枕草子187段 かしこきものは

位こそ 枕草子
中巻中
187段
かしこき
病は

(旧)大系:187段
新大系:180段、新編全集:180段
(以上全て三巻本系列本。しかし後二本の構成は2/3が一致せず混乱を招くので、以後、三巻本理論の根本たる『(旧)大系』に準拠すべきと思う)
(旧)全集=能因本:26, 240段
(にくきもの、乳母の男こそあれ,同)
 


 
 かしこきものは、乳母のをとここそあれ。帝、親王たちなどは、さるものにておきたてまつりつ。そのつぎつぎ、受領の家などにも、所につけたるおぼえのわづらはしきものにしたれば、したり顔に、わが心地もいとよせありて、このやしなひたる子をも、むげにわがものになして、女はされどあり、男児はつとたちそひて後見、いささかもかの御ことにたがふ者をばつめたて、讒言し、あしけれど、これが世をば心にまかせていふ人もなければ、ところ得、いみじき面持ちして、こと行ひなどす。
 

 むげにをさなきほどぞすこし人わろき。親の前に臥すれば、ひとり局に臥したり。さりとてほかへいけば、こと心ありとてさわがれぬべし。しひて呼びおろして臥したるに、「まづまづ」と呼ばるれば、冬の夜など、ひきさがしひきさがしのぼりぬるがいとわびしきなり。それはよき所もおなじこと、いますこしわづらはしきことのみこそあれ。
 
 

位こそ 枕草子
中巻中
187段
かしこき
病は