紫式部集84 隔てじと:原文対訳・逐語分析

83け近くて 紫式部集
第七部
栄花と追憶

84隔てじと
異本75
85峯寒み
原文
(実践女子大本)
現代語訳
(渋谷栄一)
〈適宜当サイトで改め〉
注釈
【渋谷栄一】
〈適宜当サイトで補注〉
返し、  返歌、

【返し】-宣孝の求婚頃の歌に対する返歌。長徳四年(九九八)夏頃

〈とされるが、これは83番の通り57番の「ほのかにかたらひける人」への返事と解する(独自)。夫という根拠はせいぜい83番「契り」二文字しかなく夫という必然がない。なのに執拗に夫との歌としたがるのはそういう結婚観の人の願望と言わざるをえない〉
     
隔てじと わたしは隔て心を持ちませんと

【隔てじとならひしほどに】-主語は作者紫式部。

〈しかし贈歌「言葉隔てぬ」から、双方どちらともない意味を持たせたと解する。独自。「隔て」を「他人づて」とするのが通説だが、文脈に全く根拠がない無意味な限定〉

ならひしほどに 〈言われたように私も〉常に思っているのに、
「人伝てでなく」とおっしゃるとは、
 
夏衣 夏衣のような

【夏衣】-「隔て」「慣らひ」「薄き」は「夏衣」の縁語。

〈前後の隔て・薄きと相まって女物の衣。男の夏衣など書き手にも読み手にも迷惑〉

薄き心を あなたの薄い心が 〈薄き心といっても非難ではなく、83番「言葉隔てぬ契り」を実践する遠慮しない間柄のツッコミ。これが関西のノリ・心髄、京女的にはいけずで、現代関東風の馬鹿真面目な感覚で解釈してはいけない〉
まづ知られぬる まっ先に知られました