枕草子60段 よき家の中門あけて

ちごは 枕草子
上巻中
60段
よき家の
滝は

(旧)大系:60段
新大系:57段、新編全集:58段
(以上全て三巻本系列本。しかし後二本の構成は2/3が一致せず、混乱を招くので、三巻本理論の根本たる『(旧)大系』に準拠すべきと思う)
(旧)全集=能因本:63段
 


 
 よき家の中門あけて、檳榔毛の車のしろくきよげなるに、蘇芳の下簾、にほにいときよらにて、榻にうちかけたるこそめでたけれ。
 五位、六位などの下襲の裾はさみて、笏のいとしろきに、扇うちおきなどいきちがひ、また、装束し、壺胡籙負ひたる随身の出で入りしたる、いとづきづきし。
 厨女のきよげなるが、さし出でて、「なにがし殿の人や候ふ」などいふもをかし。