枕草子223段 五月ばかりなどに山里にありく

祭のかへさ 枕草子
中巻下
223段
五月ばかり
いみじう暑きころ

(旧)大系:223段
新大系:206段、新編全集:207段
(以上全て三巻本系列本。しかし後二本の構成は2/3が一致せず混乱を招くので、以後最も索引性に優れる三巻本理論の根本たる『(旧)大系』に準拠すべきと思う)
(旧)全集=能因本:204段
 


 
 五月ばかりなどに山里にありく、いとをかし。
 草葉も水もいとあをく見えわたりたるに、上はつれなくて草生ひ茂りたるを、ながながとただざまに行けば、下はえならざりける水の、深くはあらねど、人などのあゆむにはしりがりたる、いとをかし。
 左右にある垣にある、ものの枝などの、車の屋形などにさし入るを、いそぎてとらへて折らむとするほどに、ふと過ぎてはづれたるこそ、いとくちをしけれ。
 

 蓬の車に押しひしがれたりけるが、輪の回りたるに、近くうちかかりたるもをかし。
 
 

祭のかへさ 枕草子
中巻下
223段
五月ばかり
いみじう暑きころ