古事記 玉緒の謎かけ~原文対訳

母子奪取作戦 古事記
中巻④
11代 垂仁天皇
サホ姫サホ彦兄妹物語
⑦玉緒の謎掛け
不得地玉作
原文 書き下し
(武田祐吉)
現代語訳
(武田祐吉)
爾其后。 ここにその后、 しかるに皇后は
豫知其情。 あらかじめ
その御心を知りたまひて、
あらかじめ
天皇の御心の程をお知りになつて、
悉剃其髮。 悉にその髮を剃りて、 悉く髮をお剃りになり、
以髮覆其頭。 その髮もちてその頭を覆ひ、 その髮でお頭を覆おおい、
亦腐玉緒。 また玉の緒を腐くたして、 また玉の緒を腐らせて
三重纒手。 御手に三重纏まかし、 御手に三重お纏きになり、
且以酒腐御衣。 また酒もちて御衣みけしを腐して、 また酒でお召物を腐らせて、
如全衣服。 全き衣みそのごと
服けせり。
完全なお召物のようにして
著ておいでになりました。
     
如此設備而。 かく設け備へて、 かように準備をして
抱其御子。 その御子を抱うだきて、 御子をお抱きになつて
刺出城外。 城の外にさし出でたまひき。 城の外にお出になりました。
爾其力士等。 ここにその力士ちからびとども、 そこで力士たちが
取其御子。 その御子を取りまつりて、 その御子をお取り申し上げて、
即握其御祖。 すなはちその御祖みおやを
握とりまつらむとす。
その母君をも
お取り申そうとして、
爾。 ここに  
握其御髮者。 その御髮を握とれば、 御髮を取れば
御髮自落。 御髮おのづから落ち、 御髮がぬけ落ち、
握其御手者。 その御手を握とれば、 御手を握れば
玉緒且絶。 玉の緒また絶え、 玉の緒が絶え、
握其御衣者。 その御衣みけしを握とれば、 お召物を握れば
御衣便破。 御衣すなはち破れつ。 お召物が破れました。
     
是以
取獲其御子。
ここを以ちて
その御子を取り獲て、
こういう次第で
御子を取ることはできましたが、
不得其御祖。 その御祖おやをば
えとりまつらざりき。
母君を
取ることができませんでした。
母子奪取作戦 古事記
中巻④
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サホ姫サホ彦兄妹物語
⑦玉緒の謎掛け
不得地玉作