枕草子198段 八九月ばかりに

風は 枕草子
中巻下
198段
八九月
九月つごもり

(旧)大系:198段
新大系:188段-2、新編全集:188段-2
(以上全て三巻本系列本。しかし後二本の構成は2/3が一致せず混乱を招くので、以後最も索引性に優れる三巻本理論の根本たる『(旧)大系』に準拠すべきと思う)
(旧)全集=能因本:185段
 


 
 八九月ばかりに雨にまじりて吹きたる風、いとあはれなり。雨の脚横さまにさわがしう吹きたるに、夏とほしたる綿衣のかかりたるを、生絹の単衣かさねて着たるも、いとをかし。この生絹だにいと所せく暑かはしく、とり捨てまほしかりしに、いつのほどにかくなりぬるにか、と思ふもをかし。
 暁に格子、妻戸をおしあけたれば、嵐のさと顔にしみたるこそ、いみじくをかしけれ。
 
 

風は 枕草子
中巻下
198段
八九月
九月つごもり