詞書 題しらす
作者 よみ人しらす
原文 ほとときす なかなくさとの あまたあれは
 猶うとまれぬ 思ふものから
かな ほとときす なかなくさとの あまたあれは
 なほうとまれぬ おもふものから
コメ 出典:伊勢43段(名のみ立つ)。
これは伊勢の著者の作なので、文屋作。
伊勢の歌は全て文屋作。そう見ないから説明がつかない。
そう見れば全てすんなり通る。
   
  0148
詞書 題しらす
作者 よみ人しらす
原文 思ひいつる ときはの山の 郭公
 唐紅の ふりいててそなく
かな おもひいつる ときはのやまの ほとときす
 からくれなゐの ふりいててそなく
   
  0149
詞書 題しらす
作者 よみ人しらす
原文 声はして 涙は見えぬ 郭公
 わか衣手の ひつをからなむ
かな こゑはして なみたはみえぬ ほとときす
 わかころもての ひつをからなむ
   
  0150
詞書 題しらす
作者 よみ人しらす
原文 あしひきの 山郭公 をりはへて
 たれかまさると ねをのみそなく
かな あしひきの やまほとときす をりはへて
 たれかまさると ねをのみそなく
   
  0151
詞書 題しらす
作者 よみ人しらす
原文 今さらに 山へかへるな 郭公
 こゑのかきりは わかやとになけ
かな いまさらに やまへかへるな ほとときす
 こゑのかきりは わかやとになけ
   
  0152
詞書 題しらす
作者 みくにのまち
原文 やよやまて 山郭 公事つてむ
 我世中に すみわひぬとよ
かな やよやまて やまほとときす ことつてむ
 われよのなかに すみわひぬとよ
   
  0153
詞書 寛平御時きさいの宮の歌合のうた
作者 紀とものり(紀友則)
原文 五月雨に 物思ひをれは 郭公
 夜ふかくなきて いつちゆくらむ
かな さみたれに ものおもひをれは ほとときす
 よふかくなきて いつちゆくらむ
   
  0154
詞書 寛平御時きさいの宮の歌合のうた
作者 紀とものり(紀友則)
原文 夜やくらき 道やまとへる ほとときす
 わかやとをしも すきかてになく
かな よやくらき みちやまとへる ほとときす
 わかやとをしも すきかてになく
   
  0155
詞書 寛平御時きさいの宮の歌合のうた
作者 大江千里
原文 やとりせし 花橘も かれなくに
 なとほとときす こゑたえぬらむ
かな やとりせし はなたちはなも かれなくに
 なとほとときす こゑたえぬらむ
   
  0156
詞書 寛平御時きさいの宮の歌合のうた
作者 きのつらゆき(紀貫之)
原文 夏の夜の ふすかとすれは 郭公
 なくひとこゑに あくるしののめ
かな なつのよの ふすかとすれは ほとときす
 なくひとこゑに あくるしののめ
   
  0157
詞書 寛平御時きさいの宮の歌合のうた
作者 みふのたたみね(壬生忠岑)
原文 くるるかと 見れはあけぬる なつのよを
 あかすとやなく 山郭公
かな くるるかと みれはあけぬる なつのよを
 あかすとやなく やまほとときす
   
  0158
詞書 寛平御時きさいの宮の歌合のうた
作者 紀秋岑(きのあきみね、紀秋峰)
原文 夏山に こひしき人や いりにけむ
 声ふりたてて なく郭公
かな なつやまに こひしきひとや いりにけむ
 こゑふりたてて なくほとときす
   
  0159
詞書 題しらす
作者 よみ人しらす
原文 こその夏 なきふるしてし 郭公
 それかあらぬか こゑのかはらぬ
かな こそのなつ なきふるしてし ほとときす
 それかあらぬか こゑのかはらぬ
   
  0160
詞書 郭公のなくをききてよめる
作者 つらゆき(紀貫之)
原文 五月雨の そらもととろに 郭公
 なにをうしとか よたたなくらむ
かな さみたれの そらもととろに ほとときす
 なにをうしとか よたたなくらむ
   
  0161
詞書 さふらひにて
をのことものさけたうへけるに、
めして郭公まつうたよめとありけれはよめる
作者 みつね(凡河内躬恒)
原文 ほとときす こゑもきこえす 山ひこは
 ほかになくねを こたへやはせぬ
かな ほとときす こゑもきこえす やまひこは
 ほかになくねを こたへやはせぬ
   
  0162
詞書 山に郭公のなきけるをききてよめる
作者 つらゆき(紀貫之)
原文 郭公 人まつ山に なくなれは
 我うちつけに こひまさりけり
かな ほとときす ひとまつやまに なくなれは
 われうちつけに こひまさりけり
   
  0163
詞書 はやくすみける所にて
ほとときすのなきけるをききてよめる
作者 たたみね(壬生忠岑)
原文 むかしへや 今もこひしき 郭公
 ふるさとにしも なきてきつらむ
かな むかしへや いまもこひしき ほとときす
 ふるさとにしも なきてきつらむ
   
  0164
詞書 郭公のなきけるをききてよめる
作者 みつね(凡河内躬恒)
原文 郭公 我とはなしに 卯花の
 うき世中に なきわたるらむ
かな ほとときす われとはなしに うのはなの
 うきよのなかに なきわたるらむ
   
  0165
詞書 はちすのつゆを見てよめる
作者 僧正へんせう(遍昭、良岑宗貞)
原文 はちすはの にこりにしまぬ 心もて
 なにかはつゆを 玉とあさむく
かな はちすはの にこりにしまぬ こころもて
 なにかはつゆを たまとあさむく
   
  0166
詞書 月のおもしろかりける夜、
あかつきかたによめる
作者 深養父(清原深養父)
原文 夏の夜は またよひなから あけぬるを
 雲のいつこに 月やとるらむ
かな なつのよは またよひなから あけぬるを
 くものいつこに つきやとるらむ
コメ 百人一首36
なつのよは まだよひながら あけぬるを
 くものいづこに つきやどるらむ
/夏の夜は まだ宵ながら 明けぬるを
 雲のいづこに 月宿るらむ
   
  0167
詞書 となりより
とこなつの花をこひにおこせたりけれは、
をしみてこのうたをよみてつかはしける
作者 みつね(凡河内躬恒)
原文 ちりをたに すゑしとそ思ふ さきしより
 いもとわかぬる とこ夏のはな
かな ちりをたに すゑしとそおもふ さきしより
 いもとわかぬる とこなつのはな
   
  0168
詞書 みな月のつこもりの日よめる
作者 みつね(凡河内躬恒)
原文 夏と秋と 行きかふそらの かよひちは
 かたへすすしき 風やふくらむ
かな なつとあきと ゆきかふそらの かよひちは
 かたへすすしき かせやふくらむ