紫式部集 第六部:初々し出仕

第五部
転機
紫式部集
第六部
初々し出仕
第七部
栄花と追憶
詳解
定家本
和歌 人物
56
異91
の憂さは のうちに 慕ひきて
 いま九重ぞ 思ひ乱るる
紫式部
57
異92
閉ぢたりし 岩間の氷 うち解け
 をだえの水も 影見えじやは
紫式部
58
異93
山辺の 花吹きまがふ 谷風に
 びし水も 解けざらめやは
ほのかに語らひける人
59
異94
吉野は 春のけしきに 霞めども
 ぼほれたる 雪の下草
紫式部
60
異57
憂きことを 思ひ乱れて 青柳の
 いと
久しくも なりにけるかな
宮の弁のおもと
61
異ナシ
つれづれと 長雨降る日は 青柳の
 いと
憂き世に 乱れて経る
紫式部
62
異58
わりなしや 人こそ人と 言はざらめ
 みづから身をや 思ひ捨つべき
紫式部
63
異59
忍びつる 根ぞ現はるる 菖蒲草
 言はぬに朽ちて やみぬべければ
紫式部or?
64
異60
今日はかく 引きけるものを 菖蒲草
 わがみ隠れに 濡れわたりつる
?or紫式部
65
異日1
妙なりや 今日は五月の 五日とて
 五つの巻の あへる御
紫式部:日記ナシ
66
異日2
篝火の 影も騒がぬ 水に
 いく千代まむ の光ぞ
紫式部:日記ナシ
67
異日3
めるの 底まで照らす 篝火の
 まばゆきまでも 憂きわが身かな
紫式部:日記ナシ