紫式部集8 露深く:原文対訳・逐語分析

7西へ行く 紫式部集
第一部
若かりし頃

8露深く
9嵐吹く
原文
(実践女子大本)
現代語訳
(渋谷栄一)
注釈
【渋谷栄一】
「遥かなる所に、  「遥か遠い任国に、 【遥かなる所に】-遠国の任国であろう。
行きやせむ、 行こうか、  
行かずや」と、 行くまいか」と、  
思ひわづらふ人の、 思い煩っていた人が、  
山里より紅葉を折りて 山里から紅葉を手折って 【折りて】-実践本「おる」は定家の仮名遣い。
おこせたる、 寄越した歌、 【おこせたる】-完了の助動詞「たる」連体形、下に「歌」を補って解釈する。実践本「をこす」は定家の仮名遣い。
     
露深く 露が深く 【露深く奥山里】-「露」は「袖」の上に置いた涙を連想させる。
奥山里の 置いている奥山里の 「奥」は「露(が深く)置く」と「奥山里」の「奥」が掛詞となっているが、定家仮名遣いでは「(つゆが)をく」と「おく山」は書き分けられるところ。実践本では「つゆふかくを(遠)く山さと」となっている。
もみぢ葉に もみぢ葉に  
かよへる袖の 似かよった袖の  
色を見せばや 色をお見せしたいですね 【袖の色】-涙で真っ赤に染まった袖の色。血の涙を連想させる。