紫式部集102 埋もれ木の:原文対訳・逐語分析

101さし越えて 紫式部集
第九部
宮中と女房

102埋もれ木の
異本97
103九重に
原文
実践女子大本
(定家本系筆頭)
現代語訳
(渋谷栄一)
注釈
【渋谷栄一】
紅梅を折りて  紅梅を折って 【折りて】-実践本「おる」は定家の仮名遣い。
里より参らすとて、 里から差し上げようとして、 【参らすとて】-「まいる」は平安の仮名遣い。
     
埋もれ木の 埋もれ木のように 【埋もれ木の】-底本「むまれ木」は、諸本によって「埋もれ木」と改める。
下にやつるる 目立たずに咲いている  
梅の花 梅の花よ  
香をだに散らせ せめて薫りだけでも散らしておくれ 【香をだに散らせ】-紅梅の色艶はみすぼらしくとも、せめて香りだけは、の意。
雲の上まで 宮中までも 【雲の上】-宮中を譬喩。
     

参考異本=後世の二次資料

 「上東門院中宮と申し侍りける時、里より梅ををりてまゐらすとて  紫式部
むもれ木のしたにやつるる梅の花香をだにちらせ雲の上まで」(吉田兼右筆本「玉葉集」春上 六五)