枕草子267段 世の中になほいと心うきものは

いみじう 枕草子
下巻中
267段
世の中に
男こそ

(旧)大系:267段
新大系:248段、新編全集:249段
(以上全て三巻本系列本。しかし後二本の構成は2/3が一致せず混乱を招くので、以後は最も索引性に優れ三巻本理論の根本たる『(旧)大系』に準拠すべきと思う)
(旧)全集=能因本:ナシ
 


 
 世の中になほいと心うきものは、人ににくまれむことこそあるべけれ。たれてふ物狂ひか、われ人にさ思はれむとは思はむ。されど、自然に宮仕へ所にも、親、はらからの中にても、思はるる思はれぬがあるぞいとわびしきや。
 

 よき人の御ことはさらなり、下衆などのほども、親などのかなしうする子は、目たて耳たてられて、いたはしうこそおぼゆれ。見るかひあるは理、いかが思はざらむとおぼゆ。異なることなきは、また、これをかなしと思ふらむは、親なればぞかしとあはれなり。
 

 親にも、君にも、すべて、うち語らふ人にも、人に思はれむばかりめでたきことはあらじ。
 
 

いみじう 枕草子
下巻中
267段
世の中に
男こそ