宇治拾遺物語:浄蔵が八坂の坊に強盗入る事

堀河院 宇治拾遺物語
巻第十
10-4 (117)
浄蔵が八坂の坊
播磨守の子

 
 これも今は昔、天暦のころほひ、浄蔵が八坂の坊に、強盗その数入り乱れたり。
 然るに火をともし、太刀を抜き、目を見張りて、おのおの立ちすくみて、さらにする事なし。
 かくて数刻を経。
 夜やうやう明けんとする時、ここに浄蔵、本尊に啓白して、「早く許し遣はすべし」と申しけり。
 その時に盗人ども、いたづらにて逃げ帰りけるとか。