古事記~七乙女と目の入墨 原文対訳

ウマシマヂの命 古事記
中巻①
神武天皇
入墨の象徴性
狹井河
=サギか
原文 書き下し
(武田祐吉)
現代語訳
(武田祐吉)

七乙女(オトメ)ヲメトろう

     
於是七媛女。  ここに七媛女をとめ、  ある時七人の孃子が
遊行於
高佐士野。
〈佐士二字以音〉
高佐士野
たかさじのに遊べるに、
大和の
タカサジ野で遊んでいる時に、
伊須氣余理比賣
在其中。
伊須氣余理比賣
いすけよりひめその中にありき。
このイスケヨリ姫も
混まじつていました。
爾大久米命。 ここに大久米の命、 そこでオホクメの命が、
見其伊須氣余理比賣而。 その伊須氣余理比賣を見て、 そのイスケヨリ姫を見て、
以歌白於天皇曰。 歌もちて天皇にまをさく、 歌で天皇に申し上げるには、
     
夜麻登能 倭やまとの 大和の國の
多加佐士怒袁 高佐士野を タカサジ野のを
那那由久 七なな行く 七人行く
袁登賣杼母 媛女をとめども、 孃子おとめたち、
多禮袁志摩加牟  誰をしまかむ。 その中の誰をお召しになります。
     

伊須氣
余理比賣者。
 ここに
伊須氣
余理比賣は、
 この
イスケヨリ姫は、
立其媛女等
之前。
その媛女どもの
前さきに立てり。
その時に孃子たちの
前さきに立つておりました。
     
乃天皇見
其媛女等而。
すなはち天皇、
その媛女どもを見て、
天皇は
その孃子たちを御覽になつて、
御心知
伊須氣余理比賣
立於最前。
御心に
伊須氣余理比賣の
最前いやさきに立てることを知らして、
御心に
イスケヨリ姫が
一番前さきに立つていることを知られて、
以歌答曰。 歌もちて答へたまひしく、 お歌でお答えになりますには、
     
加都賀都母 かつがつも まあまあ
伊夜佐岐陀弖流 いや先立てる 一番先に立つている娘こを
延袁斯麻加牟 愛えをしまかむ。 妻にしましようよ。
     

黥(ゲイ=刑。利目・トメの入墨)

     
爾大久米命。  ここに大久米の命、  ここにオホクメの命が、
以天皇之命。 天皇の命を、 天皇の仰せを
詔其
伊須氣余理比賣之時。
その伊須氣余理比賣に
詔のる時に、
そのイスケヨリ姫に傳えました時に、
見其大久米命

利目而。
その大久米の命の
黥さける
利目とめを見て、
姫はオホクメの命の
眼の裂目さけめに
黥いれずみをしているのを見て
思奇歌曰。 奇あやしと思ひて、
歌ひたまひしく、
不思議に思つて、
     
阿米都都 天地あめつつ 天地間てんちかんの
知杼理麻斯登登 ちどりましとと 千人にん勝まさりの
勇士ゆうしだというに、
那杼佐祁流斗米 など黥さける利目とめ。 どうして目めに
黥いれずみをしているのです。
     
    と歌いましたから、
爾大久米命
答歌曰。
 ここに大久米の命、
答へ歌ひて曰ひしく、
オホクメの命が答えて歌うには、
     
袁登賣爾 媛女に お孃さんに
多陀爾阿波牟登 直ただに逢はむと すぐに逢おうと思つて
和加佐祁流斗米 吾わが黥ける利目とめ 目に黥いれずみをしております。
    と歌いました。
     
故其孃子。  かれその孃子をとめ、 かくてその孃子は
白之仕奉也。 「仕へまつらむ」とまをしき。 「お仕え申しあげましよう」と申しました。
ウマシマヂの命 古事記
中巻①
神武天皇
入墨の象徴性
狹井河
=サギか

解説

 
 
 続く文脈から入墨は忌人のしるし。普遍の法の禁を犯した象徴のmark(karma)。
 法度(hatto)=tattoo=taboo。tabacoはその亜種。だから煙たがられる。では煙がないといいのか。タバコの魅力は愛煙者じゃないと多分わからない。

 

 カルマは印度を中心とした東西共通の霊的概念で仏教語ではない。何でもかんでも仏教用語、専売特許(独り占め)のタバ…タブーの因縁。