古事記~国譲り 原文対訳

建御名方神 古事記
上巻 第四部
国譲りの物語
国譲り
天の眞魚咋
原文 書き下し
(武田祐吉)
現代語訳
(武田祐吉)
故更且還來。  かれ更にまた還り來て、  そこで更に還つて來て
問其大國主神。 その大國主の神に
問ひたまひしく、
その大國主の命に
問われたことには、
汝子等。 「汝が子ども 「あなたの子ども
事代主神。 事代主の神、 コトシロヌシの神・
建御名方神二神者。 建御名方の神二神ふたはしらは、 タケミナカタの神お二方は、
隨天神御子之命。 天つ神の御子の命のまにまに 天の神の御子の仰せに
勿違白訖。 違はじと白しぬ。 背そむきませんと申しました。
故汝心奈何。 かれ汝なが心いかに」
と問ひたまひき。
あなたの心はどうですか」
と問いました。
     
爾答白之。 ここに答へ白さく、 そこでお答え申しますには、
僕子等
二神隨白。
「僕あが子ども
二神の白せるまにまに、
「わたくしの子ども
二人の申した通りに
僕之不違。 僕あも違はじ。 わたくしも違いません。
此葦原中國者。 この葦原の中つ國は、 この葦原の中心の國は
隨命既獻也。 命のまにまに既に獻りぬ。 仰せの通り獻上致しましよう。
     
唯僕住所者。 ただ僕が住所すみかは、 ただわたくしの住所を
如天神御子之。 天つ神の御子の、 天の御子みこの
天津日繼所知之。 天つ日繼知らしめさむ 帝位に
登陀流
〈此三字以音
下效此〉
富足とだる お登りになる
天之御巢而。 天の御巣みすの如、 壯大な御殿の通りに、
於底津石根。 底つ石根に 大磐石に
宮柱布斗斯理。
〈此四字以音〉
宮柱太しり、 柱を太く立て
於高天原。 高天の原に 大空に
氷木
多迦斯理
〈多迦斯理
四字以音〉而。
氷木ひぎ
高しりて
棟木むなぎを
高くあげて
治賜者。 治めたまはば、 お作り下さるならば、
僕者於
百不足
八十坰手
隱而侍。
僕あは
百もも足らず
八十坰手やそくまでに
隱りて侍さもらはむ。
わたくしは
所々の隅に
隱れておりましよう。
     
亦僕子等
百八十神者。
また僕が子ども
百八十神ももやそがみは
またわたくしの子どもの
多くの神は
即八重事代主神。 八重事代主の神を コトシロヌシの神を
爲神之御尾前而
仕奉者。
御尾前さきとして
仕へまつらば、
導みちびきとして
お仕え申しましたなら、
違神者非也。 違ふ神はあらじ」と、 背そむく神はございますまい」と、
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国譲りの物語
国譲り
天の眞魚咋