徒然草119段 鎌倉の海に鰹といふ魚:原文

鯉の羹 徒然草
第三部
119段
鎌倉の海
唐のもの

 
 鎌倉の海に、鰹といふ魚は、かの境ひには、さうなきものにて、この頃もてなすものなり。
それも、鎌倉の年寄りの申し侍りしは、「この魚、おのれら若かりし世までは、はかばかしき人の前へ出づる事侍らざりき。頭は、下部も食はず、切りて捨て侍りしものなり」と申しき。
 

 かやうの物も、世の末になれば、上ざままでも入りたつわざにこそ侍れ。