枕草子34段 菩提といふ寺に

説経の講師は 枕草子
上巻上
34段
菩提といふ寺
小白河

(旧)大系:34段
新大系:31段、新編全集:32段
(以上全て三巻本系列本。しかし後二本の構成は2/3が一致せず、混乱を招くので、三巻本理論の根本たる『(旧)大系』に準拠すべきと思う)
(旧)全集=能因本:41段
 


 
 菩提といふ寺に、結縁の八講せしにまうでたるに、人のもとより「とく帰り給ひね。いとさうざうし」といひたれば、蓮の葉のうらに、
 

♪3
  もとめても かかるはちすの 露をおきて
  うき世にまたは かへるものかは
 

と書きてやりつ。
 

 まことにいとたふとくあはれなれば、やがてとまりぬべくおぼゆるに、さうちうが家の人のもどかしさも忘れぬべし。