枕草子131段 七日の日の若菜を

九月ばかり 枕草子
上巻下
131段
七日の日の
二月

(旧)大系:131段
新大系:125段、新編全集:126段
(以上全て三巻本系列本。しかし後二本の構成は2/3が一致せず、混乱を招くので、三巻本理論の根本たる『(旧)大系』に準拠すべきと思う)
(旧)全集=能因本:134段
 


 
 七日の日の若菜を、六日、人の持て来、さわぎとり散らしなどするに、見も知らぬ草を、子供のとり持て来たるを、「なにとかこれをばいふ」と問へば、とみにもいはず、「いさ」など、これかれ見あはせて、「耳無草となむいふ」といふ者のあれば、「むべなりけり。聞かぬ顔なるは」と笑ふに、まだいとをかしげなる菊の生ひ出でたるを持て来たれば、
 

♪16
  つめどなほ 耳無草こそ あはれなれ
  あまたしあれば きくもありけり
 

といはまほしけれど、またこれも聞きいれるべうもあらず。