古事記 サホ姫寝返る~原文対訳

サホ彦討伐 古事記
中巻④
11代 垂仁天皇
サホ姫サホ彦兄妹物語
⑤サホ姫寝返る
母子奪取作戦
原文 書き下し
(武田祐吉)
現代語訳
(武田祐吉)
此時
沙本毘賣命。
この時
沙本毘賣さほびめの命、
この時、
サホ姫の命は
不得忍其兄。 その兄にえ忍あへずして、 堪え得ないで、
自後門逃出而。 後しりつ門より逃れ出でて、 後の門から逃げて
納其之稻城。 その稻城いなぎに納いりましき。 その城におはいりになりました。
     
此時
其后妊身。
 この時に
その后姙はらみましき。
 この時に
その皇后は姙娠
にんしんしておいでになり、
於是天皇。 ここに天皇、  
不忍
其后懷妊
その后の、懷姙みませるに
忍へず、
 
及愛重 また愛重めぐみたまへることも、 またお愛し遊ばされていることが
至于三年。 三年になりにければ、 もう三年も經つていたので、
故廻其軍。 その軍を廻かへして 軍を返して、
不急攻迫。 急すむやけくも攻めたまはざりき。 俄にお攻めになりませんでした。
     
如此逗留之間。 かく逗留とどこほる間に、 かように延びている間に
其所妊之御子
既産。
その姙はらめる御子
既に産あれましぬ。
御子がお生まれになりました。
     
故出其御子。 かれその御子を出して、 そこでその御子を出して
置稻城外。 稻城いなぎの外に置きまつりて、 城の外において、
令白天皇。 天皇に白さしめたまはく、 天皇に申し上げますには、
若此御子矣。 「もしこの御子を、 「もしこの御子をば
天皇之御子所
思看者。
可治賜。
天皇の御子と思ほしめさば、
治めたまふべし」
とまをしたまひき。
天皇の御子と思しめすならば
お育て遊ばせ」
と申さしめました。
サホ彦討伐 古事記
中巻④
11代 垂仁天皇
サホ姫サホ彦兄妹物語
⑤サホ姫寝返る
母子奪取作戦