紫式部集51 誰が里の:原文対訳・逐語分析

50かへりては 紫式部集
第五部
転機

51誰が里の
52消えぬ間の
原文
(実践女子大本)
現代語訳
(渋谷栄一)
注釈
【渋谷栄一】
年返りて、  年が明けて、 【年返りて】-夫宣孝が亡くなった翌年、長保四年(一〇〇二)。
「門は開きぬや」と言ひたるに、 「門は開きましたか」と言ってきたので、 【門は開きぬや】-喪は明けましたか、の意を含む。
     
誰が里の どなたの  
春の便りに 春の里を訪れたついでに、  
鴬の 鴬は 【鴬の】-「門は開きぬや」と言った男を喩える。
霞に閉づる 霞に閉ざされた  
宿を訪ふらむ わたしの宿を訪ねるのでしょうか 【宿を訪ふらむ】-推量の助動詞「らむ」(連体形、視界外推量)は「誰が」と呼応して、疑問。
     

参考異本=後世の二次資料

 「十二月ばかりに、かどをたたきかねてなんかへりにしとうらみたりけるをとこ、としかへりてかどはあきぬらんやといひて侍りければ、つかはしける  上東門院紫式部
たがさとの春のたよりにうぐひすの霞にとづるやどをとふらむ」(陽明文庫本「千載集」雑上 九六二)