奥の細道 末の松山:原文対照

壺の碑 奥の細道
末の松山
塩竃


『おくのほそ道』
素龍清書原本 校訂
『新釈奥の細道』
   それより野田の玉川、沖の石を尋ぬ。 それより野田の玉川冲の石をたづぬ
  末の松山は、 末の松山は
  寺を造りて末松山といふ。 寺を造てすゑの松山といふ
     
  松の間々 あひ〳〵一本松のあひ〳〵トアリ
  皆墓原にて、 みな墓原にて
  翼を交はし枝を連ぬる契りの末も、 羽をかはし枝を連るちぎりの末も
  つひにはかくのごときと、 終はかくのみ一本かくの如きトアリ
  悲しさもまさりて、 悲しさもまさりて
  塩竃の浦に入相の鐘を聞く。 鹽がまのうらに入相のかねを聞く
  五月雨の空いささか晴れて、 五月雨の空聊晴れて
  夕月夜幽かに、 夕月夜かすかに
  籬が島もほど近し。 まがきが島もほど近し
  蜑の小舟漕ぎ連れて、肴分かつ声々に 蜑の小舟こぎつれて肴わかつ聲〳〵に
  つなでかなしも つなでかなしも
  とよみけん心も知られて、いとどあはれなり。 とよみけん心もしられていと哀也
     
   その夜、目盲法師の、琵琶を鳴らして、 その夜盲法師の琵巴琶ノ誤也をならして
  奥浄瑠璃といふものを語る。 おく上るりといふ物をかたる
  平家にもあらず、舞にもあらず、 平家にもあらず舞にもあらず
  ひなびたる調子うち上げて、 鄙びたる調子うちあげて
  枕近うかしましけれど、 枕近うかしまし一本かしがましトアリけれど
  さすがに辺土の遺風忘れざるものから、 流石に邊土の遺風忘れざるものから
  殊勝におぼえらる。 殊勝に覺えらる
壺の碑 奥の細道
末の松山
塩竃