万葉集 第十八巻:一覧と配置

第十七巻 万葉集
第十八巻
第十九巻

 
 万葉集第十八巻、その一覧と配置(歌の内容はリンク先を参照)。
 ここでは個別の歌の検討というより、全体の配置に示される万葉の構造を見る。
 

第十八巻 目次と配置(4032~4138:107首)
  4032
田邊福麻呂
4033
福麻呂
4034
福麻呂
4035
福麻呂
4036
福麻呂
4037
4038
福麻呂
4039
福麻呂
4040
福麻呂
4041
福麻呂
4042
福麻呂
4043
4044
4045
4046
福麻呂
4047
遊行女婦土師
4048
4049
福麻呂
4050
久米廣縄
4051
久米廣縄
4052
福麻呂
4053
久米廣縄
4054
4055
4056
橘諸兄
4057
元正
4058
元正
4059
河内女王
4060
粟田女王
4061
粟田女王
4062
福麻呂伝
4063
福麻呂伝
4064
4065
山上臣
4066
4067
遊行女婦土師
4068
4069
能登乙美
4070
4071
4072
4073
大伴池主
4074
池主
4075
池主
4076
4077
4078
4079
4080
大伴坂上郎女
4081
大伴坂上郎女
4082
4083
4084
4085
4086
4087
内蔵縄麻呂
4088
4089
4090
4091
4092
4093
4094
4095
4096
4097
4098
4099
4100
 
 
4101
4102
4103
4104
4105
4106
4107
4108
4109
4110
4111
4112
4113
4114
4115
4116
4117
4118
4119
4120
4121
4122
4123
4124
4125
4126
4127
4128
池主
4129
池主
4130
池主
4131
池主
4132
池主
4133
池主
4134
4135
4136
4137
4138
   
 

第十八巻

   
   18/4032
題詞 天平廿年春三月廾三日左大臣橘家之使者造酒司令史田<邊>福麻呂饗于守大伴宿祢家持舘爰作新歌并便誦古詠各述心緒
題訓 天平てむひやう二十一年はたとせまりひととせといふとし、春三月やよひの二十三日はつかまりみかのひ、左大臣ひだりのおほまへつきみ橘の家の使者つかひ造酒司さけのつかさの令史ふみひと田邊史福麿たのべのふみひとさきまろを、守かみ大伴宿禰家持が館たちに饗あへす。爰に新歌にひうたを作よみ、また古詠ふるうたを誦うたひて、各おのもおのも心緒おもひを述ぶ
原文 奈呉乃宇美尓 布祢之麻志可勢 於伎尓伊泥弖 奈美多知久夜等 見底可敝利許牟
訓読 奈呉の海に舟しまし貸せ沖に出でて波立ち来やと見て帰り来む
仮名 なごのうみに ふねしましかせ おきにいでて なみたちくやと みてかへりこむ
左注 (右四首田邊史福麻呂)
校異 邊史→邊 [元][類][細]
事項 天平20年3月23日 作者:田辺福麻呂 地名 高岡 富山 宴席 挨拶 大伴家持 年紀
訓異 なごのうみに;なこのうみに, おきにいでて;おきにいてて,
   
  18/4033
題詞 (天平廿年春三月廾三日左大臣橘家之使者造酒司令史田<邊>福麻呂饗于守大伴宿祢家持舘爰作新歌并便誦古詠各述心緒)
原文 奈美多<底>波 奈呉能宇良<未>尓 余流可比乃 末奈伎孤悲尓曽 等之波倍尓家流
訓読 波立てば奈呉の浦廻に寄る貝の間なき恋にぞ年は経にける
仮名 なみたてば なごのうらみに よるかひの まなきこひにぞ としはへにける
左注 (右四首田邊史福麻呂)
校異 弖→底 [類][紀][温] / 末→未 [万葉集古義]
事項 天平20年3月23日 作者:田辺福麻呂 宴席 挨拶 序詞 地名 高岡 富山 恋情 大伴家持 年紀
訓異 なみたてば;なみたては, なごのうらみに;なこのうらまに, まなきこひにぞ;まなきこひにそ,
   
  18/4034
題詞 (天平廿年春三月廾三日左大臣橘家之使者造酒司令史田<邊>福麻呂饗于守大伴宿祢家持舘爰作新歌并便誦古詠各述心緒)
原文 奈呉能宇美尓 之保能波夜非波 安佐里之尓 伊<泥>牟等多豆波 伊麻曽奈久奈流
訓読 奈呉の海に潮の早干ばあさりしに出でむと鶴は今ぞ鳴くなる
仮名 なごのうみに しほのはやひば あさりしに いでむとたづは いまぞなくなる
左注 (右四首田邊史福麻呂)
校異 R→泥 [元][類][紀][細]
事項 天平20年3月23日 作者:田辺福麻呂 地名 高岡 富山 動物 叙景 宴席 挨拶 大伴家持 年紀
訓異 なごのうみに;なこのうみに, しほのはやひば;しほのはやひは, いでむとたづは;いてむとたつは, いまぞなくなる;いまそなくなる,
   
  18/4035
題詞 (天平廿年春三月廾三日左大臣橘家之使者造酒司令史田<邊>福麻呂饗于守大伴宿祢家持舘爰作新歌并便誦古詠各述心緒)
原文 保等登藝須 伊等布登伎奈之 安夜賣具左 加豆良尓<勢>武日 許由奈伎和多礼
訓読 霍公鳥いとふ時なしあやめぐさかづらにせむ日こゆ鳴き渡れ
仮名 ほととぎす いとふときなし あやめぐさ かづらにせむひ こゆなきわたれ
左注 右四首田邊史福麻呂
左注訓 右の四首ようたは、田邊史福麿。
校異 藝→勢 [細]
事項 天平20年3月23日 作者:田辺福麻呂 動物 植物 叙景 宴席 挨拶 大伴家持 年紀
訓異 ほととぎす;ほとときす, あやめぐさ;あやめくさ, かづらにせむひ;かつらにせむひ,
   
  18/4036
題詞 于時期之明日将遊覧布勢水海仍述懐各作歌
題訓 その時明日布勢ふせの水海に遊覧あそばむと期ちぎりき。かれ懐おもひを述べて各おのもおのも作よめる歌
原文 伊可尓安流 布勢能宇良曽毛 許己太久尓 吉民我弥世武等 和礼乎等登牟流
訓読 いかにある布勢の浦ぞもここだくに君が見せむと我れを留むる
仮名 いかにある ふせのうらぞも ここだくに きみがみせむと われをとどむる
左注 右一首田邊史福麻呂 ( / 前件十首歌者廿四日宴作之 )
左注訓 右の一首ひとうたは、田邊史福麿。
校異 なし
事項 天平20年3月24日 作者:田辺福麻呂 地名 氷見 富山 土地讃美 遊覧 宴席 年紀
訓異 いかにある;いかにせる, ふせのうらぞも;ふせのうらそも, ここだくに;ここたくに, きみがみせむと;きみかみせむと, われをとどむる;われをととむる,
   
  18/4037
題詞 (于時期之明日将遊覧布勢水海仍述懐各作歌)
原文 乎敷乃佐吉 許藝多母等保里 比祢毛須尓 美等母安久倍伎 宇良尓安良奈久尓 [一云 伎美我等波須母]
訓読 乎布の崎漕ぎた廻りひねもすに見とも飽くべき浦にあらなくに [一云 君が問はすも]
仮名 をふのさき こぎたもとほり ひねもすに みともあくべき うらにあらなくに [きみがとはすも]
左注 右一首守大伴宿祢家持 ( / 前件十首歌者廿四日宴作之 )
左注訓 右の一首は、守大伴宿禰家持。
校異 なし
事項 天平20年3月24日 作者:大伴家持 地名 氷見 布施 富山 土地讃美 宴席 年紀
訓異 こぎたもとほり;こきたもとほり, みともあくべき;みともあくへき, [きみがとはすも];きみかとはすも,
   
  18/4038
題詞 (于時期之明日将遊覧布勢水海仍述懐各作歌)
原文 多麻久之氣 伊都之可安氣牟 布勢能宇美能 宇良乎由伎都追 多麻母比利波牟
訓読 玉櫛笥いつしか明けむ布勢の海の浦を行きつつ玉も拾はむ
仮名 たまくしげ いつしかあけむ ふせのうみの うらをゆきつつ たまもひりはむ
左注 (右五首田邊史福麻呂 / 前件十首歌者廿四日宴作之 )
校異 なし
事項 天平20年3月24日 作者:田辺福麻呂 地名 枕詞 氷見 富山 土地讃美 宴席 年紀
訓異 たまくしげ;たまくしけ,
   
  18/4039
題詞 (于時期之明日将遊覧布勢水海仍述懐各作歌)
原文 於等能未尓 伎吉底目尓見奴 布勢能宇良乎 見受波能保良自 等之波倍奴等母
訓読 音のみに聞きて目に見ぬ布勢の浦を見ずは上らじ年は経ぬとも
仮名 おとのみに ききてめにみぬ ふせのうらを みずはのぼらじ としはへぬとも
左注 (右五首田邊史福麻呂 / 前件十首歌者廿四日宴作之 )
校異 なし
事項 天平20年3月24日 作者:田辺福麻呂 土地讃美 地名 氷見 富山 尫柜蹋 宴席 年紀
訓異 みずはのぼらじ;みすはのほらし,
   
  18/4040
題詞 (于時期之明日将遊覧布勢水海仍述懐各作歌)
原文 布勢能宇良乎 由<吉>底之見弖婆 毛母之綺能 於保美夜比等尓 可多利都藝底牟
訓読 布勢の浦を行きてし見てばももしきの大宮人に語り継ぎてむ
仮名 ふせのうらを ゆきてしみてば ももしきの おほみやひとに かたりつぎてむ
左注 (右五首田邊史福麻呂 / 前件十首歌者廿四日宴作之 )
校異 伎→吉 [元][類]
事項 天平20年3月24日 作者:田辺福麻呂 地名 土地讃美 枕詞 富山 氷見 宴席 年紀
訓異 ゆきてしみてば;ゆきてしみては, かたりつぎてむ;かたりつきてむ,
   
  18/4041
題詞 (于時期之明日将遊覧布勢水海仍述懐各作歌)
原文 宇梅能波奈 佐伎知流曽能尓 和礼由可牟 伎美我都可比乎 可多麻知我底良
訓読 梅の花咲き散る園に我れ行かむ君が使を片待ちがてら
仮名 うめのはな さきちるそのに われゆかむ きみがつかひを かたまちがてら
左注 (右五首田邊史福麻呂 / 前件十首歌者廿四日宴作之 )
校異 なし
事項 天平20年3月24日 作者:田辺福麻呂 植物 宴席 年紀
訓異 きみがつかひを;きみかつかひを, かたまちがてら;かたまちかてら,
   
  18/4042
題詞 (于時期之明日将遊覧布勢水海仍述懐各作歌)
原文 敷治奈美能 佐伎由久見礼婆 保等登<藝>須 奈久倍<吉>登伎尓 知可豆伎尓家里
訓読 藤波の咲き行く見れば霍公鳥鳴くべき時に近づきにけり
仮名 ふぢなみの さきゆくみれば ほととぎす なくべきときに ちかづきにけり
左注 右五首田邊史福麻呂 ( / 前件十首歌者廿四日宴作之 )
左注訓 右の五首は、田邊史福麿。
校異 伎→藝 [元][類][紀][細] / 伎→吉 [元][類]
事項 天平20年3月24日 作者:田辺福麻呂 年紀 植物 動物 宴席 季節
訓異 ふぢなみの;ふちなみの, さきゆくみれば;さきゆくみれは, ほととぎす;ほとときす, なくべきときに;なくへきときに, ちかづきにけり;ちかつきにけり,
   
  18/4043
題詞 (于時期之明日将遊覧布勢水海仍述懐各作歌)
原文 安須能比能 敷勢能宇良<未>能 布治奈美尓 氣太之伎奈可<受> 知良之底牟可母 [一頭云 保等登藝須]
訓読 明日の日の布勢の浦廻の藤波にけだし来鳴かず散らしてむかも [一頭云 霍公鳥]
仮名 あすのひの ふせのうらみの ふぢなみに けだしきなかず ちらしてむかも [ほととぎす]
左注 右一首大伴宿祢家持和之 / 前件十首歌者廿四日宴作之
左注訓 右の一首は、大伴宿禰家持が和こたふ。
前の件の十首歌とうたは、二十四日はつかまりよかのひの宴によめる。
校異 末→未 [万葉集古義] / 須→受 [元][類]
事項 天平20年3月24日 作者:大伴家持 年紀 宴席 地名 氷見 富山 植物 動物 季節
訓異 ふせのうらみの;ふせのうらまの, ふぢなみに;ふちなみに, けだしきなかず;けたしきなかす, [ほととぎす];ほとときす,
   
  18/4044
題詞 廿五日徃布勢水海道中馬上口号二首
題訓 二十五日はつかまりいつかのひ、布勢の水海に往く道中みち、馬にのりながら口号よめる二首うたふたつ
原文 波萬部余里 和我宇知由可波 宇美邊欲<里> 牟可倍母許奴可 安麻能都里夫祢
訓読 浜辺より我が打ち行かば海辺より迎へも来ぬか海人の釣舟
仮名 はまへより わがうちゆかば うみへより むかへもこぬか あまのつりぶね
左注 (前件十五首歌者廿五日作之)
校異 部 [元] 「へ」 (楓) / 利→里 [元][類]
事項 天平20年3月25日 年紀 作者:大伴家持 土地讃美 叙景 富山 氷見
訓異 わがうちゆかば;わかうちゆかは, あまのつりぶね;あまのつりふね,
   
  18/4045
題詞 (廿五日徃布勢水海道中馬上口号二首)
原文 於伎敝欲里 美知久流之保能 伊也麻之尓 安我毛布支見我 弥不根可母加礼
訓読 沖辺より満ち来る潮のいや増しに我が思ふ君が御船かもかれ
仮名 おきへより みちくるしほの いやましに あがもふきみが みふねかもかれ
左注 (前件十五首歌者廿五日作之)
左注訓 右の一首は、大伴宿禰家持。
校異 なし
事項 天平20年3月25日 年紀 作者:大伴家持 恋情 富山 氷見
訓異 あがもふきみが;あかもふきみか,
   
  18/4046
題詞 至水海遊覧之時各述懐作歌
題訓 水海に至りて遊覧あそぶ時、各おのもおのも懐おもひを述べて作める歌六首
原文 可牟佐夫流 多流比女能佐吉 許支米具利 見礼登<毛>安可受 伊加尓和礼世牟
訓読 神さぶる垂姫の崎漕ぎ廻り見れども飽かずいかに我れせむ
仮名 かむさぶる たるひめのさき こぎめぐり みれどもあかず いかにわれせむ
左注 右一首田邊史福麻呂 ( / 前件十五首歌者廿五日作之)
左注訓 右の一首は、田邊史福麿。
校異 裳→毛 [元]
事項 天平20年3月25日 作者:田辺福麻呂 年紀 地名 氷見 富山 土地讃美 遊覧 宴席
訓異 かむさぶる;かむさふる, こぎめぐり;こきめくり, みれどもあかず;みれともあかす,
   
  18/4047
題詞 (至水海遊覧之時各述懐作歌)
原文 多流比賣野 宇良乎許藝都追 介敷乃日波 多努之久安曽敝 移比都支尓勢<牟>
訓読 垂姫の浦を漕ぎつつ今日の日は楽しく遊べ言ひ継ぎにせむ
仮名 たるひめの うらをこぎつつ けふのひは たのしくあそべ いひつぎにせむ
左注 右一首遊行女婦土師 ( / 前件十五首歌者廿五日作之)
左注訓 右の一首は、遊行女婦うかれめ土師はにし。
校異 牟 [西(上書訂正)][元][類][古][紀]
事項 天平20年3月25日 作者:遊行女婦土師 年紀 地名 氷見 富山 土地讃美 遊覧 宴席
訓異 うらをこぎつつ;うらをこきつつ, たのしくあそべ;たのしくあそへ, いひつぎにせむ;いひつきにせむ,
   
  18/4048
題詞 (至水海遊覧之時各述懐作歌)
原文 多流比女能 宇良乎許具不祢 可治末尓母 奈良野和藝<弊>乎 和須礼氐於毛倍也
訓読 垂姫の浦を漕ぐ舟梶間にも奈良の我家を忘れて思へや
仮名 たるひめの うらをこぐふね かぢまにも ならのわぎへを わすれておもへや
左注 右一首大伴家持 ( / 前件十五首歌者廿五日作之)
左注訓 右の一首は、大伴宿禰家持。
校異 敝→弊 [元][類][紀]
事項 天平20年3月25日 作者:大伴家持 年紀 序詞 地名 氷見 富山 望郷 奈良 宴席 遊覧
訓異 うらをこぐふね;うらをこくふね, かぢまにも;かちまにも, ならのわぎへを;ならのわきへを,
   
  18/4049
題詞 (至水海遊覧之時各述懐作歌)
原文 於呂可尓曽 和礼波於母比之 乎不乃宇良能 安利蘇野米具利 見礼度安可須介利
訓読 おろかにぞ我れは思ひし乎布の浦の荒礒の廻り見れど飽かずけり
仮名 おろかにぞ われはおもひし をふのうらの ありそのめぐり みれどあかずけり
左注 右一首田邊史福麻呂 ( / 前件十五首歌者廿五日作之)
左注訓 右の一首は、田邊史福麿。
校異 なし
事項 天平20年3月25日 作者:田辺福麻呂 年紀 土地讃美 地名 氷見 富山 遊覧 宴席
訓異 おろかにぞ;おろかにそ, ありそのめぐり;ありそのめくり, みれどあかずけり;みれとあかすけり,
   
  18/4050
題詞 (至水海遊覧之時各述懐作歌)
原文 米豆良之伎 吉美我伎麻佐婆 奈家等伊比之 夜麻保<登等>藝須 奈尓加伎奈可奴
訓読 めづらしき君が来まさば鳴けと言ひし山霍公鳥何か来鳴かぬ
仮名 めづらしき きみがきまさば なけといひし やまほととぎす なにかきなかぬ
左注 右一首掾久米朝臣廣縄 ( / 前件十五首歌者廿五日作之)
左注訓 右の一首は、掾まつりごとひと久米朝臣廣繩ひろなは。
校異 等登→登等 [元][類]
事項 天平20年3月25日 作者:久米広縄 年紀 動物 宴席 遊覧 氷見 富山
訓異 めづらしき;めつらしき, きみがきまさば;きみかきまさは, やまほととぎす;やまほとときす,
   
  18/4051
題詞 (至水海遊覧之時各述懐作歌)
原文 多胡乃佐伎 許能久礼之氣尓 保登等藝須 伎奈伎等余米<婆> 波太古非米夜母
訓読 多古の崎木の暗茂に霍公鳥来鳴き響めばはだ恋ひめやも
仮名 たこのさき このくれしげに ほととぎす きなきとよめば はだこひめやも
左注 右一首大伴宿祢家持 / 前件十五首歌者廿五日作之
左注訓 右の一首は、大伴宿禰家持。
前の件の八首歌やうたは、二十五日よめる。
校異 波→婆 [元]
事項 天平20年3月25日 作者:大伴家持 年紀 地名 氷見 富山 動物 宴席 遊覧
訓異 このくれしげに;このくれしけに, ほととぎす;ほとときす, きなきとよめば;きなきとよめは, はだこひめやも;はたこひめやも,
   
  18/4052
題詞 掾久米朝臣廣縄之舘饗田邊史福麻呂宴歌四首
題訓 掾久米朝臣廣繩が館たちにて、田邊史福麿を饗あへする宴の歌四首
原文 保登等藝須 伊麻奈可受之弖 安須古要牟 夜麻尓奈久等母 之流思安良米夜母
訓読 霍公鳥今鳴かずして明日越えむ山に鳴くとも験あらめやも
仮名 ほととぎす いまなかずして あすこえむ やまになくとも しるしあらめやも
左注 右一首田邊史福麻呂 ( / 前<件>歌者廿六日作之)
左注訓 右の一首は、田邊史福麿。
校異 なし
事項 天平20年3月26日 作者:田辺福麻呂 年紀 動物 宴席 久米広縄 季節 高岡 富山
訓異 ほととぎす;ほとときす, いまなかずして;いまなかすして,
   
  18/4053
題詞 (掾久米朝臣廣縄之舘饗田邊史福麻呂宴歌四首)
原文 許能久礼尓 奈里奴流母能乎 保等登藝須 奈尓加伎奈可奴 伎美尓安敝流等吉
訓読 木の暗になりぬるものを霍公鳥何か来鳴かぬ君に逢へる時
仮名 このくれに なりぬるものを ほととぎす なにかきなかぬ きみにあへるとき
左注 右一首久米朝臣廣縄 ( / 前<件>歌者廿六日作之)
左注訓 右の一首は、久米朝臣廣繩。
校異 なし
事項 天平20年3月26日 作者:久米広縄 年紀 田辺福麻呂 宴席 動物 高岡 富山
訓異 ほととぎす;ほとときす,
   
  18/4054
題詞 (掾久米朝臣廣縄之舘饗田邊史福麻呂宴歌四首)
原文 保等登藝須 許欲奈枳和多礼 登毛之備乎 都久欲尓奈蘇倍 曽能可氣母見牟
訓読 霍公鳥こよ鳴き渡れ燈火を月夜になそへその影も見む
仮名 ほととぎす こよなきわたれ ともしびを つくよになそへ そのかげもみむ
左注 (右二首大伴宿祢家持 / 前<件>歌者廿六日作之)
校異 なし
事項 天平20年3月26日 作者:大伴家持 年紀 久米広縄 田辺福麻呂 動物 宴席 高岡 富山
訓異 ほととぎす;ほとときす, こよなきわたれ;こゆなきわたれ, ともしびを;ともしひを, そのかげもみむ;そのかけもみむ,
   
  18/4055
題詞 (掾久米朝臣廣縄之舘饗田邊史福麻呂宴歌四首)
原文 可敝流<未>能 美知由可牟日波 伊都波多野 佐<可>尓蘇泥布礼 和礼乎事於毛<波>婆
訓読 可敝流廻の道行かむ日は五幡の坂に袖振れ我れをし思はば
仮名 かへるみの みちゆかむひは いつはたの さかにそでふれ われをしおもはば
左注 右二首大伴宿祢家持 / 前<件>歌者廿六日作之
左注訓 右の二首は、大伴宿禰家持。
前の件の四首歌ようたは、二十六日よめる。
校異 末→未 [万葉集古義] / 波 [元][類] 婆 / 加→可 [元][類][古] / 婆→波 [元][類][紀] / 伴→件 [元][紀][細]
事項 天平20年3月25日 作者:大伴家持 年紀 地名 福井 敦賀 羈旅 別離 出発 宴席 久米広縄 田辺福麻呂 高岡 富山
訓異 かへるみの;かへるまの, さかにそでふれ;さかにそてふれ, われをしおもはば;われをしおもはは,
   
  18/4056
題詞 太上皇御在於難波宮之時歌七首 [清足姫天皇也] / 左大臣橘宿祢歌一首
題訓 太上皇おほきすめらみこと 清足姫天皇なり 難波の宮に御在います時の歌七首
左大臣ひだりのおほまへつきみ橘宿禰の歌一首
原文 保里江尓波 多麻之可麻之乎 大皇乎 美敷祢許我牟登 可年弖之里勢婆
訓読 堀江には玉敷かましを大君を御船漕がむとかねて知りせば
仮名 ほりえには たましかましを おほきみを みふねこがむと かねてしりせば
左注 (右<二>首件歌者御船泝江遊宴之日左大臣奏并御製)
校異 なし
事項 作者:橘諸兄 地名 難波 大阪 宴席 歓迎 元正天皇 伝誦 行幸
訓異 みふねこがむと;みふねこかむと, かねてしりせば;かねてしりせは,
   
  18/4057
題詞 (太上皇御在於難波宮之時歌七首 [清足姫天皇也]) / 御製歌一首[和]
題訓 御製歌みよみませるおほみうた一首 和
原文 多萬之賀受 伎美我久伊弖伊布 保里江尓波 多麻之伎美弖々 都藝弖可欲波牟 [或云 多麻古伎之伎弖]
訓読 玉敷かず君が悔いて言ふ堀江には玉敷き満てて継ぎて通はむ [或云 玉扱き敷きて]
仮名 たましかず きみがくいていふ ほりえには たましきみてて つぎてかよはむ [たまこきしきて]
左注 右<二>首件歌者御船泝江遊宴之日左大臣奏并御製
左注訓 右の件の二首歌ふたうたは、御船江より泝のぼりて 遊宴うたげする日、左大臣の奏まをす歌、また御製おほみうた。
校異 一→二 [代匠記精撰本]
事項 作者:元正天皇 橘諸兄 宴席 地名 難波 大阪 異伝 推敲 伝誦 行幸
訓異 たましかず;たましかす, きみがくいていふ;きみかくいていふ, つぎてかよはむ;つきてかよはむ, [たまこきしきて][寛].
   
  18/4058
題詞 (太上皇御在於難波宮之時歌七首 [清足姫天皇也]) / 御製歌一首
題訓 御製歌一首
原文 多知婆奈能 登乎能多知<婆>奈 夜都代尓母 安礼波和須礼自 許乃多知婆奈乎
訓読 橘のとをの橘八つ代にも我れは忘れじこの橘を
仮名 たちばなの とをのたちばな やつよにも あれはわすれじ このたちばなを
左注 (右件歌者在於左大臣橘卿之宅肆宴御歌并奏歌<也>)
校異 歌 [西] 謌 / 婆→波 [類]
事項 作者:元正天皇 橘諸兄 宴席 肆宴 植物 寿歌 大阪 難波 伝誦 行幸
訓異 たちばなの;たちはなの, とをのたちばな;とをのたちはな, あれはわすれじ;あれはわすれし, このたちばなを;このたちはなを,
   
  18/4059
題詞 (太上皇御在於難波宮之時歌七首 [清足姫天皇也]) / 河内女王歌一首
題訓 河内女王の歌一首
原文 多知婆奈能 之多泥流尓波尓 等能多弖天 佐可弥豆伎伊麻須 和我於保伎美可母
訓読 橘の下照る庭に殿建てて酒みづきいます我が大君かも
仮名 たちばなの したでるにはに とのたてて さかみづきいます わがおほきみかも
左注 (右件歌者在於左大臣橘卿之宅肆宴御歌并奏歌<也>)
校異 なし
事項 作者:河内女王 植物 大君讃美 橘諸兄 難波 大阪 伝誦 肆宴 宴席 元正天皇 行幸
訓異 たちばなの;たちはなの, したでるにはに;したてるにはに, さかみづきいます;さかみつきいます, わがおほきみかも;わかおほきみかも,
   
  18/4060
題詞 (太上皇御在於難波宮之時歌七首 [清足姫天皇也]) / 粟田女王歌一首
題訓 粟田女王の歌一首
原文 都奇麻知弖 伊敝尓波由可牟 和我佐世流 安加良多知婆奈 可氣尓見要都追
訓読 月待ちて家には行かむ我が插せる赤ら橘影に見えつつ
仮名 つきまちて いへにはゆかむ わがさせる あからたちばな かげにみえつつ
左注 右件歌者在於左大臣橘卿之宅肆宴御歌并奏歌<也>
左注訓 右の件の三首歌は、左大臣橘の卿まへつきみの宅いへに在いま して、肆宴とよのあかりきこしめす御歌おほみうた、また奏す歌。
校異 <>→也 [紀][細]
事項 作者:粟田女王 植物 元正天皇 橘諸兄 難波 大阪 伝誦 肆宴 宴席 行幸
訓異 わがさせる;わかさせる, あからたちばな;あからたちはな, かげにみえつつ;かけにみえつつ,
   
  18/4061
題詞 (太上皇御在於難波宮之時歌七首 [清足姫天皇也]) /
原文 保里江欲里 水乎妣吉之都追 美布祢左須 之津乎能登母波 加波能瀬麻宇勢
訓読 堀江より水脈引きしつつ御船さすしづ男の伴は川の瀬申せ
仮名 ほりえより みをびきしつつ みふねさす しつをのともは かはのせまうせ
左注 (右件歌者御船以綱手泝江遊宴之日作也 傳誦之人田邊史福麻呂是也)
校異 なし
事項 地名 難波 大阪 宴席 元正天皇 田辺福麻呂 伝誦 行幸 肆宴
訓異 みをびきしつつ;みをひきしつつ,
   
  18/4062
題詞 (太上皇御在於難波宮之時歌七首 [清足姫天皇也]) /
原文 奈都乃欲波 美知多豆多都之 布祢尓能里 可波乃瀬其等尓 佐乎左指能保礼
訓読 夏の夜は道たづたづし船に乗り川の瀬ごとに棹さし上れ
仮名 なつのよは みちたづたづし ふねにのり かはのせごとに さをさしのぼれ
左注 右件歌者御船以綱手泝江遊宴之日作也 傳誦之人田邊史福麻呂是也
左注訓 右の件の二首歌は、御船綱手を以ひきて江より泝のぼり遊宴うたげ せる日作めり。伝へ誦よむ人は、田邊史福麿なり。
校異 なし
事項 宴席 元正天皇 田辺福麻呂 伝誦 行幸 肆宴 宴席
訓異 みちたづたづし;みちたつたつし, かはのせごとに;かはのせことに, さをさしのぼれ;さをさしのほれ,
   
  18/4063
題詞 後追和橘歌二首
題訓 後に追ひて和なぞらふる橘の歌二首
原文 等許余物能 己能多知婆奈能 伊夜弖里尓 和期大皇波 伊麻毛見流其登
訓読 常世物この橘のいや照りにわご大君は今も見るごと
仮名 とこよもの このたちばなの いやてりに わごおほきみは いまもみるごと
左注 (右二首大伴宿祢家持作之)
校異 なし
事項 作者:大伴家持 追和 元正天皇 橘諸兄 植物 大君讃美 高岡 富山
訓異 このたちばなの;このたちはなの, わごおほきみは;わかおほきみは, いまもみるごと;いまもみること,
   
  18/4064
題詞 (後追和橘歌二首)
原文 大皇波 等吉波尓麻佐牟 多知婆奈能 等能乃多知婆奈 比多底里尓之弖
訓読 大君は常磐にまさむ橘の殿の橘ひた照りにして
仮名 おほきみは ときはにまさむ たちばなの とののたちばな ひたてりにして
左注 右二首大伴宿祢家持作之
左注訓 右の二首は、大伴宿禰家持がよめる。
校異 なし
事項 作者:大伴家持 追和 元正天皇 橘諸兄 植物 大君讃美 追和 高岡 富山
訓異 たちばなの;たちはなの, とののたちばな;とののたちはな,
   
  18/4065
題詞 射水郡驛舘之屋柱題著歌一首
題訓 射水郡いみづのこほりの駅館うまやの屋柱はしらに題かき著くる歌一首
原文 安佐妣良伎 伊里江許具奈流 可治能於登乃 都波良都<婆>良尓 吾家之於母保由
訓読 朝開き入江漕ぐなる楫の音のつばらつばらに我家し思ほゆ
仮名 あさびらき いりえこぐなる かぢのおとの つばらつばらに わぎへしおもほゆ
左注 右一首山上臣作 不審名 或云憶良大夫之男 但其正名未詳也
左注訓 右の一首は、山上臣がよめる。名はしらず。或ひと云く、 憶良の大夫まへつきみの男むすこといへり。但其の正名なさだかならず。
校異 波→婆 [類][細]
事項 作者:山上臣(山上憶良・息子) 伝誦 望郷 序詞
訓異 あさびらき;あさひらき, いりえこぐなる;いりえこくなる, かぢのおとの;かちのおとの, つばらつばらに;つはらつはらに, わぎへしおもほゆ;わかへしおもほゆ,
   
  18/4066
題詞 四月一日掾久米朝臣廣縄之舘宴歌四首
題訓 四月うつきの一日つきたちのひ、掾久米朝臣廣繩が館にて宴せる歌四首
原文 宇能花能 佐久都奇多知奴 保等登藝須 伎奈吉等与米余 敷布美多里登母
訓読 卯の花の咲く月立ちぬ霍公鳥来鳴き響めよ含みたりとも
仮名 うのはなの さくつきたちぬ ほととぎす きなきとよめよ ふふみたりとも
左注 右一首守大伴宿祢家持作之
左注訓 右の一首は、守大伴宿禰家持がよめる。
校異 なし
事項 天平20年4月1日 作者:大伴家持 年紀 植物 久米広縄 宴席 動物 季節 高岡 富山
訓異 ほととぎす;ほとときす,
   
  18/4067
題詞 (四月一日掾久米朝臣廣縄之舘宴歌四首)
原文 敷多我美能 夜麻尓許母礼流 保等登藝須 伊麻母奈加奴香 伎美尓<伎>可勢牟
訓読 二上の山に隠れる霍公鳥今も鳴かぬか君に聞かせむ
仮名 ふたがみの やまにこもれる ほととぎす いまもなかぬか きみにきかせむ
左注 右一首遊行女婦土師作之
左注訓 右の一首は、遊行女婦うかれめ土師はにしがよめる。
校異 妓→伎 [類][京]
事項 天平20年4月1日 作者:遊行女婦土師 年紀 久米広縄 宴席 高岡 富山 地名 動物 季節
訓異 ふたがみの;ふたかみの, ほととぎす;ほとときす,
   
  18/4068
題詞 (四月一日掾久米朝臣廣縄之舘宴歌四首)
原文 乎里安加之母 許余比波能麻牟 保等登藝須 安氣牟安之多波 奈伎和多良牟曽 [二日應立夏節 故謂之明旦将喧也]
訓読 居り明かしも今夜は飲まむ霍公鳥明けむ朝は鳴き渡らむぞ [二日應立夏節 故謂之明旦将喧也]
仮名 をりあかしも こよひはのまむ ほととぎす あけむあしたは なきわたらむぞ
左注 右一首守大伴宿祢家持作之
左注訓 二日ハ立夏ノ節ニ応アタル。故カレ明旦ハ喧カムト謂ヘリ。
右の一首は、守大伴宿禰家持がよめる。
校異 なし
事項 天平20年4月1日 作者:大伴家持 年紀 久米広縄 動物 季節 宴席 高岡 富山
訓異 をりあかしも;をりあかし, ほととぎす;ほとときす, なきわたらむぞ;なきわたらむそ,
   
  18/4069
題詞 (四月一日掾久米朝臣廣縄之舘宴歌四首)
原文 安須欲里波 都藝弖伎許要牟 保登等藝須 比登欲能可良尓 古非和多流加母
訓読 明日よりは継ぎて聞こえむ霍公鳥一夜のからに恋ひわたるかも
仮名 あすよりは つぎてきこえむ ほととぎす ひとよのからに こひわたるかも
左注 右一首羽咋郡擬主帳能登臣乙美作
左注訓 右の一首は、羽咋郡はくひのこほりの擬主帳ふみひと能登臣乙美がよめる。
校異 なし
事項 天平20年4月1日 作者:能登乙美 年紀 動物 恋情 季節 宴席 久米広縄 高岡 富山
訓異 つぎてきこえむ;つきてきこえむ, ほととぎす;ほとときす,
   
  18/4070
題詞 詠庭中牛麦花歌一首
題訓 庭中にはの牛麦なでしこの花を詠める歌一首
原文 比登母等能 奈泥之故宇恵之 曽能許己呂 多礼尓見世牟等 於母比曽米家牟
訓読 一本のなでしこ植ゑしその心誰れに見せむと思ひ始めけむ
仮名 ひともとの なでしこうゑし そのこころ たれにみせむと おもひそめけむ
左注 右先國師従僧清見可入京師 <因>設飲饌饗宴 于時主人大伴宿祢家持作此歌詞送酒清見也
左注訓 右、先の国師の従僧ずそう清見、京師みやこに入まゐのぼらむとす。 因かれ飲饌あるじを設まけて饗宴うたげす。時に主人あろじ大伴宿禰家持、 此の歌詞うたを作みて、酒を清見に送れりき。
校異 日→因 [元][紀]
事項 天平21年3月 作者:大伴家持 年紀 清見 宴席 羈旅 出発 餞別 植物 別離 高岡 富山
訓異 なでしこうゑし;なてしこうゑし,
   
  18/4071
題詞 なし
題訓 また作よめる歌二首
原文 之奈射可流 故之能吉美良等 可久之許曽 楊奈疑可豆良枳 多努之久安蘇婆米
訓読 しなざかる越の君らとかくしこそ柳かづらき楽しく遊ばめ
仮名 しなざかる こしのきみらと かくしこそ やなぎかづらき たのしくあそばめ
左注 右郡司已下子弟已上諸人多集此會 因守大伴宿祢家持作此歌也
左注訓 右、郡司こほりのつかさより下しも、子弟より上かみ、諸人此の 会つどひにあり。因かれ守大伴宿禰家持、此の歌を作める。
校異 なし
事項 天平21年3月 作者:大伴家持 年紀 枕詞 植物 宴席 高岡 富山
訓異 しなざかる;しなさかる, こしのきみらと;こしのきみのと, やなぎかづらき;やなきかつらき, たのしくあそばめ;たのしくあそはめ,
   
  18/4072
題詞 なし
原文 奴<婆>多麻能 欲和多流都奇乎 伊久欲布等 余美都追伊毛波 和礼麻都良牟曽
訓読 ぬばたまの夜渡る月を幾夜経と数みつつ妹は我れ待つらむぞ
仮名 ぬばたまの よわたるつきを いくよふと よみつついもは われまつらむぞ
左注 右此夕月光遅流和風稍扇 即因属目聊作此歌也
左注訓 右、此の夕、月の光遅く流れて、和やかなる風稍たちぬ。 即ち目に属ふるるに因りて、聊か此の歌を作めり。
校異 波→婆 [元][類]
事項 天平21年3月 作者:大伴家持 年紀 叙景 高岡 富山 枕詞 望郷
訓異 ぬばたまの;ぬはたまの, われまつらむぞ;われまつらむそ,
   
  18/4073
題詞 越前國掾大伴宿祢池主来贈歌三首 / 以今月十四日到来深見村 望拜彼北方常念芳徳 何日能休 兼以隣近忽増戀 加以先書云 暮春可惜 促膝未期 生別悲<兮> 夫復何言臨紙悽断奉状不備 / 三月一五日大伴宿祢池主 / 一 古人云
題訓 越前国こしのみちのくちのくにの掾大伴宿禰池主が来贈おくれる歌三首
今月十四日を以ちて、深見の村に到来いたり、彼の北方を望拝す。常に芳徳を思ふこと、何れの日か能く休やまむ。兼また隣近に以よりて、忽ちに恋緒を増す。加以しかのみにあらず、先の書に云はく、「暮春惜しむべし、膝を促ちかづくることいつとかせむ」と。生別の悲しみ、それ復た何をか言はむ。紙に臨むかひて悽断す。奏状不備。
一 古人いにしへひとの云へらく
原文 都奇見礼婆 於奈自久尓奈里 夜麻許曽婆 伎美我安多里乎 敝太弖多里家礼
訓読 月見れば同じ国なり山こそば君があたりを隔てたりけれ
仮名 つきみれば おなじくになり やまこそば きみがあたりを へだてたりけれ
左注 なし
校異 号→兮 [矢][京]
事項 天平21年3月15日 作者:大伴池主 年紀 高岡 富山 大伴家持 贈答 書簡 福井 恋情
訓異 つきみれば;つきみれは, おなじくになり;おなしくになり, やまこそば;やまこそは, きみがあたりを;きみかあたりを, へだてたりけれ;へたてたりけり,
   
  18/4074
題詞 (越前國掾大伴宿祢池主来贈歌三首 / 以今月十四日到来深見村 望拜彼北方常念芳徳 何日能休 兼以隣近忽増戀 加以先書云 暮春可惜 促膝未期 生別悲<兮> 夫復何言臨紙悽断奉状不備 / 三月一五日大伴宿祢池主) / 一 属物發思
題訓 一 物に属つきて思ひを発のぶ
原文 櫻花 今曽盛等 雖人云 我佐不之毛 支美止之不在者
訓読 桜花今ぞ盛りと人は言へど我れは寂しも君としあらねば
仮名 さくらばな いまぞさかりと ひとはいへど われはさぶしも きみとしあらねば
左注 なし
校異 在 [元][類] 里
事項 天平21年3月15日 作者:大伴池主 年紀 大伴家持 高岡 富山 贈答 書簡 福井 恋情 植物
訓異 さくらばな;さくらはな, いまぞさかりと;いまそさかりと, ひとはいへど;ひとはいへと, われはさぶしも;われはさふしも, きみとしあらねば;きみとしあらねは,
   
  18/4075
題詞 (越前國掾大伴宿祢池主来贈歌三首 / 以今月十四日到来深見村 望拜彼北方常念芳徳 何日能休 兼以隣近忽増戀 加以先書云 暮春可惜 促膝未期 生別悲<兮> 夫復何言臨紙悽断奉状不備 / 三月一五日大伴宿祢池主) / 一 所心歌
題訓 一 所心歌おもひをのぶるうた
原文 安必意毛波受 安流良牟伎美乎 安夜思苦毛 奈氣伎和多流香 比登能等布麻泥
訓読 相思はずあるらむ君をあやしくも嘆きわたるか人の問ふまで
仮名 あひおもはず あるらむきみを あやしくも なげきわたるか ひとのとふまで
左注 なし
左注訓 三月やよひの十五日とをかまりいつかのひ、大伴宿禰池主。
校異 歌 [西] 謌
事項 天平21年3月15日 作者:大伴池主 年紀 大伴家持 高岡 富山 贈答 書簡 福井 恋情 怨恨
訓異 あひおもはず;あひおもはす, なげきわたるか;なけきわたるか, ひとのとふまで;ひとのとふまて,
   
  18/4076
題詞 越中國守大伴家持報贈歌四首 / 一 答古人云
題訓 越中国の守大伴宿禰家持が報贈こたふる歌四首
一 古人の云うたに答ふ
原文 安之比奇能 夜麻波奈久毛我 都奇見礼婆 於奈自伎佐刀乎 許己呂敝太底都
訓読 あしひきの山はなくもが月見れば同じき里を心隔てつ
仮名 あしひきの やまはなくもが つきみれば おなじきさとを こころへだてつ
左注 (三月十六日)
校異 なし
事項 天平21年3月16日 作者:大伴家持 年紀 高岡 富山 贈答 書簡 大伴池主 枕詞 恋情
訓異 やまはなくもが;やまはなくもか, つきみれば;つきみれは, おなじきさとを;おなしきさとを, こころへだてつ;こころへたてつ,
   
  18/4077
題詞 (越中國守大伴家持報贈歌四首)一 答属目發思兼詠云遷<任>舊宅西北隅櫻樹
題訓 一 物に属きて思ひを発ぶに答へ、兼また遷し任よさして旧りにし宅の西北にしきたの隅の桜の樹を詠める
原文 和我勢故我 布流伎可吉都能 佐<久>良婆奈 伊麻太敷布賣利 比等目見尓許祢
訓読 我が背子が古き垣内の桜花いまだ含めり一目見に来ね
仮名 わがせこが ふるきかきつの さくらばな いまだふふめり ひとめみにこね
左注 (三月十六日)
校異 住→任 [元][細] / 具→久 [元][類]
事項 天平21年3月16日 作者:大伴家持 年紀 植物 高岡 富山 贈答 書簡 大伴池主 恋愛
訓異 わがせこが;わかせこか, さくらばな;さくらはな, いまだふふめり;いまたふふめり,
   
  18/4078
題詞 (越中國守大伴家持報贈歌四首)一 答所心即以古人之跡代今日之意
題訓 一 所心おもひをのぶに答ふ。即ち古人之跡ふることを今日の意こころに代へたり
原文 故敷等伊布波 衣毛名豆氣多理 伊布須敝能 多豆伎母奈吉波 安<我>未奈里家利
訓読 恋ふといふはえも名付けたり言ふすべのたづきもなきは我が身なりけり
仮名 こふといふは えもなづけたり いふすべの たづきもなきは あがみなりけり
左注 (三月十六日)
校異 賀→我 [元]
事項 天平21年3月16日 作者:大伴家持 年紀 大伴池主 高岡 富山 贈答 書簡 恋愛
訓異 えもなづけたり;えもなつけたり, いふすべの;いふすへの, たづきもなきは;たつきもなきは, あがみなりけり;あかみなりけり,
   
  18/4079
題詞 (越中國守大伴家持報贈歌四首)一 更矚目
題訓 一 また物に属きてよめる
原文 美之麻野尓 可須美多奈妣伎 之可須我尓 伎乃敷毛家布毛 由伎波敷里都追
訓読 三島野に霞たなびきしかすがに昨日も今日も雪は降りつつ
仮名 みしまのに かすみたなびき しかすがに きのふもけふも ゆきはふりつつ
左注 三月十六日
左注訓 三月の十六日、大伴宿禰家持。
校異 なし
事項 天平21年3月16日 作者:大伴家持 年紀 地名 富山 季節 贈答 叙景 大伴池主 書簡 大伴池主
訓異 かすみたなびき;かすみたなひき, しかすがに;しかすかに,
   
  18/4080
題詞 姑大伴氏坂上郎女来贈越中守大伴宿祢家持歌二首
題訓 姑をば大伴氏坂上郎女が、越中守大伴宿禰家持に来贈おくれる歌二首
原文 都祢比等能 故布登伊敷欲利波 安麻里尓弖 和礼波之奴倍久 奈里尓多良受也
訓読 常人の恋ふといふよりはあまりにて我れは死ぬべくなりにたらずや
仮名 つねひとの こふといふよりは あまりにて われはしぬべく なりにたらずや
左注 なし
校異 なし
事項 天平21年 作者:坂上郎女 年紀 贈答 大伴家持 恋情 高岡 富山
訓異 われはしぬべく;われはしぬへく, なりにたらずや;なりにたらすや,
   
  18/4081
題詞 (姑大伴氏坂上郎女来贈越中守大伴宿祢家持歌二首)
原文 可多於毛比遠 宇万尓布都麻尓 於保世母天 故事部尓夜良波 比登加多波牟可母
訓読 片思ひを馬にふつまに負ほせ持て越辺に遣らば人かたはむかも
仮名 かたおもひを うまにふつまに おほせもて こしへにやらば ひとかたはむかも
左注 なし
校異 なし
事項 天平21年 作者:坂上郎女 年紀 贈答 大伴家持 恋情 高岡 富山 地名
訓異 こしへにやらば;こしへにやらは,
   
  18/4082
題詞 越中守大伴宿祢家持報歌并所心三首
題訓 越中守大伴宿禰家持が報ふる歌二首
原文 安万射可流 比奈能<夜都>故尓 安米比度之 可久古非須良波 伊家流思留事安里
訓読 天離る鄙の奴に天人しかく恋すらば生ける験あり
仮名 あまざかる ひなのやつこに あめひとし かくこひすらば いけるしるしあり
左注 (右四日附使贈上京師)
校異 都夜→夜都 [万葉集略解]
事項 天平21年4(月4)日 作者:大伴家持 年紀 贈答 坂上郎女 高岡 富山 恋情
訓異 あまざかる;あまさかる, ひなのやつこに;ひなのみやこに, かくこひすらば;かくこひすらは,
   
  18/4083
題詞 (越中守大伴宿祢家持報歌并所心三首)
原文 都祢<乃>孤悲 伊麻太夜麻奴尓 美夜古欲<里> 宇麻尓古非許婆 尓奈比安倍牟可母
訓読 常の恋いまだやまぬに都より馬に恋来ば担ひあへむかも
仮名 つねのこひ いまだやまぬに みやこより うまにこひこば になひあへむかも
左注 (右四日附使贈上京師)
校異 能→乃 [元][類] / 利→里 [元][類]
事項 天平21年4(月4)日 作者:大伴家持 年紀 贈答 坂上郎女 高岡 富山 恋情
訓異 いまだやまぬに;いまたやまぬに, うまにこひこば;うまにこひこは,
   
  18/4084
題詞 (越中守大伴宿祢家持報歌并所心三首)別所心一首
題訓 別ことに心おもひをのぶ一首ひとうた
原文 安可登吉尓 名能里奈久奈流 保登等藝須 伊夜米豆良之久 於毛保由流香母
訓読 暁に名告り鳴くなる霍公鳥いやめづらしく思ほゆるかも
仮名 あかときに なのりなくなる ほととぎす いやめづらしく おもほゆるかも
左注 右四日附使贈上京師
左注訓 右、四日よかのひ、使に附けて京師みやこに贈上おくる。
校異 なし
事項 天平21年4(月4)日 作者:大伴家持 年紀 動物 贈答 坂上郎女 序詞 恋情 高岡 富山
訓異 ほととぎす;ほとときす, いやめづらしく;いやめつらしく,
   
  18/4085
題詞 天平感寶元年五月五日饗東大寺之占墾地使僧平榮等 于時守大伴宿祢家持送酒僧歌一首
題訓 天平感宝てむひやうかむはう元年はじめのとし五月さつきの五日いつかのひ、東大寺ひむかしのおほてらの占墾地使はりところをしむるつかひの僧ほうし平榮等を饗あへする時、守大伴宿禰家持が、酒を僧に送れる歌一首
原文 夜伎多知乎 刀奈美能勢伎尓 安須欲里波 毛利敝夜里蘇倍 伎美乎<等登>米牟
訓読 焼太刀を砺波の関に明日よりは守部遣り添へ君を留めむ
仮名 やきたちを となみのせきに あすよりは もりへやりそへ きみをとどめむ
左注 なし
校異 歌 [西] 謌 / 登等→等登 [元][類]
事項 天平感宝1年5月5日 作者:大伴家持 年紀 枕詞 平栄 宴席 羈旅 出発 別離 餞別 高岡 富山 地名 砺波
訓異 きみをとどめむ;きみをととめむ,
   
  18/4086
題詞 同月九日諸僚會少目秦伊美吉石竹之舘飲宴 於時主人造白合花縵三枚疊置豆器捧贈賓客 各賦此縵作三首
題訓 同おやじ月の九日ここのかのひ、諸僚つかさづかさ少目すなきふみひと秦伊美吉石竹はたのいみきいはたけの館に会つどひて飲宴うたげす。その時主人あろじ、百合の花縵はなかづら三枚みつを造りて、豆器あぶらつきに畳ね置き、賓客まらひとに捧贈ささぐ。各おのもおのも此その縵をよめる歌三首
原文 安夫良火<乃> 比可里尓見由流 和我可豆良 佐由利能波奈能 恵麻波之伎香母
訓読 油火の光りに見ゆる吾がかづらさ百合の花の笑まはしきかも
仮名 あぶらひの ひかりにみゆる わがかづら さゆりのはなの ゑまはしきかも
左注 右一首守大伴宿祢家持
左注訓 右の一首は、守大伴宿禰家持。
校異 能→乃 [元][類]
事項 天平感宝1年5月9日 作者:大伴家持 年紀 植物 宴席 秦石竹 主人讃美 寿歌 高岡 富山
訓異 あぶらひの;あふらひの, わがかづら;わかかつら,
   
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題詞 (同月九日諸僚會少目秦伊美吉石竹之舘飲宴 於時主人造白合花縵三枚疊置豆器捧贈賓客 各賦此縵作三首)
原文 等毛之火能 比可里尓見由流 <左>由理婆奈 由利毛安波牟等 於母比曽米弖伎
訓読 灯火の光りに見ゆるさ百合花ゆりも逢はむと思ひそめてき
仮名 ともしびの ひかりにみゆる さゆりばな ゆりもあはむと おもひそめてき
左注 右一首介内蔵伊美吉縄麻呂
左注訓 右の一首は、介すけ内藏伊美吉繩麿うちのくらのいみきなはまろ。
校異 佐→左 [元][類]
事項 天平感宝1年5月9日 作者:内蔵縄麻呂 年紀 植物 宴席 秦石竹 序詞 主人讃美 恋情 高岡 富山
訓異 ともしびの;ともしひの, さゆりばな;さゆりはな,
   
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題詞 (同月九日諸僚會少目秦伊美吉石竹之舘飲宴 於時主人造白合花縵三枚疊置豆器捧贈賓客 各賦此縵作三首)
原文 左由理<婆>奈 由<里>毛安波牟等 於毛倍許曽 伊<末>能麻左可母 宇流波之美須礼
訓読 さ百合花ゆりも逢はむと思へこそ今のまさかもうるはしみすれ
仮名 さゆりばな ゆりもあはむと おもへこそ いまのまさかも うるはしみすれ
左注 右一首大伴宿祢家持[和]
左注訓 右の一首は、大伴家持 和。
校異 波→婆 [元] / 利→里 [元][類] / 麻→末 [元][類][紀][細]
事項 天平感宝1年5月9日 作者:大伴家持 年紀 宴席 植物 枕詞 主人讃美 高岡 富山 秦石竹
訓異 さゆりばな;さゆりはな,
   
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題詞 獨居幄裏遥聞霍公鳥喧作歌一首[并短歌]
題訓 短歌みじかうた [ママ]
独り幄あげはりの裏うちに居て、霍公鳥の喧ねを聞きてよめる歌一首、また短歌みじかうた
原文 高御座 安麻<乃>日継登 須賣呂伎能 可<未>能美許登能 伎己之乎須 久尓能麻保良尓 山乎之毛 佐波尓於保美等 百鳥能 来居弖奈久許恵 春佐礼婆 伎吉<乃> 可奈之母 伊豆礼乎可 和枳弖之努波<无> 宇能花乃 佐久月多弖婆 米都良之久 鳴保等登藝須 安夜女具佐 珠奴久麻泥尓 比流久良之 欲和多之伎氣騰 伎久其等尓 許己呂都呉枳弖 宇知奈氣伎 安波礼能登里等 伊波奴登枳奈思
訓読 高御座 天の日継と すめろきの 神の命の 聞こしをす 国のまほらに 山をしも さはに多みと 百鳥の 来居て鳴く声 春されば 聞きのかなしも いづれをか 別きて偲はむ 卯の花の 咲く月立てば めづらしく 鳴く霍公鳥 あやめぐさ 玉貫くまでに 昼暮らし 夜わたし聞けど 聞くごとに 心つごきて うち嘆き あはれの鳥と 言はぬ時なし
仮名 たかみくら あまのひつぎと すめろきの かみのみことの きこしをす くにのまほらに やまをしも さはにおほみと ももとりの きゐてなくこゑ はるされば ききのかなしも いづれをか わきてしのはむ うのはなの さくつきたてば めづらしく なくほととぎす あやめぐさ たまぬくまでに ひるくらし よわたしきけど きくごとに こころつごきて うちなげき あはれのとりと いはぬときなし
左注 (右四首十日大伴宿祢家持作之)
校異 歌 [西] 謌 / 能→乃 [元][類] / 美→未 [類][紀][細] / 能→乃 [元][類] / 無→无 [元][紀][細]
事項 天平感宝1年5月10日 作者:大伴家持 年紀 枕詞 動物 高岡 富山 植物 恋情 独詠
訓異 あまのひつぎと;あまのひつきと, はるされば;はるされは, いづれをか;いつれをか, さくつきたてば;さくつきたては, めづらしく;めつらしく, なくほととぎす;なくほとときす, あやめぐさ;あやめくさ, たまぬくまでに;たまぬくまてに, よわたしきけど;よわたしきけと, きくごとに;きくことに, こころつごきて;こころつこきし, うちなげき;うちなけき,
   
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題詞 (獨居幄裏遥聞霍公鳥喧作歌一首[并短歌])反歌
題訓 反し歌
原文 由久敝奈久 安里和多流登毛 保等登藝須 奈枳之和多良婆 可久夜思努波牟
訓読 ゆくへなくありわたるとも霍公鳥鳴きし渡らばかくや偲はむ
仮名 ゆくへなく ありわたるとも ほととぎす なきしわたらば かくやしのはむ
左注 (右四首十日大伴宿祢家持作之)
校異 なし
事項 天平感宝1年5月10日 作者:大伴家持 年紀 動物 高岡 富山 植物 恋情 独詠 恋情
訓異 ほととぎす;ほとときす, なきしわたらば;なきしわたらは,
   
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題詞 ((獨居幄裏遥聞霍公鳥喧作歌一首[并短歌])反歌)
原文 宇能花能 <登聞>尓之奈氣婆 保等登藝須 伊夜米豆良之毛 名能里奈久奈倍
訓読 卯の花のともにし鳴けば霍公鳥いやめづらしも名告り鳴くなへ
仮名 うのはなの ともにしなけば ほととぎす いやめづらしも なのりなくなへ
左注 (右四首十日大伴宿祢家持作之)
校異 開→登聞 [元]
事項 天平感宝1年5月10日 作者:大伴家持 年紀 植物 動物 季節 独詠 高岡 富山 恋情
訓異 ともにしなけば;さくにしなけは, ほととぎす;ほとときす, いやめづらしも;いやめつらしも,
   
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題詞 ((獨居幄裏遥聞霍公鳥喧作歌一首[并短歌])反歌)
原文 保<登等>藝須 伊登祢多家口波 橘<乃> <播>奈治流等吉尓 伎奈吉登余牟流
訓読 霍公鳥いとねたけくは橘の花散る時に来鳴き響むる
仮名 ほととぎす いとねたけくは たちばなの はなぢるときに きなきとよむる
左注 右四首十日大伴宿祢家持作之
左注訓 右の四首は、十日、大伴宿禰家持がよめる。
校異 等登→登等 [元][類][紀][細] / 能→乃 [元][類] / 幡→播 [元][類][紀][細]
事項 天平感宝1年5月10日 作者:大伴家持 年紀 動物 植物 季節 怨恨 独詠 高岡 富山
訓異 ほととぎす;ほとときす, たちばなの;たちはなの, はなぢるときに;はなちるときに,
   
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題詞 行<英>遠浦之日作歌一首
題訓 英遠浦あをのうらに行くとき、よめる歌一首
原文 安乎能宇良尓 餘須流之良奈美 伊夜末之尓 多知之伎与世久 安由乎伊多美可聞
訓読 阿尾の浦に寄する白波いや増しに立ちしき寄せ来東風をいたみかも
仮名 あをのうらに よするしらなみ いやましに たちしきよせく あゆをいたみかも
左注 右一首大伴宿祢家持作之
左注訓 右の一首は、大伴宿禰家持がよめる。
校異 芙→英 [紀][細]
事項 天平感宝1年 作者:大伴家持 年紀 地名 氷見 高岡 叙景
訓異  
   
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題詞 賀陸奥國出金詔書歌一首[并短歌]
題訓 陸奥国みちのくのくにより金くがねを出だせる詔書みことのりを賀ことほく歌一首、また短歌
原文 葦原能 美豆保國乎 安麻久太利 之良志賣之家流 須賣呂伎能 神乃美許等能 御代可佐祢 天乃日<嗣>等 之良志久流 伎美能御代々々 之伎麻世流 四方國尓波 山河乎 比呂美安都美等 多弖麻都流 御調寶波 可蘇倍衣受 都久之毛可祢都 之加礼騰母 吾大王<乃> 毛呂比登乎 伊射奈比多麻比 善事乎 波自米多麻比弖 久我祢可毛 <多>之氣久安良牟登 於母保之弖 之多奈夜麻須尓 鶏鳴 東國<乃> 美知能久乃 小田在山尓 金有等 麻宇之多麻敝礼 御心乎 安吉良米多麻比 天地乃 神安比宇豆奈比 皇御祖乃 御霊多須氣弖 遠代尓 可々里之許登乎 朕御世尓 安良波之弖安礼婆 御食國波 左可延牟物能等 可牟奈我良 於毛保之賣之弖 毛能乃布能 八十伴雄乎 麻都呂倍乃 牟氣乃麻尓々々 老人毛 女童兒毛 之我願 心太良比尓 撫賜 治賜婆 許己乎之母 安夜尓多敷刀美 宇礼之家久 伊余与於母比弖 大伴<乃> 遠都神祖乃 其名乎婆 大来目主<等> 於比母知弖 都加倍之官 海行者 美都久屍 山行者 草牟須屍 大皇乃 敝尓許曽死米 可敝里見波 勢自等許等太弖 大夫乃 伎欲吉彼名乎 伊尓之敝欲 伊麻乃乎追通尓 奈我佐敝流 於夜<乃>子等毛曽 大伴等 佐伯乃氏者 人祖乃 立流辞立 人子者 祖名不絶 大君尓 麻都呂布物能等 伊比都雅流 許等能都可左曽 梓弓 手尓等里母知弖 劔大刀 許之尓等里波伎 安佐麻毛利 由布能麻毛利<尓> 大王<乃> 三門乃麻毛利 和礼乎於吉<弖> 比等波安良自等 伊夜多氐 於毛比之麻左流 大皇乃 御言能左吉乃 [一云 乎] 聞者貴美 [一云 貴久之安礼婆]
訓読 葦原の 瑞穂の国を 天下り 知らしめしける すめろきの 神の命の 御代重ね 天の日継と 知らし来る 君の御代御代 敷きませる 四方の国には 山川を 広み厚みと 奉る 御調宝は 数へえず 尽くしもかねつ しかれども 我が大君の 諸人を 誘ひたまひ よきことを 始めたまひて 金かも たしけくあらむと 思ほして 下悩ますに 鶏が鳴く 東の国の 陸奥の 小田なる山に 黄金ありと 申したまへれ 御心を 明らめたまひ 天地の 神相うづなひ すめろきの 御霊助けて 遠き代に かかりしことを 我が御代に 顕はしてあれば 食す国は 栄えむものと 神ながら 思ほしめして もののふの 八十伴の緒を まつろへの 向けのまにまに 老人も 女童も しが願ふ 心足らひに 撫でたまひ 治めたまへば ここをしも あやに貴み 嬉しけく いよよ思ひて 大伴の 遠つ神祖の その名をば 大久米主と 負ひ持ちて 仕へし官 海行かば 水漬く屍 山行かば 草生す屍 大君の 辺にこそ死なめ かへり見は せじと言立て 大夫の 清きその名を いにしへよ 今のをつづに 流さへる 祖の子どもぞ 大伴と 佐伯の氏は 人の祖の 立つる言立て 人の子は 祖の名絶たず 大君に まつろふものと 言ひ継げる 言の官ぞ 梓弓 手に取り持ちて 剣大刀 腰に取り佩き 朝守り 夕の守りに 大君の 御門の守り 我れをおきて 人はあらじと いや立て 思ひし増さる 大君の 御言のさきの [一云 を] 聞けば貴み [一云 貴くしあれば]
仮名 あしはらの みづほのくにを あまくだり しらしめしける すめろきの かみのみことの みよかさね あまのひつぎと しらしくる きみのみよみよ しきませる よものくにには やまかはを ひろみあつみと たてまつる みつきたからは かぞへえず つくしもかねつ しかれども わがおほきみの もろひとを いざなひたまひ よきことを はじめたまひて くがねかも たしけくあらむと おもほして したなやますに とりがなく あづまのくにの みちのくの をだなるやまに くがねありと まうしたまへれ みこころを あきらめたまひ あめつちの かみあひうづなひ すめろきの みたまたすけて とほきよに かかりしことを わがみよに あらはしてあれば をすくには さかえむものと かむながら おもほしめして もののふの やそとものをを まつろへの むけのまにまに おいひとも をみなわらはも しがねがふ こころだらひに なでたまひ をさめたまへば ここをしも あやにたふとみ うれしけく いよよおもひて おほともの とほつかむおやの そのなをば おほくめぬしと おひもちて つかへしつかさ うみゆかば みづくかばね やまゆかば くさむすかばね おほきみの へにこそしなめ かへりみは せじとことだて ますらをの きよきそのなを いにしへよ いまのをつづに ながさへる おやのこどもぞ おほともと さへきのうぢは ひとのおやの たつることだて ひとのこは おやのなたたず おほきみに まつろふものと いひつげる ことのつかさぞ あづさゆみ てにとりもちて つるぎたち こしにとりはき あさまもり ゆふのまもりに おほきみの みかどのまもり われをおきて ひとはあらじと いやたて おもひしまさる おほきみの みことのさきの[を] きけばたふとみ [たふとくしあれば]
左注 (天平感寶元年五月十二日於越中國守舘大伴宿祢家持作之)
校異 飼→嗣 [細][矢][京] / 能→乃 [元][類] / 多能→多 [元] / 能→乃 [元][類] / 御食 [元] 食 / 能→乃 [元][類] / 登→等 [元][類] / 太 [元][類][細](塙) 大 / 能→乃 [元][類] / 余→尓 [類][細] / 能→乃 [元][類] / 弖且→弖 [大系]
事項 天平感宝1年5月12日 作者:大伴家持 年紀 寿歌 枕詞 賀歌 高岡 富山 大君讃美 大夫
訓異 みづほのくにを;みつほのくにを, あまくだり;あまくたり, あまのひつぎと;あまのひつきと, かぞへえず;かそへえす, しかれども;しかれとも, わがおほきみの;わかおほきみの, いざなひたまひ;いさなひたまひ, はじめたまひて;はしめたまひて, くがねかも;こかねかも, たしけくあらむと;たのしけくあらむと, とりがなく;とりかなく, あづまのくにの;あつまのくにの, をだなるやまに;をたなるやまに, くがねありと;こかねありと, かみあひうづなひ;かみあひうつなひ, わがみよに;わかみよに, あらはしてあれば;あらはしてあれは, をすくには;みけくには, かむながら;かむなから, むけのまにまに;むきのまにまに, をみなわらはも;めぬわらはこも, しがねがふ;しかちかひ, こころだらひに;こころたらひに, なでたまひ;なてたまひ, をさめたまへば;おさめたまへは, とほつかむおやの;とをつかみおやの, そのなをば;そのなをは, おほくめぬしと;おほくめもりと, うみゆかば;うみゆくは, みづくかばね;みつくかはね, やまゆかば;やまゆくは, くさむすかばね;くさむすかはね, せじとことだて;せしとことたて, いにしへよ;いにしへゆ, いまのをつづに;いまのをつつに, ながさへる;なかさへる, おやのこどもぞ;おやのこともそ, さへきのうぢは;さへきのうちは, たつることだて;たつることたて, おやのなたたず;おやのなたたす, いひつげる;いひつける, ことのつかさぞ;ことのつかさそ, あづさゆみ;あつさゆみ, つるぎたち;つるきたち, みかどのまもり;みかとのまもり, ひとはあらじと;ひとはあらしと, きけばたふとみ;きけはたふとみ, [たふとくしあれば];たふとくしあれは,
   
  18/4095
題詞 (賀陸奥國出金詔書歌一首[并短歌])反歌三首
題訓 反し歌三首
原文 大夫能 許己呂於毛保由 於保伎美能 美許登<乃>佐吉乎 [一云 能] 聞者多布刀美 [一云 貴久之安礼婆]
訓読 大夫の心思ほゆ大君の御言の幸を [一云 の] 聞けば貴み [一云 貴くしあれば]
仮名 ますらをの こころおもほゆ おほきみの みことのさきを[の] きけばたふとみ [たふとくしあれば]
左注 (天平感寶元年五月十二日於越中國守舘大伴宿祢家持作之)
校異 能→乃 [元][類]
事項 天平感宝1年5月12日 作者:大伴家持 年紀 大君讃美 寿歌 賀歌 高岡 富山 大夫
訓異 きけばたふとみ;きけはたふとみ, [たふとくしあれば]
   
   
  18/4096
題詞 ((賀陸奥國出金詔書歌一首[并短歌])反歌三首)
原文 大伴<乃> 等保追可牟於夜能 於久都奇波 之流久之米多弖 比等能之流倍久
訓読 大伴の遠つ神祖の奥城はしるく標立て人の知るべく
仮名 おほともの とほつかむおやの おくつきは しるくしめたて ひとのしるべく
左注 (天平感寶元年五月十二日於越中國守舘大伴宿祢家持作之)
校異 能→乃 [元][類][古]
事項 天平感宝1年5月12日 作者:大伴家持 年紀 氏族意識 寿歌 賀歌 高岡 富山
訓異 ひとのしるべく;ひとのしるへく,
   
  18/4097
題詞 ((賀陸奥國出金詔書歌一首[并短歌])反歌三首)
原文 須賣呂伎能 御代佐可延牟等 阿頭麻奈流 美知<乃>久夜麻尓 金花佐久
訓読 天皇の御代栄えむと東なる陸奥山に黄金花咲く
仮名 すめろきの みよさかえむと あづまなる みちのくやまに くがねはなさく
左注 天平感寶元年五月十二日於越中國守舘大伴宿祢家持作之
左注訓 天平感宝元年五月の十二日、越中国の守の館にて、 大伴宿禰家持がよめる。
校異 能→乃 [元][類]
事項 天平感宝1年5月12日 作者:大伴家持 年紀 寿歌 賀歌 高岡 富山 大君讃美
訓異 あづまなる;あつまなる, くがねはなさく;こかねはなさく,
   
  18/4098
題詞 為幸行芳野離宮之時儲作歌一首[并短歌]
題訓 芳野の離宮とつみやに幸行いでまさむ時の為、儲あらかじめよめる歌一首、また短歌
原文 多可美久良 安麻<乃>日嗣等 天下 志良之賣師家類 須賣呂伎乃 可未能美許等能 可之古久母 波自米多麻比弖 多不刀久母 左太米多麻敝流 美与之努能 許乃於保美夜尓 安里我欲比 賣之多麻布良之 毛能乃敷能 夜蘇等母能乎毛 於能我於弊流 於能我名負<弖> 大王乃 麻氣能麻<尓>々々 此河能 多由流許等奈久 此山能 伊夜都藝都藝尓 可久之許曽 都可倍麻都良米 伊夜等保奈我尓
訓読 高御座 天の日継と 天の下 知らしめしける 天皇の 神の命の 畏くも 始めたまひて 貴くも 定めたまへる み吉野の この大宮に あり通ひ 見したまふらし もののふの 八十伴の男も おのが負へる おのが名負ひて 大君の 任けのまにまに この川の 絶ゆることなく この山の いや継ぎ継ぎに かくしこそ 仕へまつらめ いや遠長に
仮名 たかみくら あまのひつぎと あめのした しらしめしける すめろきの かみのみことの かしこくも はじめたまひて たふとくも さだめたまへる みよしのの このおほみやに ありがよひ めしたまふらし もののふの やそとものをも おのがおへる おのがなおひて おほきみの まけのまにまに このかはの たゆることなく このやまの いやつぎつぎに かくしこそ つかへまつらめ いやとほながに
左注 なし
校異 歌 [西] 謌 / 能→乃 [元][類] / 々々→弖 [万葉集略解] / 久→尓 [万葉考]
事項 天平感宝1年 作者:大伴家持 年紀 地名 吉野 奈良 高岡 富山 儲作 宮廷讃美 大君讃美 寿歌
訓異 あまのひつぎと;あまのひつきと, はじめたまひて;はしめたまひて, さだめたまへる;さためたまへる, ありがよひ;ありかよひ, おのがおへる;おのかおへる, おのがなおひて;おのかなになに, まけのまにまに;まけのまくまく, いやつぎつぎに;いやつきつきに, いやとほながに;いやとほなかに,
   
  18/4099
題詞 (為幸行芳野離宮之時儲作歌一首[并短歌])反歌
題訓 反し歌
原文 伊尓之敝乎 於母保須良之母 和期於保伎美 余思努乃美夜乎 安里我欲比賣須
訓読 いにしへを思ほすらしも我ご大君吉野の宮をあり通ひ見す
仮名 いにしへを おもほすらしも わごおほきみ よしののみやを ありがよひめす
左注 なし
校異 なし
事項 天平感宝1年 作者:大伴家持 年紀 地名 吉野 奈良 高岡 富山 儲作 宮廷讃美 大君讃美 寿歌
訓異 わごおほきみ;わかおほきみ, ありがよひめす;ありかよひめす,
   
  18/4100
題詞 ((為幸行芳野離宮之時儲作歌一首[并短歌])反歌)
原文 物能乃布能 夜蘇氏人毛 与之努河波 多由流許等奈久 都可倍追通見牟
訓読 もののふの八十氏人も吉野川絶ゆることなく仕へつつ見む
仮名 もののふの やそうぢひとも よしのがは たゆることなく つかへつつみむ
左注 なし
校異 なし
事項 天平感宝1年 作者:大伴家持 年紀 地名 吉野 奈良 高岡 富山 儲作 宮廷讃美 大君讃美 寿歌
訓異 やそうぢひとも;やそうちひとも, よしのがは;よしのかは,
   
  18/4101
題詞 為贈京家願真珠歌一首[并短歌]
題訓 京みやこの家に贈らむが為、真珠しらたまを願ほりする歌一首、また短歌
原文 珠洲乃安麻能 於伎都美可未尓 伊和多利弖 可都伎等流登伊布 安波妣多麻 伊保知毛我母 波之吉餘之 都麻乃美許<登>能 許呂毛泥乃 和可礼之等吉欲 奴婆玉乃 夜床加多<左>里 安佐祢我美 可伎母氣頭良受 伊泥氐許之 月日余美都追 奈氣久良牟 心奈具佐<尓> 保登等藝須 伎奈久五月能 安夜女具佐 波奈多知<婆>奈尓 奴吉麻自倍 可頭良尓世餘等 都追美氐夜良牟
訓読 珠洲の海人の 沖つ御神に い渡りて 潜き取るといふ 鰒玉 五百箇もがも はしきよし 妻の命の 衣手の 別れし時よ ぬばたまの 夜床片さり 朝寝髪 掻きも梳らず 出でて来し 月日数みつつ 嘆くらむ 心なぐさに 霍公鳥 来鳴く五月の あやめぐさ 花橘に 貫き交へ かづらにせよと 包みて遣らむ
仮名 すすのあまの おきつみかみに いわたりて かづきとるといふ あはびたま いほちもがも はしきよし つまのみことの ころもでの わかれしときよ ぬばたまの よとこかたさり あさねがみ かきもけづらず いでてこし つきひよみつつ なげくらむ こころなぐさに ほととぎす きなくさつきの あやめぐさ はなたちばなに ぬきまじへ かづらにせよと つつみてやらむ
左注 (右五月十四日大伴宿祢家持依興作)
校異 歌 [西] 謌 / 等→登 [元][紀][細] / 古→左 [代匠記初稿本] / 余→尓 [代匠記初稿本] / 波→婆 [元][類]
事項 天平感宝1年5月14日 作者:大伴家持 年紀 贈答 地名 能登 富山 枕詞 高岡
訓異 かづきとるといふ;かつきとるといふ, あはびたま;あはひたま, いほちもがも;いほちもかも, ころもでの;ころもての, わかれしときよ;わかれしときき, ぬばたまの;ぬはたまの, よとこかたさり;よとこかたこり, あさねがみ;あさねかみ, かきもけづらず;かきもけつらす, いでてこし;いててこし, なげくらむ;なけくらむ, こころなぐさに;こころなくさに, ほととぎす;ほとときす, あやめぐさ;あやめくさ, はなたちばなに;はなたちはなに, ぬきまじへ;むきましへ, かづらにせよと;かつらにせよと,
   
  18/4102
題詞 (為贈京家願真珠歌一首[并短歌])
題訓 反し歌四首
原文 白玉乎 都々美氐夜良<婆> 安夜女具佐 波奈多知婆奈尓 安倍母奴久我祢
訓読 白玉を包みて遣らばあやめぐさ花橘にあへも貫くがね
仮名 しらたまを つつみてやらば あやめぐさ はなたちばなに あへもぬくがね
左注 (右五月十四日大伴宿祢家持依興作)
校異 波→婆 [元][類]
事項 天平感宝1年5月14日 作者:大伴家持 年紀 贈答 富山 植物 高岡
訓異 つつみてやらば;つつみてやらは, あやめぐさ;あやめくさ, はなたちばなに;はなたちはなに, あへもぬくがね;あへもぬくかね,
   
  18/4103
題詞 (為贈京家願真珠歌一首[并短歌])
原文 於伎都之麻 伊由伎和多里弖 可豆<久>知布 安波妣多麻母我 都々美弖夜良牟
訓読 沖つ島い行き渡りて潜くちふ鰒玉もが包みて遣らむ
仮名 おきつしま いゆきわたりて かづくちふ あはびたまもが つつみてやらむ
左注 (右五月十四日大伴宿祢家持依興作)
校異 具→久 [元][類]
事項 天平感宝1年5月14日 作者:大伴家持 年紀 贈答 富山 高岡
訓異 かづくちふ;かつくちふ, あはびたまもが;あはひたまもか,
   
  18/4104
題詞 (為贈京家願真珠歌一首[并短歌])
原文 和伎母故我 許己呂奈具左尓 夜良無多米 於伎都之麻奈流 之良多麻母我毛
訓読 我妹子が心なぐさに遣らむため沖つ島なる白玉もがも
仮名 わぎもこが こころなぐさに やらむため おきつしまなる しらたまもがも
左注 (右五月十四日大伴宿祢家持依興作)
校異 具 [元][類][藍][古] 久 / 左 [元][類][藍][古](塙) 佐
事項 天平感宝1年5月14日 作者:大伴家持 年紀 贈答 高岡 富山 恋愛
訓異 わぎもこが;わきもこか, こころなぐさに;こころなくさに, しらたまもがも;しらたまもかも,
   
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題詞 (為贈京家願真珠歌一首[并短歌])
原文 思良多麻能 伊保都追度比乎 手尓牟須妣 於許世牟安麻波 牟賀思久母安流香 [一云 我家牟伎波母]
訓読 白玉の五百つ集ひを手にむすびおこせむ海人はむがしくもあるか [一云 我家牟伎波母]
仮名 しらたまの いほつつどひを てにむすび おこせむあまは むがしくもあるか [*******]
左注 右五月十四日大伴宿祢家持依興作
左注訓 右、五月の十四日、大伴宿禰家持が興ことに依つけてよめる。
校異 なし
事項 天平感宝1年5月14日 作者:大伴家持 年紀 贈答 高岡 富山 異伝 推敲 難訓
訓異 いほつつどひを;いほつつとひを, てにむすび;てにむすひ, むがしくもあるか;むかしくもあるか, [*******]
   
   
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題詞 教喩史生尾張少咋歌一首并短歌 / 七出例云 / 但犯一條即合出之 無七出輙<弃>者徒一年半 / 三不去云 / 雖犯七出不合<弃>之 違者杖一百 唯犯奸悪疾得<弃>之 / 兩妻例云 / 有妻更娶者徒一年 女家杖一百離之 / 詔書云 / 愍賜義夫節婦 / 謹案 先件數條 建法之基 化道之源也 然則義夫之道 情存無別 / 一家同財 豈有忘舊愛新之志哉 所以綴作數行之歌令悔<弃>舊之惑 其詞云
題訓 史生ふみひと尾張少咋をはりのをくひを教喩さとす歌一首、また短歌
七出の例さだめに云はく、
但一条を犯せらば、即ち出さるべし。七出無くて輙すなはち棄さらば、徒みつかふつみ一年半ひととせまりむつき。
三不去の例さだめに云はく、
七出を犯すとも、棄さるべからず。違へらば、杖一百。唯奸悪疾を犯せれば棄され。
両妻の例に云はく、
妻有りて更に娶らば徒一年。女家は杖一百にして離はなて。
詔書に云はく、
義夫節婦を愍み賜ふ。
先かみの件の数条をどをぢを謹み案かむがふるに、建法のりの基、化道みちの源はじめなり。然れば則ち義夫の道、情存して別無く、一家財を同じくす。豈旧きを忘れ新しきを愛うつくしむる志あるべしや。所以かれ数行の歌を綴作よみ、旧きを棄さる惑を悔いしむ。その詞に曰く、
原文 於保奈牟知 須久奈比古奈野 神代欲里 伊比都藝家良<久> 父母乎 見波多布刀久 妻子見波 可奈之久米具之 宇都世美能 余乃許等和利止 可久佐末尓 伊比家流物能乎 世人能 多都流許等太弖 知左能花 佐家流沙加利尓 波之吉余之 曽能都末能古等 安沙余比尓 恵美々恵末須毛 宇知奈氣支 可多里家末久波 等己之部尓 可久之母安良米也 天地能 可未許等余勢天 春花能 佐可里裳安良<牟等> <末>多之家牟 等吉能沙加利曽 波<奈礼>居弖 奈介可須移母我 何時可毛 都可比能許牟等 末多須良<无> 心左夫之苦 南吹 雪消益而 射水河 流水沫能 余留弊奈美 左夫流其兒尓 比毛能緒能 移都我利安比弖 尓保騰里能 布多理雙坐 那呉能宇美能 於支乎布可米天 左度波世流 支美我許己呂能 須敝母須敝奈佐 [言佐夫流者遊行女婦之字也]
訓読 大汝 少彦名の 神代より 言ひ継ぎけらく 父母を 見れば貴く 妻子見れば かなしくめぐし うつせみの 世のことわりと かくさまに 言ひけるものを 世の人の 立つる言立て ちさの花 咲ける盛りに はしきよし その妻の子と 朝夕に 笑みみ笑まずも うち嘆き 語りけまくは とこしへに かくしもあらめや 天地の 神言寄せて 春花の 盛りもあらむと 待たしけむ 時の盛りぞ 離れ居て 嘆かす妹が いつしかも 使の来むと 待たすらむ 心寂しく 南風吹き 雪消溢りて 射水川 流る水沫の 寄る辺なみ 左夫流その子に 紐の緒の いつがり合ひて にほ鳥の ふたり並び居 奈呉の海の 奥を深めて さどはせる 君が心の すべもすべなさ [言佐夫流者遊行女婦之字也]
仮名 おほなむち すくなびこなの かむよより いひつぎけらく ちちははを みればたふとく めこみれば かなしくめぐし うつせみの よのことわりと かくさまに いひけるものを よのひとの たつることだて ちさのはな さけるさかりに はしきよし そのつまのこと あさよひに ゑみみゑまずも うちなげき かたりけまくは とこしへに かくしもあらめや あめつちの かみことよせて はるはなの さかりもあらむと またしけむ ときのさかりぞ はなれゐて なげかすいもが いつしかも つかひのこむと またすらむ こころさぶしく みなみふき ゆきげはふりて いみづかは ながるみなわの よるへなみ さぶるそのこに ひものをの いつがりあひて にほどりの ふたりならびゐ なごのうみの おきをふかめて さどはせる きみがこころの すべもすべなさ
左注 (右五月十五日守大伴宿祢家持作之)
校異 奇→弃 [元][紀][細] / 奇→弃 [元][紀][細] / 奇→弃 [元][紀][細] / 之→久 [万葉集略解] / <>→牟等 [代匠記精撰本] / <>→末 [代匠記精撰本] / <>→奈礼 [代匠記精撰本] / 無→无 [元][紀][細]
事項 天平感宝1年5月15日 作者:大伴家持 年紀 教喩 律令 高岡 富山 尾張少咋 儒教 地名 木津
訓異 すくなびこなの;すくなひこなの, かむよより;かみよより, いひつぎけらく;いひつきけらし, みればたふとく;みれはたふとく, めこみれば;めこみれは, かなしくめぐし;かなしくめくし, たつることだて;たつることたて, そのつまのこと;そのつまのこら, ゑみみゑまずも;ゑみみゑますも, うちなげき;うちなけき, さかりもあらむと;さかりもあらたしけむ, またしけむ, ときのさかりぞ;ときのさかりそ, はなれゐて;なみをりて, なげかすいもが;なけかすいもか, こころさぶしく;こころさふしく, みなみふき;みなみかせ, ゆきげはふりて;ゆききえまして, いみづかは;いみつかは, ながるみなわの;なかるみなわの, さぶるそのこに;さふるそのこに, いつがりあひて;いつかりあひて, にほどりの;にほとりの, ふたりならびゐ;ふたりならひゐ, なごのうみの;なこのうみの, さどはせる;さとはせる, きみがこころの;きみかこころの, すべもすべなさ;すへもすへなさ,
   
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題詞 (教喩史生尾張少咋歌一首并短歌 / 七出例云 / 但犯一條即合出之 無七出輙<弃>者徒一年半 / 三不去云 / 雖犯七出不合<弃>之 違者杖一百 唯犯奸悪疾得<弃>之 / 兩妻例云 / 有妻更娶者徒一年 女家杖一百離之 / 詔書云 / 愍賜義夫節婦 / 謹案 先件數條 建法之基 化道之源也 然則義夫之道 情存無別 / 一家同財 豈有忘舊愛新之志哉 所以綴作數行之歌令悔<弃>舊之惑 其詞云)反歌三首
原文 安乎尓与之 奈良尓安流伊毛我 多可々々尓 麻都良牟許己呂 之可尓波安良司可
訓読 あをによし奈良にある妹が高々に待つらむ心しかにはあらじか
仮名 あをによし ならにあるいもが たかたかに まつらむこころ しかにはあらじか
左注 (右五月十五日守大伴宿祢家持作之)
校異 なし
事項 天平感宝1年5月15日 作者:大伴家持 年紀 枕詞 教喩 律令 高岡 富山 尾張少咋 儒教 地名 奈良
訓異 ならにあるいもが;ならにあるいもか, しかにはあらじか;しかにはあらしか,
   
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題詞 ((教喩史生尾張少咋歌一首并短歌 / 七出例云 / 但犯一條即合出之 無七出輙<弃>者徒一年半 / 三不去云 / 雖犯七出不合<弃>之 違者杖一百 唯犯奸悪疾得<弃>之 / 兩妻例云 / 有妻更娶者徒一年 女家杖一百離之 / 詔書云 / 愍賜義夫節婦 / 謹案 先件數條 建法之基 化道之源也 然則義夫之道 情存無別 / 一家同財 豈有忘舊愛新之志哉 所以綴作數行之歌令悔<弃>舊之惑 其詞云)反歌三首)
原文 左刀妣等能 見流目波豆可之 左夫流兒尓 佐度波須伎美我 美夜泥之理夫利
訓読 里人の見る目恥づかし左夫流子にさどはす君が宮出後姿
仮名 さとびとの みるめはづかし さぶるこに さどはすきみが みやでしりぶり
左注 (右五月十五日守大伴宿祢家持作之)
校異 なし
事項 天平感宝1年5月15日 作者:大伴家持 年紀 教喩 律令 高岡 富山 尾張少咋 儒教
訓異 さとびとの;さとひとの, みるめはづかし;みるめはつかし, さぶるこに;さふるこに, さどはすきみが;さとはすきみか, みやでしりぶり;みやてしりふり,
   
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題詞 ((教喩史生尾張少咋歌一首并短歌 / 七出例云 / 但犯一條即合出之 無七出輙<弃>者徒一年半 / 三不去云 / 雖犯七出不合<弃>之 違者杖一百 唯犯奸悪疾得<弃>之 / 兩妻例云 / 有妻更娶者徒一年 女家杖一百離之 / 詔書云 / 愍賜義夫節婦 / 謹案 先件數條 建法之基 化道之源也 然則義夫之道 情存無別 / 一家同財 豈有忘舊愛新之志哉 所以綴作數行之歌令悔<弃>舊之惑 其詞云)反歌三首)
原文 久礼奈為波 宇都呂布母能曽 都流波美能 奈礼尓之伎奴尓 奈保之可米夜母
訓読 紅はうつろふものぞ橡のなれにし衣になほしかめやも
仮名 くれなゐは うつろふものぞ つるはみの なれにしきぬに なほしかめやも
左注 右五月十五日守大伴宿祢家持作之
左注訓 右、五月の十五日、守大伴宿禰家持がよめる。
校異 なし
事項 天平感宝1年5月15日 作者:大伴家持 年紀 教喩 律令 高岡 富山 尾張少咋 儒教 植物
訓異 うつろふものぞ;うつろふものそ,
   
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題詞 先妻不待夫君之<喚>使自来時作歌一首
題訓 先もとの妻め、夫せの君の喚めす使を待たず、自ら来たる時よめる歌一首
原文 左夫流兒我 伊都伎之等<乃>尓 須受可氣奴 <波>由麻久太礼利 佐刀毛等騰呂尓
訓読 左夫流子が斎きし殿に鈴懸けぬ駅馬下れり里もとどろに
仮名 さぶるこが いつきしとのに すずかけぬ はゆまくだれり さともとどろに
左注 同月十七日大伴宿祢家持作之
左注訓 同じ月の十七日、大伴宿禰家持がよめる。
校異 愛→喚 [西(朱書訂正)][元][古][紀][温] / 能→乃 [元][類][古] / 婆→波 [古][紀][矢][京]
事項 天平感宝1年5月17日 作者:大伴家持 年紀 教喩 律令 高岡 富山 尾張少咋 儒教 興味
訓異 さぶるこが;さふるこか, いつきしとのに;いしきしとのに, すずかけぬ;すすかけぬ, はゆまくだれり;はいまくたれり, さともとどろに;さともととろに,
   
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題詞 橘歌一首[并短歌]
題訓 橘の歌一首、また短歌
原文 可氣麻久母 安夜尓加之古思 皇神祖<乃> 可見能大御世尓 田道間守 常世尓和多利 夜保許毛知 麻為泥許之登吉 時<及>能 香久乃菓子乎 可之古久母 能許之多麻敝礼 國毛勢尓 於非多知左加延 波流左礼婆 孫枝毛伊都追 保登等藝須 奈久五月尓波 波都波奈乎 延太尓多乎理弖 乎登女良尓 都刀尓母夜里美 之路多倍能 蘇泥尓毛古伎礼 香具<播>之美 於枳弖可良之美 安由流實波 多麻尓奴伎都追 手尓麻吉弖 見礼騰毛安加受 秋豆氣婆 之具礼<乃>雨零 阿之比奇能 夜麻能許奴礼波 久<礼奈為>尓 仁保比知礼止毛 多知波奈<乃> 成流其實者 比太照尓 伊夜見我保之久 美由伎布流 冬尓伊多礼婆 霜於氣騰母 其葉毛可礼受 常磐奈須 伊夜佐加波延尓 之可礼許曽 神乃御代欲理 与呂之奈倍 此橘乎 等伎自久能 可久能木實等 名附家良之母
訓読 かけまくも あやに畏し 天皇の 神の大御代に 田道間守 常世に渡り 八桙持ち 参ゐ出来し時 時じくの かくの木の実を 畏くも 残したまへれ 国も狭に 生ひ立ち栄え 春されば 孫枝萌いつつ 霍公鳥 鳴く五月には 初花を 枝に手折りて 娘子らに つとにも遣りみ 白栲の 袖にも扱入れ かぐはしみ 置きて枯らしみ あゆる実は 玉に貫きつつ 手に巻きて 見れども飽かず 秋づけば しぐれの雨降り あしひきの 山の木末は 紅に にほひ散れども 橘の なれるその実は ひた照りに いや見が欲しく み雪降る 冬に至れば 霜置けども その葉も枯れず 常磐なす いやさかはえに しかれこそ 神の御代より よろしなへ この橘を 時じくの かくの木の実と 名付けけらしも
仮名 かけまくも あやにかしこし すめろきの かみのおほみよに たぢまもり とこよにわたり やほこもち まゐでこしとき ときじくの かくのこのみを かしこくも のこしたまへれ くにもせに おひたちさかえ はるされば ひこえもいつつ ほととぎす なくさつきには はつはなを えだにたをりて をとめらに つとにもやりみ しろたへの そでにもこきれ かぐはしみ おきてからしみ あゆるみは たまにぬきつつ てにまきて みれどもあかず あきづけば しぐれのあめふり あしひきの やまのこぬれは くれなゐに にほひちれども たちばなの なれるそのみは ひたてりに いやみがほしく みゆきふる ふゆにいたれば しもおけども そのはもかれず ときはなす いやさかはえに しかれこそ かみのみよより よろしなへ このたちばなを ときじくの かくのこのみと なづけけらしも
左注 (閏五月廿三日大伴宿祢家持作之)
校異 歌 [西] 謌 / 能→乃 [元][類] / 支→及 [万葉考] / 幡→播 [元][類][紀] / 能→乃 [元][類] / <>→礼奈為 [西(朱書)][紀][細] / 能→乃 [元][類]
事項 天平感宝1年閏5月23日 作者:大伴家持 年紀 植物 賀歌 寿歌 橘諸兄 高岡 富山 枕詞
訓異 たぢまもり;たちまもり, まゐでこしとき;まゐてこしとき, ときじくの;ときしくの, はるされば;はるされは, ひこえもいつつ;まこえもいつつ, ほととぎす;ほとときす, えだにたをりて;えたにたをりて, そでにもこきれ;そてにもこきれ, かぐはしみ;かくはしみ, みれどもあかず;みれともあかす, あきづけば;あきつけは, しぐれのあめふり;しくれのあめふり, にほひちれども;にほひちれとも, たちばなの;たちはなの, いやみがほしく;いやみかほしく, ふゆにいたれば;ふゆにいたれは, しもおけども;しもおけとも, そのはもかれず;そのはもかれす, このたちばなを;このたちはなを, ときじくの;ときしくの, なづけけらしも;なつけけらしも,
   
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題詞 (橘歌一首[并短歌])反歌一首
題訓 反し歌一首
原文 橘波 花尓毛實尓母 美都礼騰母 移夜時自久尓 奈保之見我保之
訓読 橘は花にも実にも見つれどもいや時じくになほし見が欲し
仮名 たちばなは はなにもみにも みつれども いやときじくに なほしみがほし
左注 閏五月廿三日大伴宿祢家持作之
左注訓 閏五月のちのさつきの二十三日はつかまりみかのひ、大伴宿禰家持がよめる。
校異 なし
事項 天平感宝1年閏5月23日 作者:大伴家持 年紀 植物 賀歌 寿歌 橘諸兄 高岡 富山
訓異 たちばなは;たちはなは, みつれども;みつれとも, いやときじくに;いやときしくに, なほしみがほし;なほしみかほし,
   
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題詞 庭中花作歌一首[并短歌]
題訓 庭中にはの花を詠みてよめる歌一首、また短歌
原文 於保支見能 等保能美可等々 末支太末不 官乃末尓末 美由支布流 古之尓久多利来 安良多末能 等之<乃>五年 之吉多倍乃 手枕末可受 比毛等可須 末呂宿乎須礼波 移夫勢美等 情奈具左尓 奈泥之故乎 屋戸尓末<枳>於保之 夏能<々> 佐由利比伎宇恵天 開花乎 移<弖>見流其等尓 那泥之古我 曽乃波奈豆末尓 左由理花 由利母安波無等 奈具佐無流 許己呂之奈久波 安末射可流 比奈尓一日毛 安流部久母安礼也
訓読 大君の 遠の朝廷と 任きたまふ 官のまにま み雪降る 越に下り来 あらたまの 年の五年 敷栲の 手枕まかず 紐解かず 丸寝をすれば いぶせみと 心なぐさに なでしこを 宿に蒔き生ほし 夏の野の さ百合引き植ゑて 咲く花を 出で見るごとに なでしこが その花妻に さ百合花 ゆりも逢はむと 慰むる 心しなくは 天離る 鄙に一日も あるべくもあれや
仮名 おほきみの とほのみかどと まきたまふ つかさのまにま みゆきふる こしにくだりき あらたまの としのいつとせ しきたへの たまくらまかず ひもとかず まろねをすれば いぶせみと こころなぐさに なでしこを やどにまきおほし なつののの さゆりひきうゑて さくはなを いでみるごとに なでしこが そのはなづまに さゆりばな ゆりもあはむと なぐさむる こころしなくは あまざかる ひなにひとひも あるべくもあれや
左注 (同閏五月廿六日大伴宿祢家持作)
校異 短歌 [西] 短謌 / 能→乃 [元][類] / 波 [類] 婆 / <>→枳 [西(右書)][元][類][紀] / 々之→々 [元][類] / R→弖 [元][類]
事項 天平感宝1年閏5月26日 作者:大伴家持 年紀 植物 枕詞 慰撫 高岡 富山
訓異 とほのみかどと;とほのみかとと, こしにくだりき;こしにくたりき, たまくらまかず;たまくらまかす, ひもとかず;ひもとかす, まろねをすれば;まろねをすれは, いぶせみと;いふせみと, こころなぐさに;こころなくさに, なでしこを;なてしこを, やどにまきおほし;やとにまきおほし, いでみるごとに;いてみることに, なでしこが;なてしこか, そのはなづまに;そのはなつまに, さゆりばな;さゆりはな, なぐさむる;なくさむる, あまざかる;あまさかる, あるべくもあれや;あるへくもあれや,
   
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題詞 (庭中花作歌一首[并短歌])反歌二首
題訓 反し歌二首
原文 奈泥之故我 花見流其等尓 乎登女良我 恵末比能尓保比 於母保由流可母
訓読 なでしこが花見るごとに娘子らが笑まひのにほひ思ほゆるかも
仮名 なでしこが はなみるごとに をとめらが ゑまひのにほひ おもほゆるかも
左注 (同閏五月廿六日大伴宿祢家持作)
校異 なし
事項 天平感宝1年閏5月26日 作者:大伴家持 年紀 高岡 富山 植物 恋愛
訓異 なでしこが;なてしこか, はなみるごとに;はなみることに, をとめらが;をとめらか,
   
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題詞 ((庭中花作歌一首[并短歌])反歌二首)
原文 佐由利花 由利母相等 之多波布流 許己呂之奈久波 今日母倍米夜母
訓読 さ百合花ゆりも逢はむと下延ふる心しなくは今日も経めやも
仮名 さゆりばな ゆりもあはむと したはふる こころしなくは けふもへめやも
左注 同閏五月廿六日大伴宿祢家持作
左注訓 同じ〔閏五〕月の二十六日、大伴宿禰家持がよめる。
校異 なし
事項 天平感宝1年閏5月26日 作者:大伴家持 年紀 植物 慰撫 高岡 富山
訓異 さゆりばな;さゆりはな,
   
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題詞 國掾久米朝臣廣縄以天平廿年附朝集使入京 其事畢而天平感寶元年閏五月廿七日還到本任 仍長官之舘設詩酒宴樂飲 於時主人守大伴宿祢家持作歌一首[并短歌]
題訓 国の掾久米朝臣廣繩、天平二十年はたとせといふとしに、朝集使まゐうごなはるつかひに附きて京みやこに入のぼり、その事畢をはりて、天平感宝元年閏五月のちのさつきの二十七日はつかまりなぬかのひ、本の任つかさに還到かへる。仍かれ長官かみの館たちに詩酒宴うたげ楽飲あそべり。その時主人あろじ守大伴宿禰家持がよめる歌一首、また短歌
原文 於保支見能 末支能末尓々々 等里毛知氐 都可布流久尓能 年内能 許登可多祢母知 多末保許能 美知尓伊天多知 伊波祢布美 也末古衣野由支 弥夜故敝尓 末為之和我世乎 安良多末乃 等之由吉我弊理 月可佐祢 美奴日佐末祢美 故敷流曽良 夜須久之安良祢波 保止々支須 支奈久五月能 安夜女具佐 余母疑可豆良伎 左加美都伎 安蘇比奈具礼止 射水河 雪消溢而 逝水能 伊夜末思尓乃未 多豆我奈久 奈呉江能須氣能 根毛己呂尓 於母比牟須保礼 奈介伎都々 安我末<川>君我 許登乎波里 可敝利末可利天 夏野能 佐由利能波奈能 花咲尓 々布夫尓恵美天 阿波之多流 今日乎波自米氐 鏡奈須 可久之都祢見牟 於毛我波利世須
訓読 大君の 任きのまにまに 取り持ちて 仕ふる国の 年の内の 事かたね持ち 玉桙の 道に出で立ち 岩根踏み 山越え野行き 都辺に 参ゐし我が背を あらたまの 年行き返り 月重ね 見ぬ日さまねみ 恋ふるそら 安くしあらねば 霍公鳥 来鳴く五月の あやめぐさ 蓬かづらき 酒みづき 遊びなぐれど 射水川 雪消溢りて 行く水の いや増しにのみ 鶴が鳴く 奈呉江の菅の ねもころに 思ひ結ぼれ 嘆きつつ 我が待つ君が 事終り 帰り罷りて 夏の野の さ百合の花の 花笑みに にふぶに笑みて 逢はしたる 今日を始めて 鏡なす かくし常見む 面変りせず
仮名 おほきみの まきのまにまに とりもちて つかふるくにの としのうちの ことかたねもち たまほこの みちにいでたち いはねふみ やまこえのゆき みやこへに まゐしわがせを あらたまの としゆきがへり つきかさね みぬひさまねみ こふるそら やすくしあらねば ほととぎす きなくさつきの あやめぐさ よもぎかづらき さかみづき あそびなぐれど いみづかは ゆきげはふりて ゆくみづの いやましにのみ たづがなく なごえのすげの ねもころに おもひむすぼれ なげきつつ あがまつきみが ことをはり かへりまかりて なつののの さゆりのはなの はなゑみに にふぶにゑみて あはしたる けふをはじめて かがみなす かくしつねみむ おもがはりせず
左注 なし
校異 短歌 [西] 短哥 / 津→川 [元][紀][細]
事項 天平感宝1年閏5月27日 作者:大伴家持 年紀 宴席 歓迎 帰任 久米広縄 動物 植物 高岡 富山
訓異 みちにいでたち;みちにいてたち, まゐしわがせを;まゐしわかせを, としゆきがへり;としゆきかへり, やすくしあらねば;やすくしあらねは, ほととぎす;ほとときす, あやめぐさ;あやめくさ, よもぎかづらき;よもきかつらき, さかみづき;さかみつき, あそびなぐれど;あそひなくれと, いみづかは;いみつかは, ゆきげはふりて;ゆききえみちて, ゆくみづの;ゆくみつの, たづがなく;たつかなく, なごえのすげの;なこえのすけの, おもひむすぼれ;おもひむすほれ, なげきつつ;なけきつつ, あがまつきみが;あかまつきみか, にふぶにゑみて;にふふにゑみて, けふをはじめて;けふをはしめて, かがみなす;かかみなす, おもがはりせず;おもかはりせす,
   
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題詞 (國掾久米朝臣廣縄以天平廿年附朝集使入京 其事畢而天平感寶元年閏五月廿七日還到本任 仍長官之舘設詩酒宴樂飲 於時主人守大伴宿祢家持作歌一首[并短歌])反歌二首
題訓 反し歌二首
原文 許序能秋 安比見之末尓末 今日見波 於毛夜目都良之 美夜古可多比等
訓読 去年の秋相見しまにま今日見れば面やめづらし都方人
仮名 こぞのあき あひみしまにま けふみれば おもやめづらし みやこかたひと
左注 なし
校異 なし
事項 天平感宝1年閏5月27日 作者:大伴家持 年紀 宴席 歓迎 帰任 久米広縄 高岡 富山
訓異 こぞのあき;こそのあき, あひみしまにま;あひみしままに, けふみれば;けふみれは, おもやめづらし;おもやめつらし,
   
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題詞 ((國掾久米朝臣廣縄以天平廿年附朝集使入京 其事畢而天平感寶元年閏五月廿七日還到本任 仍長官之舘設詩酒宴樂飲 於時主人守大伴宿祢家持作歌一首[并短歌])反歌二首)
原文 可久之天母 安比見流毛<乃>乎 須久奈久母 年月經礼波 古非之家礼夜母
訓読 かくしても相見るものを少なくも年月経れば恋ひしけれやも
仮名 かくしても あひみるものを すくなくも としつきふれば こひしけれやも
左注 なし
校異 能→乃 [元][類][藍]
事項 天平感宝1年閏5月27日 作者:大伴家持 年紀 宴席 歓迎 帰任 久米広縄 高岡 富山 恋情
訓異 としつきふれば;としつきふれは,
   
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題詞 聞霍公鳥喧作歌一首
題訓 霍公鳥の喧ねを聞きてよめる歌一首
原文 伊尓之敝欲 之<怒>比尓家礼婆 保等登藝須 奈久許恵伎吉弖 古非之吉物<乃>乎
訓読 いにしへよ偲ひにければ霍公鳥鳴く声聞きて恋しきものを
仮名 いにしへよ しのひにければ ほととぎす なくこゑききて こひしきものを
左注 なし
校異 奴→怒 [元][類] / 藝 [元][類][紀][細] 伎 / 能→乃 [元][類]
事項 天平感宝1年 作者:大伴家持 年紀 動物 恋情 季節 高岡 富山
訓異 いにしへよ;いにしへゆ, しのひにければ;しのひにけれは, ほととぎす;ほとときす,
   
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題詞 為向京之時見貴人<及>相美人飲宴之日述懐儲作歌二首
題訓 京みやこに向まゐでむ時、貴人うまひとを見、美人をとめに逢ひて飲宴うたげせむ日、懐おもひを述べむ為、儲あらかじめよめる歌二首
原文 見麻久保里 於毛比之奈倍尓 賀都良賀氣 香具波之君乎 安比見都流賀母
訓読 見まく欲り思ひしなへにかづらかけかぐはし君を相見つるかも
仮名 みまくほり おもひしなへに かづらかげ かぐはしきみを あひみつるかも
左注 (同閏五月廿八日大伴宿祢家持作之)
校異 乃→及 [西(訂正)][元][類][古]
事項 天平感宝1年閏5月28日 作者:大伴家持 年紀 儲作 宴席 恋情 帰任 空想 高岡 富山
訓異 かづらかげ;かつらかけ, かぐはしきみを;かくはしきみを,
   
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題詞 (為向京之時見貴人<及>相美人飲宴之日述懐儲作歌二首)
原文 朝参乃 伎美我須我多乎 美受比左尓 比奈尓之須米婆 安礼故非尓家里 [<一>云 波之吉与思 伊毛我須我多乎]
訓読 朝参の君が姿を見ず久に鄙にし住めば我れ恋ひにけり [一云 はしきよし妹が姿を]
仮名 てうさむの きみがすがたを みずひさに ひなにしすめば あれこひにけり [はしきよし いもがすがたを]
左注 同閏五月廿八日大伴宿祢家持作之
左注訓 同じ〔閏五〕月の二十八日はつかまりやかのひ、大伴宿禰家持がよめる。
校異 一頭→一 [元][類]
事項 天平感宝1年閏5月28日 作者:大伴家持 年紀 高岡 富山 恋情 儲作 宴席 帰任
訓異 てうさむの;まゐいりの, きみがすがたを;きみかすかたを, みずひさに;みすひさに, ひなにしすめば;ひなにしすめは, [はしきよし, いもがすがたを]
   
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題詞 天平感寶元年閏五月六日以来起小旱百姓田畝稍有<凋>色<也> 至于六月朔日忽見雨雲之氣仍作雲歌一首 [短歌一絶]
題訓 天平感宝元年閏五月の六日むかのひより小旱ひでりして、百姓おほみたからのうゑし田畝た稍やや凋める色あり。六月みなつきの朔日つきたちのひに至りて、忽ちに雨雲之気あまけのくもを見、仍て作める歌一首 短歌一絶
原文 須賣呂伎能 之伎麻須久尓能 安米能之多 四方能美知尓波 宇麻乃都米 伊都久須伎波美 布奈乃倍能 伊波都流麻泥尓 伊尓之敝欲 伊麻乃乎都頭尓 万調 麻都流都可佐等 都久里多流 曽能奈里波比乎 安米布良受 日能可左奈礼婆 宇恵之田毛 麻吉之波多氣毛 安佐其登尓 之保美可礼由苦 曽乎見礼婆 許己呂乎伊多美 弥騰里兒能 知許布我其登久 安麻都美豆 安布藝弖曽麻都 安之比奇能 夜麻能多乎理尓 許能見油流 安麻能之良久母 和多都美能 於枳都美夜敝尓 多知和多里 等能具毛利安比弖 安米母多麻波祢
訓読 天皇の 敷きます国の 天の下 四方の道には 馬の爪 い尽くす極み 舟舳の い果つるまでに いにしへよ 今のをつづに 万調 奉るつかさと 作りたる その生業を 雨降らず 日の重なれば 植ゑし田も 蒔きし畑も 朝ごとに しぼみ枯れゆく そを見れば 心を痛み みどり子の 乳乞ふがごとく 天つ水 仰ぎてぞ待つ あしひきの 山のたをりに この見ゆる 天の白雲 海神の 沖つ宮辺に 立ちわたり との曇りあひて 雨も賜はね
仮名 すめろきの しきますくにの あめのした よものみちには うまのつめ いつくすきはみ ふなのへの いはつるまでに いにしへよ いまのをつづに よろづつき まつるつかさと つくりたる そのなりはひを あめふらず ひのかさなれば うゑしたも まきしはたけも あさごとに しぼみかれゆく そをみれば こころをいたみ みどりこの ちこふがごとく あまつみづ あふぎてぞまつ あしひきの やまのたをりに このみゆる あまのしらくも わたつみの おきつみやへに たちわたり とのぐもりあひて あめもたまはね
左注 (右二首六月一日晩頭守大伴宿祢家持作之)
校異 彫→凋 [西(朱筆訂正)][矢][京] / <>→也 [元][細]
事項 天平感宝1年6月1日 作者:大伴家持 年紀 雨乞媿 寿歌 高岡 富山
訓異 いはつるまでに;いはつるまてに, いにしへよ;いにしへゆ, いまのをつづに;いまのをつつに, よろづつき;よろつつき, あめふらず;あめふらす, ひのかさなれば;ひのかさなれは, あさごとに;あさことに, しぼみかれゆく;しほみかれゆく, そをみれば;そをみれは, みどりこの;みとりこの, ちこふがごとく;ちこふかことく, あまつみづ;あまつみつ, あふぎてぞまつ;あふきてそまつ, わたつみの;わたつつの, とのぐもりあひて;とのくもりあひて,
   
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題詞 (天平感寶元年閏五月六日以来起小旱百姓田畝稍有<凋>色<也> 至于六月朔日忽見雨雲之氣仍作雲歌一首 [短歌一絶])反歌一首
題訓 反し歌一首
原文 許能美由流 久毛保妣許里弖 等能具毛理 安米毛布良奴可 <己許>呂太良比尓
訓読 この見ゆる雲ほびこりてとの曇り雨も降らぬか心足らひに
仮名 このみゆる くもほびこりて とのくもり あめもふらぬか こころだらひに
左注 右二首六月一日晩頭守大伴宿祢家持作之
左注訓 右の二首は、六月の一日の晩頭ゆふぐれ、守大伴宿禰家持がよめる。
校異 許己→己許 [元][類]
事項 天平感宝1年6月1日 作者:大伴家持 年紀 雨乞媿 寿歌 高岡 富山
訓異 くもほびこりて;くもほひこりて, こころだらひに;こころたらひに,
   
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題詞 賀雨落歌一首
題訓 雨落あめを賀よろこぶ歌一首
原文 和我保里之 安米波布里伎奴 可久之安良<婆> 許登安氣世受杼母 登思波佐可延牟
訓読 我が欲りし雨は降り来ぬかくしあらば言挙げせずとも年は栄えむ
仮名 わがほりし あめはふりきぬ かくしあらば ことあげせずとも としはさかえむ
左注 右一首同月四日大伴宿祢家持作
左注訓 右の一首は、同じ月の四日よかのひ、大伴宿禰家持がよめる。
校異 波→婆 [元]
事項 天平感宝1年6月4日 作者:大伴家持 年紀 雨乞媿 寿歌 賀歌 高岡 富山
訓異 わがほりし;わかほりし, かくしあらば;かくしあらは, ことあげせずとも;ことあけせすとも,
   
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題詞 七夕歌一首[并短歌]
題訓 七夕なぬかのよの歌一首、また短歌
原文 安麻泥良須 可未能御代欲里 夜洲能河波 奈加尓敝太弖々 牟可比太知 蘇泥布利可波之 伊吉能乎尓 奈氣加須古良 和多里母理 布祢毛麻宇氣受 波之太尓母 和多之弖安良波 曽<乃>倍由母 伊由伎和多良之 多豆佐波利 宇奈我既里為弖 於<毛>保之吉 許登母加多良比 <奈>具左牟流 許己呂波安良牟乎 奈尓之可母 安吉尓之安良祢波 許等騰比能 等毛之伎古良 宇都世美能 代人和礼<毛> 許己<乎>之母 安夜尓久須之弥 徃更 年<乃>波其登尓 安麻<乃>波良 布里左氣見都追 伊比都藝尓須礼
訓読 天照らす 神の御代より 安の川 中に隔てて 向ひ立ち 袖振り交し 息の緒に 嘆かす子ら 渡り守 舟も設けず 橋だにも 渡してあらば その上ゆも い行き渡らし 携はり うながけり居て 思ほしき 言も語らひ 慰むる 心はあらむを 何しかも 秋にしあらねば 言どひの 乏しき子ら うつせみの 世の人我れも ここをしも あやにくすしみ 行きかはる 年のはごとに 天の原 振り放け見つつ 言ひ継ぎにすれ
仮名 あまでらす かみのみよより やすのかは なかにへだてて むかひたち そでふりかはし いきのをに なげかすこら わたりもり ふねもまうけず はしだにも わたしてあらば そのへゆも いゆきわたらし たづさはり うながけりゐて おもほしき こともかたらひ なぐさむる こころはあらむを なにしかも あきにしあらねば ことどひの ともしきこら うつせみの よのひとわれも ここをしも あやにくすしみ ゆきかはる としのはごとに あまのはら ふりさけみつつ いひつぎにすれ
左注 (右七月七日仰見天漢大伴宿祢家持作)
校異 歌 [西] 謌 / 能→乃 [元][類] / 母→毛 [元][類] / 那→奈 [元][類] / 母→毛 [元][類] / 宇→乎 [代匠記精撰本] / 能→乃 [元][類]
事項 天平感宝1年7月7日 作者:大伴家持 年紀 七夕 寿歌 高岡 富山
訓異 あまでらす;あまてらす, なかにへだてて;なかにへたてて, そでふりかはし;そてふりかはし, なげかすこら;なけかすこら, ふねもまうけず;ふねもまうけす, はしだにも;はしたにも, わたしてあらば;わたしてあらは, たづさはり;たつさはり, うながけりゐて;うなかけりゐて, なぐさむる;なくさむる, あきにしあらねば;あきにしあらねは, ことどひの;こととひの, ゆきかはる;ゆきかへる, としのはごとに;としのはことに, いひつぎにすれ;いひつきにすれ,
   
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題詞 (七夕歌一首[并短歌])反歌二首
題訓 反し歌二首
原文 安麻能我波 々志和多世良波 曽能倍由母 伊和多良佐牟乎 安吉尓安良受得物
訓読 天の川橋渡せらばその上ゆもい渡らさむを秋にあらずとも
仮名 あまのがは はしわたせらば そのへゆも いわたらさむを あきにあらずとも
左注 (右七月七日仰見天漢大伴宿祢家持作)
校異 なし
事項 天平感宝1年7月7日 作者:大伴家持 年紀 七夕 寿歌 高岡 富山
訓異 あまのがは;あまのかは, はしわたせらば;はしわたせらは, あきにあらずとも;あきにあらすとも,
   
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題詞 ((七夕歌一首[并短歌])反歌二首)
原文 夜須能河波 許牟可比太知弖 等之<乃>古非 氣奈我伎古良河 都麻度比能欲曽
訓読 安の川こ向ひ立ちて年の恋日長き子らが妻どひの夜ぞ
仮名 やすのかは こむかひたちて としのこひ けながきこらが つまどひのよぞ
左注 右七月七日仰見天漢大伴宿祢家持作
左注訓 右、七月ふみづきの七日なぬかのひ、天漢あまのがはを仰見みて、 大伴宿禰家持がよめる。
校異 許 [万葉集古義](塙) 伊 / 能→乃 [元][類]
事項 天平感宝1年7月7日 作者:大伴家持 年紀 七夕 寿歌 高岡 富山
訓異 けながきこらが;けなかきこらか, つまどひのよぞ;つまとひのよそ,
   
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題詞 越前國掾大伴宿祢池主来贈戯歌四首 / 忽辱恩賜 驚欣已深 心中含咲獨座稍開 表裏不同相違何異 推量所由率尓作策歟 明知加言豈有他意乎 凡貿易本物其罪不軽 正贓倍贓宜<急>并満 今勒風雲發遣<徴>使 早速返報不須延廻 / 勝寶元年十一月十二日 物所貿易下吏 / 謹訴貿易人断官司 廳下 / 別<白> 可怜之意不能黙止 聊述四詠准擬睡覺
題訓 越前国こしのみちのくちのくにの掾まつりごとひと大伴宿禰池主が来贈おくれる戯歌たはれうた四首
忽ちに恩賜を辱かたじけなくす。驚き欣ぶこと已すでに深し。心の中に咲ゑみを含み、独り座りて稍開けば、表裏同じからず。相違何ぞ異れる。所由そのゆゑを推し量るに、率爾に策を作なす歟。明かに言の如きことを知りぬ。豈に他の意有らめや。凡そ本物を貿易まうやくする、其の罪軽かろからず。正贓倍贓、急すみやけく并満すべし。今風雲に勒して、徴使を発遣おくる。早速返報したまへ。延回したまふべからず。
 勝宝元年十一月十二日。物貿易せらる下吏、謹みて
 貿易の人断る庁官司の 庁の下に訴ふ。
別に白まをす、可怜うつくしみの意、黙止もだり能えず。聊か四詠ようたを述よみて、唯睡覚に擬す。
原文 久佐麻久良 多比<乃>於伎奈等 於母保之天 波里曽多麻敝流 奴波牟物能毛賀
訓読 草枕旅の翁と思ほして針ぞ賜へる縫はむ物もが
仮名 くさまくら たびのおきなと おもほして はりぞたまへる ぬはむものもが
左注 (右歌之返報歌者脱漏不得探求也)
校異 忽→急 [元][紀][細] / 微→徴 [元][細] / 日→白 [元] / 能→乃 [元][類][古]
事項 天平勝宝1年11月12日 作者:大伴池主 年紀 贈答 大伴家持 書簡 枕詞 戯歌 高岡 富山
訓異 たびのおきなと;たひのおきなと, はりぞたまへる;はりそたまへる, ぬはむものもが;ぬはむものもか,
   
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題詞 (越前國掾大伴宿祢池主来贈戯歌四首 / 忽辱恩賜 驚欣已深 心中含咲獨座稍開 表裏不同相違何異 推量所由率尓作策歟 明知加言豈有他意乎 凡貿易本物其罪不軽 正贓倍贓宜<急>并満 今勒風雲發遣<徴>使 早速返報不須延廻 / 勝寶元年十一月十二日 物所貿易下吏 / 謹訴貿易人断官司 廳下 / 別<白> 可怜之意不能黙止 聊述四詠准擬睡覺)
原文 芳理夫久路 等利安宜麻敝尓於吉 可邊佐倍波 於能等母於能夜 宇良毛都藝多利
訓読 針袋取り上げ前に置き返さへばおのともおのや裏も継ぎたり
仮名 はりぶくろ とりあげまへにおき かへさへば おのともおのや うらもつぎたり
左注 (右歌之返報歌者脱漏不得探求也)
校異 なし
事項 天平勝宝1年11月12日 作者:大伴池主 年紀 大伴家持 贈答 書簡 戯歌 高岡 富山
訓異 はりぶくろ;はりふくろ, とりあげまへにおき;とりあけまへにおき, かへさへば;かへさへは, うらもつぎたり;うらもつきたり,
   
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題詞 (越前國掾大伴宿祢池主来贈戯歌四首 / 忽辱恩賜 驚欣已深 心中含咲獨座稍開 表裏不同相違何異 推量所由率尓作策歟 明知加言豈有他意乎 凡貿易本物其罪不軽 正贓倍贓宜<急>并満 今勒風雲發遣<徴>使 早速返報不須延廻 / 勝寶元年十一月十二日 物所貿易下吏 / 謹訴貿易人断官司 廳下 / 別<白> 可怜之意不能黙止 聊述四詠准擬睡覺)
原文 波利夫久路 應婢都々氣奈我良 佐刀其等邇 天良佐比安流氣騰 比等毛登賀米授
訓読 針袋帯び続けながら里ごとに照らさひ歩けど人もとがめず
仮名 はりぶくろ おびつつけながら さとごとに てらさひあるけど ひともとがめず
左注 (右歌之返報歌者脱漏不得探求也)
校異 なし
事項 天平勝宝1年11月12日 作者:大伴池主 年紀 贈答 大伴家持 書簡 戯歌 高岡 富山
訓異 はりぶくろ;はりふくろ, おびつつけながら;おひつつけなから, さとごとに;さとことに, てらさひあるけど;てらさひあるけと, ひともとがめず;ひともとかめす,
   
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題詞 (越前國掾大伴宿祢池主来贈戯歌四首 / 忽辱恩賜 驚欣已深 心中含咲獨座稍開 表裏不同相違何異 推量所由率尓作策歟 明知加言豈有他意乎 凡貿易本物其罪不軽 正贓倍贓宜<急>并満 今勒風雲發遣<徴>使 早速返報不須延廻 / 勝寶元年十一月十二日 物所貿易下吏 / 謹訴貿易人断官司 廳下 / 別<白> 可怜之意不能黙止 聊述四詠准擬睡覺)
原文 等里我奈久 安豆麻乎佐之天 布佐倍之尓 由可牟<等>於毛倍騰 与之母佐祢奈之
訓読 鶏が鳴く東をさしてふさへしに行かむと思へどよしもさねなし
仮名 とりがなく あづまをさして ふさへしに ゆかむとおもへど よしもさねなし
左注 右歌之返報歌者脱漏不得探求也
左注訓 右の歌の返報歌こたへうたは、脱漏もれて探求もとめ得ず。
校異 登→等 [元][類][古]
事項 天平勝宝1年11月12日 作者:大伴池主 年紀 贈答 大伴家持 書簡 戯歌 高岡 富山
訓異 とりがなく;とりかなく, あづまをさして;あつまをさして, ゆかむとおもへど;ゆかむとおもへと,
   
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題詞 更来贈歌二首 / 依迎驛使事今月十五日到来部下加賀郡境 面蔭<見>射水之郷戀緒結深海之村 身異胡馬心悲北風 乗月徘徊曽無所為 稍開来<封>其辞[云<々>]者 先所奉書返畏度疑歟 僕作嘱羅且悩使君 夫乞水得酒従来能口 論時合理何題強吏乎 尋誦針袋詠詞泉酌不渇 抱膝獨咲能ニ旅愁 陶然遣日何慮何思 短筆不宣 / 勝寶元年十二月十五日 徴物下司 / 謹上 不伏使君 [記室] / 別奉[云々]歌二首
題訓 更に来贈おくれる歌二首
駅使はゆまつかひを迎ふる事に依りて、今月十五日、部下くぬち加賀の郡の境に到来いたる。面蔭射水の郷に見はれ、恋緒深海ふかみの村に結ふ。身胡馬にあらねど、心北風を悲しめり。月に乗りて徘徊たもとほり、曽て為す所無く、稍来封を開く。その辞に云く、「著者先に奉る書、返りて疑ひに度れることを畏る歟」とのりたまへり。僕われ嘱羅を作し、且使君を悩ます。夫れ水を乞ひて酒を得、従来能き口なり。論じて時理に合へり。何か強吏と題しるさめや。尋ねて針袋の詠を誦むに、詞泉酌めども渇つきず。膝を抱むだき独り咲わらふ。能く旅愁をのぞき、陶然として日を遣る。何か慮はからむ、何か思はむ。短筆不宣。
 勝宝元年十二月十五日。物を徴はたりし下司かし、謹みて
伏せぬ使君 記室に上たてまつる。
 別ことに奉る云々歌二首
原文 多々佐尓毛 可尓母与己佐母 夜都故等曽 安礼<波>安利家流 奴之能等<乃>度尓
訓読 縦さにもかにも横さも奴とぞ我れはありける主の殿戸に
仮名 たたさにも かにもよこさも やつことぞ あれはありける ぬしのとのどに
左注 なし
校異 見見→見 [西(訂正)][元][紀][細] / 對→封 [西(朱書訂正)][細] / 著→々 [元] / 歌 [西] 謌 / 婆→波 [元][類][古] / 能→乃 [元][類][古]
事項 天平勝宝1年12月15日 作者:大伴池主 年紀 贈答 書簡 大伴家持 戯歌 高岡 富山
訓異 やつことぞ;よつことそ, ぬしのとのどに;ぬしのとのとに,
   
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題詞 (更来贈歌二首 / 依迎驛使事今月十五日到来部下加賀郡境 面蔭<見>射水之郷戀緒結深海之村 身異胡馬心悲北風 乗月徘徊曽無所為 稍開来<封>其辞[云<々>]者 先所奉書返畏度疑歟 僕作嘱羅且悩使君 夫乞水得酒従来能口 論時合理何題強吏乎 尋誦針袋詠詞泉酌不渇 抱膝獨咲能ニ旅愁 陶然遣日何慮何思 短筆不宣 / 勝寶元年十二月十五日 徴物下司 / 謹上 不伏使君 [記室] / 別奉[云々]歌二首)
原文 波里夫久路 己礼波多婆利奴 須理夫久路 伊麻波衣天之可 於吉奈佐備勢牟
訓読 針袋これは賜りぬすり袋今は得てしか翁さびせむ
仮名 はりぶくろ これはたばりぬ すりぶくろ いまはえてしか おきなさびせむ
左注 なし
校異 なし
事項 天平勝宝1年12月15日 作者:大伴池主 年紀 贈答 書簡 大伴家持 戯歌 高岡 富山
訓異 はりぶくろ;はりふくろ, これはたばりぬ;これはたはりぬ, すりぶくろ;すりふくろ, おきなさびせむ;おきなさひせむ,
   
  18/4134
題詞 宴席詠雪月梅花歌一首
題訓 宴席うたげのとき、雪、月、梅の花を詠める歌一首
原文 由吉<乃>宇倍尓 天礼流都久欲尓 烏梅能播奈 乎<理>天於久良牟 波之伎故毛我母
訓読 雪の上に照れる月夜に梅の花折りて送らむはしき子もがも
仮名 ゆきのうへに てれるつくよに うめのはな をりておくらむ はしきこもがも
左注 右一首一二月大伴宿祢家持作
左注訓 右の一首は、十二月しはす、大伴宿禰家持がよめる。
校異 能→乃 [元][類] / <>→理 [西(右書)][元][類][紀]
事項 天平勝宝1年12月 作者:大伴家持 年紀 宴席 題詠 植物 恋愛 文芸
訓異 はしきこもがも;はしきこもかも,
   
  18/4135
題詞 なし
原文 和我勢故我 許登等流奈倍尓 都祢比登<乃> 伊布奈宜吉思毛 伊夜之伎麻須毛
訓読 我が背子が琴取るなへに常人の言ふ嘆きしもいやしき増すも
仮名 わがせこが こととるなへに つねひとの いふなげきしも いやしきますも
左注 右一首少目秦伊美吉石竹舘宴守大伴宿祢家持作
左注訓 右の一首は、少目すなきふみひと秦伊美吉石竹が館の宴に、 守大伴宿禰家持がよめる。
校異 能→乃 [元][類]
事項 作者:大伴家持 恋愛 宴席 秦石竹
訓異 わがせこが;わかせこか, いふなげきしも;いふなけきしも,
   
  18/4136
題詞 天平勝寶二年正月二日於國廳給饗諸郡司等<宴>歌一首
題訓 天平勝宝二年正月むつきの二日、国庁くにのまつりごとどのにて諸もろもろの郡司こほりのつかさ等を給饗あろじせる宴歌うた一首
原文 安之比奇能 夜麻能許奴礼能 保与等<理>天 可射之都良久波 知等世保久等曽
訓読 あしひきの山の木末のほよ取りてかざしつらくは千年寿くとぞ
仮名 あしひきの やまのこぬれの ほよとりて かざしつらくは ちとせほくとぞ
左注 右一首守大伴宿祢家持作
左注訓 右の一首は、守大伴宿禰家持がよめる。
校異 <>→宴 [西(右書)][元][古][紀] / 里→理 [元][類][古]
事項 天平勝宝2年1月2日 作者:大伴家持 年紀 枕詞 寿歌 賀歌 高岡 富山 宴席
訓異 かざしつらくは;かさしつらくは, ちとせほくとぞ;ちとせほくとそ,
   
  18/4137
題詞 <判>官久米朝臣廣縄之舘宴歌一首
題訓 判官まつりごとひと久米朝臣廣繩が館の宴の歌一首
原文 牟都奇多都 波流能波自米尓 可久之都追 安比之恵美天婆 等枳自家米也母
訓読 正月立つ春の初めにかくしつつ相し笑みてば時じけめやも
仮名 むつきたつ はるのはじめに かくしつつ あひしゑみてば ときじけめやも
左注 同月五日守大伴宿祢家持作之
左注訓 同じ月の五日いつかのひ、守大伴宿禰家持がよめる。
校異 刺→判 [元][類]
事項 天平勝宝2年1月5日 作者:大伴家持 年紀 宴席 久米広縄 賀歌 寿歌 富山 高岡
訓異 はるのはじめに;はるのはしめに, あひしゑみてば;あひしえみては, ときじけめやも;ときしけめやも,
   
  18/4138
題詞 縁檢察墾田地事宿礪波郡主帳多治比部北里之家 于時忽起風雨不得辞去作歌一首
題訓 墾田はりたの地ところを検察みさだむる事に縁りて、礪波の郡の主帳ふみひと多治比部北里たぢひべのきたさとが家に宿れる時、忽ちに風雨かぜあめ起こり、え辞去かへらずてよめる歌一首
原文 夜夫奈美能 佐刀尓夜度可里 波流佐米尓 許母理都追牟等 伊母尓都宜都夜
訓読 薮波の里に宿借り春雨に隠りつつむと妹に告げつや
仮名 やぶなみの さとにやどかり はるさめに こもりつつむと いもにつげつや
左注 二月十八日守大伴宿祢家持作
左注訓 二月きさらぎの十八日とをかまりやかのひ、守大伴宿禰家持がよめる。
校異 なし
事項 天平勝宝2年2月18日 作者:大伴家持 年紀 地名 砺波 富山 宴席 多治比部北里
訓異 やぶなみの;やふなみの, さとにやどかり;さとにやとかり, いもにつげつや;いもにつけつや,