紫式部集 第十一部:終の予感

第十部
天の川の人
紫式部集
第十一部
終の予感
   
詳解
定家本
和歌 人物
114
異日6
菊の露 若ゆばかりに 袖触れ
 花のあるじに 千代は譲らむ
紫式部:日記4

異日7
水鳥を 水の上とや よそに見む
 われも浮きたる 世を過ぐしつつ
紫式部:日記6
115
異日8
雲間なく 眺むる空も かきくらし
 いかにしのぶる 時雨なるらむ
小少将の君:日記7
116
異日9
ことわりの 時雨は 雲間あれど
 眺むる袖ぞ 乾く世もなき
紫式部:日記8
117
異日10
浮きせし 水の上のみ 恋しくて
 鴨の上毛に さえぞ劣らぬ
大納言の君:日記11
118
異日11
うち払ふ 友なきころの 覚めには
 つがひし鴛鴦ぞ 夜半に恋しき
紫式部:日記12
119
異109
なにばかり 心尽くしに 眺めねど
 見しに暮れぬる 秋の月影
紫式部
120
異110
たづきなき 旅の空なる 住まひをば
 雨もよに訪ふ もあらじな
?or紫式部
121
異111
挑む あまた聞こゆる 百敷
 相撲憂しとは 思ひ知るやは
紫式部or?
122
異112
恋ひわびて ありふるほどの 初雪
 消えぬるかとぞ 疑はれける
123
異113
経ればかく
 さのみまさる 
 荒れたる庭に 積もる初雪
紫式部

異114
いづくとも 身をやる方の れねば
 しと見つつも ながらふるかな
紫式部(詞書なし)
124
異64
暮れぬ間の 身をば思はで 人の
 哀れをるぞ かつは悲しき
紫式部
125
異65
誰れか
 永らへて見む 書き留めし
 跡は消えせぬ 形見なれども
紫式部
126
異66
亡き人を 偲ぶることも いつまてぞ
 今日のあはれは 明日のわが身を
加賀少納言