古事記 誓約①天照~原文対訳

天照の武装 古事記
上巻 第二部
アマテラスの受難
誓約①天照
誓約②
原文 書き下し
(武田祐吉)
現代語訳
(武田祐吉)

天照大御神
ここに
天照らす大御神
詔りたまはく、
そこで
天照らす大神は、
然者
汝心之
清明。
「然らば
汝みましの心の
清明あかきは
「それなら
あなたの心の
正しいことは
何以知。 いかにして知らむ」
とのりたまひしかば、
どうしたらわかるでしよう」
と仰せになつたので、
於是
速須佐之男命。
ここに
速須佐の男の命
答へたまはく、
スサノヲの命は、
答白

宇氣比而。
生子。
「おのもおのも
誓うけひて
子生まむ」
とまをしたまひき。
「誓約ちかいを立てて
子を生みましよう」
と申されました。
〈自宇以下
三字以音
下效此〉
   
故爾 かれここに よつて
各中置
天安河而。
おのもおのも
天の安の河を
中に置きて
天のヤスの河を
中に置いて
宇氣布時。 誓うけふ時に、 誓約ちかいを立てる時に、
     
天照大御神。 天照らす大御神 天照らす大神は

乞度
建速須佐之男命所
佩十拳劔。
まづ建速須佐の男の命の
佩はかせる
十拳とつかの劒つるぎを
乞ひ度わたして、
まずスサノヲの命の
佩はいている
長い劒を
お取りになつて
打折
三段而。
三段みきだに
打ち折りて、
三段に
打うち折つて、
奴那登母
母由良邇。
ぬなとももゆらに、 音もさらさらと
〈此八字以音
下效此〉
   
振滌
天之眞名井而。
天あめの眞名井まなゐに
振り滌ぎて、
天の眞名井まないの
水で滌そそいで
佐賀美邇
迦美而。
さ齧がみに
齧かみて、
囓かみに
囓かんで
〈自佐下六字
以音下效此〉
   
於吹棄氣吹之 吹き棄つる氣吹いぶきの 吹き棄てる息の
狹霧所
成神御名。
狹霧さぎりに
成りませる神の御名は、
霧の中から
あらわれた神の名は
     
多紀理毘賣命。
〈此神名以音〉
多紀理毘賣
たぎりびめの命、
タギリヒメの命
亦御名謂
奧津嶋比賣命。
またの御名は
奧津島比賣
おきつしまひめの命といふ。
またの名は
オキツシマ姫の命でした。

市寸嶋〈上〉比賣命。
次に
市寸島比賣
いちきしまひめの命、
次に
イチキシマヒメの命
亦御名謂
狹依毘賣命。
またの御名は
狹依毘賣
さよりびめの命といふ。
またの名は
サヨリビメの命、

多岐都比賣命。
〈三柱。
此神名以音〉
次に
多岐都比賣
たぎつひめの命
三柱。
次に
タギツヒメの命の
お三方でした。
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誓約②