紫式部集17 難波潟:原文対訳・逐語分析

原文
(実践女子大本)
現代語訳
(渋谷栄一)
注釈
【渋谷栄一】
津の国といふ所より  摂津国という所から 【津の国】-摂津国。ここから西の国に向かうため船に乗ったのであろう。
おこせたりける、 寄越したのであった。 【おこせたりける】-実践本「をこす」は定家の仮名遣い。
     
難波潟 難波潟に 【難波潟】-摂津国の歌枕。淀川の河口付近。
群れたる 群れている  
鳥のもろともに 水鳥のようにあなたと一緒に  
立ち居るものと 暮らしていられるものと  
思はましかば 思えたらいいのですが 【思はましかば】-反実仮想の助動詞「ましか」未然形+接続助詞「ば」。
下に「うれしからまし」などの語句を補って読む。
     
返し、  返歌、 【返し】-紫式部から西の海の人への返歌。
(二行空白) (二行空白) 二行分の空白がある。諸本(定家本系・古本系・別本系)ナシ、和歌一首を脱か。
     

参考異本=後世の二次資料

「つのくににまかれりける時、みやこなる女ともだちのもとにつかはしける 紫式部
難波がたむれたるとりのもろ共にたちゐるものと思はましかば」(尊経閣文庫本「続拾遺集」雑上 一一二三)
 
※藤原為氏(定家の孫・二条家祖)撰「続拾遺集」では、「西の海の人」ではなく、紫式部の歌となっている。詞書の内容も紫式部が津の国に行った折に都の女友だちに贈った歌となっている。