古事記 応神天皇の系譜~原文対訳

仲哀天皇陵 古事記
中巻⑧
15代 応神天皇
宮と系譜
大山守命と大雀命
原文 書き下し
(武田祐吉)
現代語訳
(武田祐吉)
品陀和氣命。  品陀和氣
ほむだわけの命、
 ホムダワケの命
(應神天皇)、

輕嶋之
明宮
治天下也。
輕島の
明あきらの宮に
ましまして、
天の下治らしめしき。
大和の輕島かるしまの
明あきらの宮に
おいでになつて
天下をお治めなさいました。
     
此天皇。娶
品陀眞若王
〈品陀二字以音〉
之女。三柱女王。
この天皇、
品陀の眞若まわかの王が女、
三柱の女王ひめみこに
娶ひたまひき。
この天皇は
ホムダノマワカの王の女王
お三方と結婚されました。
一名。
高木之入日賣命。
一柱の御名は、
高木の入日賣の命、
お一方は、
タカギノイリ姫の命、
次中日賣命。 次に中日賣の命、 次は中姫の命、
次弟日賣命。 次に弟日賣の命。 次は弟姫の命であります。
     
〈此女王等之父。 この女王たちの父、 この女王たちの御父、
品陀眞若王者。 品陀の眞若の王は、 ホムダノマワカの王は
五百木之入日子命。
娶尾張連之祖。
建伊那陀宿禰之女。
志理都紀斗賣。
生子者也〉
五百木の入日子の命の、
尾張の連の祖、
建伊那陀の宿禰が女、
志理都紀斗賣に娶ひて、
生める子なり。
イホキノイリ彦の命が、
尾張の直の祖先の
タケイナダの宿禰の女の
シリツキトメと結婚して
生んだ子であります。
     
故高木之入日賣
之子。
 かれ高木の入日賣の
御子、
そこでタカギノイリ姫の
生んだ御子みこは、
額田
大中日子命。
額田ぬかだの
大中おほなかつ日子ひこの命、
ヌカダノ
オホナカツヒコの命
次大山守命。 次に大山守おほやまもりの命、 オホヤマモリの命
次伊奢之眞若命。
〈伊奢二字以音〉
次に伊奢いざの眞若の命、 イザノマワカの命
次妹。大原郎女。 次に妹いも大原の郎女いらつめ、 オホハラの郎女いらつめ
次高目郎女。 次に高目たかもくの郎女 タカモクの郎女いらつめの
〈五柱〉 五柱。 御おん五方かたです。
     
中日賣命之御子。 中日賣の命の御子、 中姫の命の生んだ御子みこは、
木之荒田郎女。 木きの荒田の郎女、 キノアラタの郎女いらつめ
次大雀命。 次に大雀おほさざきの命四、 オホサザキの命
次根鳥命。 次に根鳥ねとりの命 ネトリの命の
〈三柱〉 三柱。 お三方です。
弟日賣命之御子。 弟日賣の命の御子、 弟姫の命の御子は、
阿倍郎女。 阿部の郎女、 阿部あべの郎女
次阿具知能
〈此四字以音〉
三腹郎女。
次に
阿貝知あはぢの
三腹みはらの郎女、
アハヂノ
ミハラの郎女
次木之菟野郎女。 次に木の菟野うのの郎女、 キノウノの郎女
次三野郎女。 次に三野みのの郎女 ミノの郎女の
〈五柱〉 五柱。 お五方です。
     
又娶。
丸邇之
比布禮能
意富美之女。
〈自比至美以音〉
名宮主矢河枝比賣。
また丸邇わにの
比布禮ひふれの
意富美おほみが女、
名は宮主矢河枝
みやぬしやかはえ比賣に娶ひて
また天皇、
ワニノ
ヒフレのオホミの女の
ミヤヌシヤガハエ姫と
結婚して
生御子。 生みませる御子、 お生うみになつた御子みこは、
宇遲能
和紀郎子。
宇遲うぢの
和紀郎子わきいらつこ、
ウヂの若郎子わきいらつこ
次妹。
八田若郎女。
次に妹八田やたの若郎女、 ヤタの若郎女わきいらつめ
次女鳥王。 次に女鳥めどりの王 メトリの王の
〈三柱〉 三柱。 お三方です。
     
又娶其
矢河枝比賣之弟。
袁那辨郎女。
またその矢河枝比賣が弟、
袁那辨をなべの郎女に娶ひて
またそのヤガハエ姫の妹
ヲナベの郎女と結婚して
生御子。
宇遲之若郎女。
〈一柱〉
生みませる御子、
宇遲うぢの若わき郎女一柱。
お生みになつた御子は、
ウヂの若郎女お一方です。
     
又娶
咋俣長日子王之女。
息長眞若中比賣。
また咋俣長日子
くひまたながひこの王が女、
息長眞若中
おきながまわかなかつ比賣に娶ひて、
またクヒマタナガ彦の王の女の
オキナガマワカナカツ姫と
結婚して
生御子。
若沼毛二俣王。
〈一柱〉
生みませる御子、
若沼毛二俣
わかぬけふたまたの王
一柱。
お生みになつた御子は
ワカヌケフタマタの王
お一方です。
     
又娶
櫻井田部連之祖。
嶋垂根之女。
糸井比賣。
また櫻井さくらゐの
田部たべの連むらじの祖、
島垂根しまたりねが女、
糸井いとゐ比賣に娶ひて、
また櫻井の
田部たべの連の祖先そせんの
シマタリネの女の
イトヰ姫と結婚して
生御子。
速總別命。
〈一柱〉
生みませる御子、
速總別はやぶさわけの命
一柱。
お生みになつた御子は
ハヤブサワケの命
お一方です。
     
又娶
日向之泉長比賣。
また日向ひむかの
泉いづみの長なが比賣に娶ひて、
また日向の
イヅミノナガ姫と結婚して
生御子。 生みませる御子、 お生みになつた御子は
大羽江王。 大羽江はえの王みこ、 オホハエの王
次小羽江王。 次に小羽江をはえの王、 ヲハエの王
次幡日之若郎女。 次に檣日はたびの若わか郎女 ハタビの若郎女の
〈三柱〉 三柱。 お三方です。
     
又娶迦具漏比賣。 また迦具漏かぐろ比賣に娶ひて またカグロ姫と結婚して
生御子。 生みませる御子、 お生みになつた御子は
川原田郎女。 川原田かはらだの郎女、 カハラダの郎女
次玉郎女。 次に玉の郎女、 タマの郎女
次忍坂大中比賣。 次に忍坂おしさかの大中おほなかつ比賣、 オシサカノオホナカツ姫
次登富志郎女。 次に登富志とほしの郎女、 トホシの郎女
次迦多遲王。 次に迦多遲かたぢの王 カタヂの王の御
〈五柱〉 五柱。 五方です。
     
又娶。
葛城之野伊呂賣。
〈此三字以音〉
また葛城かづらきの野の
伊呂賣いろめに娶ひて、
またカヅラキノノ
ノイロメと結婚して
生御子。
伊奢能麻和迦王。
〈一柱〉
生みませる御子、
伊奢いざの麻和迦まわかの王
一柱。
お生みになつた御子は、
イザノマワカの王
お一方です。
     
此天皇之御子等。 この天皇の御子たち、 すべてこの天皇の御子たちは
并廿六王。
〈男王十一。女王十五〉
并はせて二十六王
はたちまりむはしら
(男王十一、女王十五)
合わせて二十六王
おいで遊あそばされました。
男王十一人女王十五人です。
     
此中大雀命者。
治天下也。
この中に大雀の命は、
天の下治らしめしき。
この中でオホサザキの命は
天下をお治めになりました。
仲哀天皇陵 古事記
中巻⑧
15代 応神天皇
宮と系譜
大山守命と大雀命