古事記~大国主の系譜  原文対訳

スセリ姫の歌 古事記
上巻 第三部
大国主の物語
大国主の系譜
少名毘古那の神
原文 書き下し
(武田祐吉)
現代語訳
(武田祐吉)
故此大國主神。  かれこの大國主の神、  この大國主の神が、
娶、坐胸形
奧津宮神。
むなかたの
奧津宮おきつみやにます神、
むなかたの
沖つ宮においでになる
多紀理毘賣命。 多紀理毘賣の命に タギリ姫の命と
生子。 娶あひて生みませる子、 結婚して生んだ子は
阿遲〈二字以音〉鉏
高日子根神。
阿遲鉏高日子根
あぢすきたかひこねの神。
アヂスキ
タカヒコネの神、
次妹高比賣命。 次に妹高比賣たかひめの命。 次にタカ姫の命、
亦名。 またの名は またの名は
下光比賣命。 下光したてる比賣ひめの命。 シタテル姫の命であります。
此之
阿遲鉏高日子根神者。
この
阿遲鉏高日子根の神は、
この
アヂスキタカヒコネの神は、
今謂
迦毛大御神
者也。

迦毛かもの大御神
といふ神なり。

カモの大御神
と申す神樣であります。
     
大國主神。  大國主の神、  大國主の神が、
亦娶
神屋楯比賣命
生子。
また
神屋楯かむやたて比賣の命に
娶ひて生みませる子、
また
カムヤタテ姫の命と
結婚して生んだ子は、
事代主神。 事代ことしろ主の神。 コトシロヌシの神です。
亦娶
八嶋牟遲能神之女
〈自牟下三字以音〉
鳥耳神。
また
八島牟遲やしまむぢの神の女
鳥取とりとりの神に
娶ひて
また
ヤシマムチの神の女むすめの
トリトリの神と
結婚して
生子。 生みませる子、 生んだ子は、
鳥鳴海神。
〈訓鳴云那留〉
鳥鳴海とりなるみの神。 トリナルミの神です。
此神。 この神、 この神が
娶、
日名照
額田毘道
男伊許知邇神。
〈田下毘。
又自伊下至邇。
皆以音〉
日名照
額田毘道
男伊許知邇
ひなてり
ぬかたびち
をいこちにの神
に娶ひて
ヒナテリ
ヌカダビチ
ヲイコチニの神と
結婚して
生子。 生みませる子、 生んだ子は、
國忍富神。 國忍富くにおしとみの神。 クニオシトミの神です。
此神。 この神、 この神が
娶、葦那陀迦神。
〈自那下三字以音〉
葦那陀迦
あしなだかの神
アシナダカの神、
亦名
八河江比賣。
またの名は
八河江比賣
やがはえひめに娶ひて
またの名は
ヤガハエ姫と
結婚して
生子。 生みませる子、 生んだ子は、
速甕之
多氣佐波夜遲奴美神。
〈自多下八字以音〉
連甕
つらみかの
多氣佐波夜遲奴美
たけさはやぢぬみの神。
ツラミカノ
タケサハヤヂヌミの神です。
此神。 この神、 この神が
娶天之甕主神之女。 天の甕主みかぬしの神の女 アメノミカヌシの神の女の
前玉比賣。 前玉比賣さきたまひめに娶ひて サキタマ姫と結婚して
生子。 生みませる子、 生んだ子は、
甕主日子神。 甕主日子みかぬしひこの神。 ミカヌシ彦の神です。
此神。 この神、 この神が
娶、淤加美神之女。 淤加美おかみの神の女 オカミの神の女の
比那良志毘賣。
〈此神名以音〉
比那良志ひならし毘賣に
娶ひて
ヒナラシ姫と結婚して
生子。 生みませる子、 生んだ子は、
多比理岐志麻流美神。
〈此神名以音〉
多比理岐志麻美
たひりきしまみの神。
タヒリキシマミの神です。
此神。 この神、 この神が
娶、比比羅木之
其花麻豆美神之女。
〈木上三字。
花下三字以音〉
比比羅木
ひひらぎの
その花麻豆美
はなまづみの神の女
ヒヒラギの
ソノハナマヅミの神の
女の
活玉前玉比賣神。 活玉前玉
いくたまさきたま比賣の神に
娶ひて
イクタマサキタマ姫の神と
結婚して
生子。 生みませる子、 生んだ子は、
美呂浪神。
〈美呂二字以音〉
美呂浪
みろなみの神。
ミロナミの神です。
此神。 この神、 この神が
娶、敷山主神之女。 敷山主しきやまぬしの神の女 シキヤマヌシの神の女の
青沼馬沼押比賣。 青沼馬沼押
あをぬまぬおし比賣に娶ひて
アヲヌマヌオシ姫と結婚して
生子。 生みませる子、 生んだ子は、
布忍富鳥鳴海神。 布忍富鳥鳴海
ぬのおしとみとりなるみの神。
ヌノオシトミトリナルミの神です。
此神。 この神、 この神が
娶、若昼女神。 若晝女
わかひるめの神に娶ひて
ワカヒルメの神と結婚して
生子。 生みませる子、 生んだ子は、
天日腹大科度美神。
〈度美二字以音〉
天の
日腹大科度美
ひばらおほしなどみの神。
アメノ
ヒバラ
オホシナドミの神です。
此神。 この神、 この神が
娶、天狹霧神之女。 天の狹霧さぎりの神の女 アメノサギリの神の女の
遠津待根神。 遠津待根
とほつまちねの神に娶ひて
トホツマチネの神と結婚して
生子。 生みませる子、 生んだ子は、
遠津山岬多良斯神。 遠津山岬多良斯
とほつやまざきたらしの神。
トホツヤマザキタラシの神です。
     
右件 右の件くだり、  以上
自八嶋士奴美神以下。 八島士奴美
やしまじぬみの神より下、
ヤシマジヌミの神から
遠津山岬帶神以前。 遠津山岬帶たらしの神より前、 トホツヤマザキタラシの神までを
稱十七世神。 十七世とをまりななよの神といふ。 十七代の神と申します。
スセリ姫の歌 古事記
上巻 第三部
大国主の物語
大国主の系譜
少名毘古那の神