紫式部集 第八部:月影の人

詳解
定家本
和歌 人物
90
異81
折々に 書くとは見えて ささがにの
 いか
に思へば 絶ゆるなるらむ
91
異82
霜枯れの 浅茅にまがふ ささがにの
 いか
なる折に 書くと見ゆらむ
紫式部
92
異83
入る方は さやかなりける 月影
 上の空にも 待ちし宵かな
紫式部
93
異84
さして行く 山の端も みなかき曇り
 も空に 消えし月影
94
異85
おほかたの のあはれを 思ひやれ
 月には あくがれぬとも
紫式部
95
異86
垣ほ荒れ 寂しさまさる 常夏に
 置き添はむ までは見じ
紫式部
96
異87
花薄葉 わけのや 何にかく
 枯れ行く野辺に 消え止まるらむ
紫式部
97
異88
世にふるに なぞ貝沼の いけらじと
 思ひぞ沈む 底は知らねど
紫式部
98
異89
心ゆく 水のけしきは 今日ぞ見る
 こや世に経つる 貝沼の
紫式部