古今和歌集 巻八 離別:歌の配置・コメント付

巻七:賀 古今和歌集
巻八
離別歌
巻九:羈旅
目次
  365
行平
366
不知
367
不知
368
千古母
369
利貞
370
利貞
371
貫之
372
滋春
373
淳行
374
万雄
375
不知
376
377
不知
378
深養
379
秀崇
380
貫之
381
貫之
382
躬恒
383
躬恒
384
貫之
385
兼茂
386
元規
387
白女
388
源実
389
兼茂
390
貫之
391
兼輔
392
遍昭
393
幽仙
394
遍昭
395
幽仙
396
兼芸
397
貫之
398
兼覧
399
躬恒
400
不知
401
不知
402
不知
403
不知
404
貫之
405
友則
 
 
※374の万雄(よろずお)とか、白女とか変な名前が多い。前者はまずペンネーム。後者は源氏名。源実が名づけて源氏名か。だから単純。
 この白女は遊女で源実は湯浴みに行ったという。つまり湯女を買いに行った。「つくしへゆあむ」は、色街に行くことと伊勢61段(染河)で説明される。竹取にもあり、これは古典の挨拶みたいなもの。色々緩い貴族を象徴してもいる。
 白女はいうなれば、あ○いそらの歌が宮中の歌集にのった。さすが大国。少々古いのはご愛嬌。女子に色を当てるのは、その意味では素直。白だからオレ色に、オレの染色体で染めたる?(色々酷いので失敗)。いや、だって染色体って…。

 
 

巻八:離別

   
   0365
詞書 題しらす
作者 在原行平朝臣
原文 立ちわかれ いなはの山の 峰におふる
 松としきかは 今かへりこむ
かな たちわかれ いなはのやまの みねにおふる
 まつとしきかは いまかへりこむ
コメ 百人一首16
たちわかれ いなばのやまの みねにおふる
 まつとしきかば いまかへりこむ
/立別れ いなばの山の 嶺におふる
 まつとし聞かば 今帰り来む
   
  0366
詞書 題しらす
作者 よみ人しらす
原文 すかるなく 秋のはきはら あさたちて
 旅行く人を いつとかまたむ
かな すかるなく あきのはきはら あさたちて
 たひゆくひとを いつとかまたむ
   
  0367
詞書 題しらす
作者 よみ人しらす
原文 限なき 雲ゐのよそに わかるとも
 人を心に おくらさむやは
かな かきりなき くもゐのよそに わかるとも
 ひとをこころに おくらさむやは
   
  0368
詞書 をののちふるか
みちのくのすけにまかりける時に、
ははのよめる
作者 をののちふるの母
(※小野千古母? 父は好古。詳細不明
原文 たらちねの おやのまもりと あひそふる
 心はかりは せきなととめそ
かな たらちねの おやのまもりと あひそふる
 こころはかりは せきなととめそ
   
  0369
詞書 さたときのみこの家にて、
ふちはらのきよふか
あふみのすけにまかりける時に、
むまのはなむけしける夜よめる
作者 きのとしさた(紀利貞)
原文 けふわかれ あすはあふみと おもへとも
 夜やふけぬらむ 袖のつゆけき
かな けふわかれ あすはあふみと おもへとも
 よやふけぬらむ そてのつゆけき
   
  0370
詞書 こしへまかりける人によみてつかはしける
作者 きのとしさた(紀利貞)
原文 かへる山 ありとはきけと 春霞
 立別れなは こひしかるへし
かな かへるやま ありとはきけと はるかすみ
 たちわかれなは こひしかるへし
   
  0371
詞書 人のむまのはなむけにてよめる
作者 きのつらゆき(紀貫之)
原文 をしむから こひしきものを 白雲の
 たちなむのちは なに心地せむ
かな をしむから こひしきものを しらくもの
 たちなむのちは なにここちせむ
   
  0372
詞書 ともたちの人のくにへまかりけるによめる
作者 在原しけはる(在原滋春)
原文 わかれては ほとをへたつと おもへはや
 かつ見なからに かねてこひしき
かな わかれては ほとをへたつと おもへはや
 かつみなからに かねてこひしき
   
  0373
詞書 あつまの方へまかりける人に
よみてつかはしける
作者 いかこのあつゆき
(※伊香子淳行? 詳細不明)
原文 おもへとも 身をしわけねは めに見えぬ
 心を君に たくへてそやる
かな おもへとも みをしわけねは めにみえぬ
 こころをきみに たくへてそやる
   
  0374
詞書 あふさかにて人をわかれける時によめる
作者 なにはのよろつを
(※難波万雄? 詳細不明)
原文 相坂の 関しまさしき 物ならは
 あかすわかるる 君をととめよ
かな あふさかの せきしまさしき ものならは
 あかすわかるる きみをととめよ
コメ 作者名は、難波津とよろず、万葉と万男とかけ、ナニワの「何でも詠むお」をかけているだろう。
同じ逢坂の関を詠んだ蝉丸・猿丸(人丸に当てている)とセットで、まず文屋のペンネームと思われる。
   
  0375
詞書 題しらす
/このうたは、ある人、
つかさをたまはりてあたらしきめにつきて
としへてすみける人をすてて
たたあすなむたつとはかりいへりける時に、
ともかうもいはてよみてつかはしける
作者 よみ人しらす
原文 唐衣 たつ日はきかし あさつゆの
 おきてしゆけは けぬへきものを
かな からころも たつひはきかし あさつゆの
 おきてしゆけは けぬへきものを
   
  0376
詞書 ひたちへまかりける時に、
ふちりはらのきみとしによみてつかはしける
作者 寵(※「うつく」と読み、源精の娘ともされるが、詳細不明)
原文 あさなけに 見へききみとし たのまねは
 思ひたちぬる 草枕なり
かな あさなけに みへききみとし たのまねは
 おもひたちぬる くさまくらなり
   
  0377
詞書 きのむねさたかあつまへまかりける時に、
人の家にやとりて
暁いてたつとてまかり申ししけれは、
女のよみていたせりける
作者 よみ人しらす
原文 えそしらぬ 今心みよ いのちあらは
 我やわするる 人やとはぬと
かな えそしらぬ いまこころみよ いのちあらは
 われやわするる ひとやとはぬと
   
  0378
詞書 あひしりて侍りける人の
あつまの方へまかりけるをおくるとてよめる
作者 ふかやふ(清原深養父)
原文 雲ゐにも かよふ心の おくれねは
 わかると人に 見ゆはかりなり
かな くもゐにも かよふこころの おくれねは
 わかるとひとに みゆはかりなり
   
  0379
詞書 とものあつまへまかりける時によめる
作者 よしみねのひてをか(良岑秀崇)
原文 白雲の こなたかなたに 立ちわかれ
 心をぬさと くたくたひかな
かな しらくもの こなたかなたに たちわかれ
 こころをぬさと くたくたひかな
   
  0380
詞書 みちのくにへまかりける人に
よみてつかはしける
作者 つらゆき(紀貫之)
原文 しらくもの やへにかさなる をちにても
 おもはむ人に 心へたつな
かな しらくもの やへにかさなる をちにても
 おもはむひとに こころへたつな
   
  0381
詞書 人をわかれける時によみける
作者 つらゆき(紀貫之)
原文 わかれてふ 事はいろにも あらなくに
 心にしみて わひしかるらむ
かな わかれてふ ことはいろにも あらなくに
 こころにしみて わひしかるらむ
   
  0382
詞書 あひしれりける人のこしのくににまかりて、
としへて京にまうてきて
又かへりける時によめる
作者 凡河内みつね(凡河内躬恒)
原文 かへる山 なにそはありて あるかひは
 きてもとまらぬ 名にこそありけれ
かな かへるやま なにそはありて あるかひは
 きてもとまらぬ なにこそありけれ
   
  0383
詞書 こしのくにへまかりける人に
よみてつかはしける
作者 凡河内みつね(凡河内躬恒)
原文 よそにのみ こひやわたらむ しら山の
 雪見るへくも あらぬわか身は
かな よそにのみ こひやわたらむ しらやまの
 ゆきみるへくも あらぬわかみは
   
  0384
詞書 おとはの山のほとりにて
人をわかるとてよめる
作者 つらゆき(紀貫之)
原文 おとは山 こたかくなきて 郭公
 君か別を をしむへらなり
かな おとはやま こたかくなきて ほとときす
 きみかわかれを をしむへらなり
   
  0385
詞書 藤原ののちかけかからもののつかひに
なか月のつこもりかたにまかりけるに、
うへのをのこともさけたうひける
ついてによめる
作者 ふちはらのかねもち(藤原兼茂)
原文 もろともに なきてととめよ 蛬
 秋のわかれは をしくやはあらぬ
かな もろともに なきてととめよ きりきりす
 あきのわかれは をしくやはあらぬ
   
  0386
詞書 藤原ののちかけかからもののつかひに
なか月のつこもりかたにまかりけるに、
うへのをのこともさけたうひける
ついてによめる
作者 平もとのり(平元規)
原文 秋霧の ともにたちいてて わかれなは
 はれぬ思ひに 恋ひや渡らむ
かな あききりの ともにたちいてて わかれなは
 はれぬおもひに こひやわたらむ
   
  0387
詞書 源のさねか
つくしへゆあみむとてまかりけるに、
山さきにてわかれをしみける所にてよめる
作者 しろめ(※白女)
原文 いのちたに 心にかなふ 物ならは
 なにか別の かなしからまし
かな いのちたに こころにかなふ ものならは
 なにかわかれの かなしからまし
コメ 白女は遊女で、大江玉淵という貴族の養子とのこと。
よってここでの湯浴みはそういう文脈(遊女を買おうとした)。
この際、兼茂(かねもち)と歌を贈答したとある(389)。
さねのかねがないってさ。ざんネンだワ。これが源実(?)
この歌の心は、わたしはそこまで安くない。悲しいわ。もうちっとマシなもんだせや。
ナニを出したのかは知りません。粗末なものだったのかもしれません。それで身請け・水揚げに失敗したと。
つまり「筑紫に湯浴み」にいくが、水揚げの由来と思われる。
水揚げを海女の陸揚げと掛け、その心は、普通の女・一般人にする。
金じゃない関係にするのに金が必要とはこれいかに。その心は結局金次第かよ。あーやだやだ。下らな。
   
  0388
詞書 山さきより神なひのもりまて
おくりに人人まかりて、
かへりかてにしてわかれをしみけるによめる
作者 源さね(源実、みなもとのさね)
原文 人やりの 道ならなくに おほかたは
 いきうしといひて いさ帰りなむ
かな ひとやりの みちならなくに おほかたは
 いきうしといひて いさかへりなむ
コメ 387参照。
   
  0389
詞書 今はこれよりかへりねと
さねかいひけるをりによみける
作者 藤原かねもち(藤原兼茂)
原文 したはれて きにし心の 身にしあれは
 帰るさまには 道もしられす
かな したはれて きにしこころの みにしあれは
 かへるさまには みちもしられす
コメ 387参照。
   
  0390
詞書 藤原のこれをかか
むさしのすけにまかりける時に、
おくりにあふさかをこゆとてよみける
作者 つらゆき(紀貫之)
原文 かつこえて わかれもゆくか あふさかは
 人たのめなる 名にこそありけれ
かな かつこえて わかれもゆくか あふさかは
 ひとたのめなる なにこそありけれ
   
  0391
詞書 おほえのちふるか、
こしへまかりけるむまのはなむけによめる
作者 藤原かねすけの朝臣(藤原兼輔)
原文 君かゆく こしのしら山 しらねとも
 雪のまにまに あとはたつねむ
かな きみかゆく こしのしらやま しらねとも
 ゆきのまにまに あとはたつねむ
   
  0392
詞書 人の花山にまうてきて、ゆふさりつかた
かへりなむとしける時によめる
作者 僧正遍昭
原文 ゆふくれの まかきは山と 見えななむ
 よるはこえしと やとりとるへく
かな ゆふくれの まかきはやまと みえななむ
 よるはこえしと やとりとるへく
   
  0393
詞書 山にのほりてかへりまうてきて、
人人わかれけるついてによめる
作者 幽仙法師
原文 別をは 山のさくらに まかせてむ
 とめむとめしは 花のまにまに
かな わかれをは やまのさくらに まかせてむ
 とめむとめしは はなのまにまに
   
  0394
詞書 うりむゐんのみこの
舎利会に山にのはりてかへりけるに、
さくらの花のもとにてよめる
作者 僧正へんせう(遍昭、良岑宗貞)
原文 山かせに さくらふきまき みたれなむ
 花のまきれに たちとまるへく
かな やまかせに さくらふきまき みたれなむ
 はなのまきれに たちとまるへく
   
  0395
詞書 うりむゐんのみこの
舎利会に山にのはりてかへりけるに、
さくらの花のもとにてよめる
作者 幽仙法師
原文 ことならは 君とまるへく にほはなむ
 かへすは花の うきにやはあらぬ
かな ことならは きみとまるへく にほはなむ
 かへすははなの うきにやはあらぬ
   
  0396
詞書 仁和のみかとみこにおはしましける時に、
ふるのたき御覧しにおはしまして
かへりたまひけるによめる
作者 兼芸法し
原文 あかすして わかるる涙 滝にそふ
 水まさるとや しもは見るらむ
かな あかすして わかるるなみた たきにそふ
 みつまさるとや しもはみるらむ
   
  0397
詞書 かむなりのつほにめしたりける日、
おほみきなとたうへて
あめのいたくふりけれは
ゆふさりまて侍りてまかりいてけるをりに、さかつきをとりて
作者 つらゆき(紀貫之)
原文 秋はきの 花をは雨に ぬらせとも
 君をはまして をしとこそおもへ
かな あきはきの はなをはあめに ぬらせとも
 きみをはまして をしとこそおもへ
   
  0398
詞書 とよめりけるかへし
作者 兼覧王
原文 をしむらむ 人の心を しらぬまに
 秋の時雨と 身そふりにける
かな をしむらむ ひとのこころを しらぬまに
 あきのしくれと みそふりにける
   
  0399
詞書 かねみのおほきみにはしめて物かたりして、わかれける時によめる
作者 みつね(凡河内躬恒)
原文 わかるれと うれしくもあるか こよひより
 あひ見ぬさきに なにをこひまし
かな わかるれと うれしくもあるか こよひより
 あひみぬさきに なにをこひまし
   
  0400
詞書 題しらす
作者 よみ人しらす
原文 あかすして わかるるそての しらたまを
 君かかたみと つつみてそ行く
かな あかすして わかるるそての しらたまを
 きみかかたみと つつみてそゆく
   
  0401
詞書 題しらす
作者 よみ人しらす
原文 限なく 思ふ涙に そほちぬる
 袖はかわかし あはむ日まてに
かな かきりなく おもふなみたに そほちぬる
 そてはかわかし あはむひまてに
   
  0402
詞書 題しらす
作者 よみ人しらす
原文 かきくらし ことはふらなむ 春雨に
 ぬれきぬきせて 君をととめむ
かな かきくらし ことはふらなむ はるさめに
 ぬれきぬきせて きみをととめむ
   
  0403
詞書 題しらす
作者 よみ人しらす
原文 しひて行く 人をととめむ 桜花
 いつれを道と 迷ふまてちれ
かな しひてゆく ひとをととめむ さくらはな
 いつれをみちと まよふまてちれ
   
  0404
詞書 しかの山こえにて、
いしゐのもとにて
ものいひける人のわかれけるをりによめる
作者 つらゆき(紀貫之)
原文 むすふての しつくににこる 山の井の
 あかても人に わかれぬるかな
かな むすふての しつくににこる やまのゐの
 あかてもひとに わかれぬるかな
   
  0405
詞書 みちにあへりける人の
くるまにものをいひつきて、
わかれける所にてよめる
作者 とものり(紀友則)
原文 したのおひの みちはかたかた わかるとも
 行きめくりても あはむとそ思ふ
かな したのおひの みちはかたかた わかるとも
 ゆきめくりても あはむとそおもふ