竹取物語~降臨

 
 「かゝる程に宵うちすぎて」〔1112〕から、「羅蓋さしたり」〔1131〕まで。
 

 目次
 
 ・本文 ・解説
 

本文

     
 文章
 番号
竹取物語
(國民文庫)
竹とりの翁物語
(群書類從)
     
〔1112〕 かゝる程に宵うちすぎて、 かゝる程に宵打過て。
〔1113〕 子の時ばかりに、 ねの時ばかりに。
〔1114〕 家のあたり
晝のあかさにも過ぎて光りたり。
家のあたり
ひるのあかさにも過て光たり。
〔1115〕 望月のあかさを十合せたるばかりにて、
ある人の毛の穴さへ見ゆるほどなり。
もち月のあかさ十合たる計にて
有人の毛のあなさへ見ゆるほどなり。
〔1116〕 大空より、人雲に乘りておりきて、 大空より人雲に乘ており來て。
〔1117〕 地(つち)より五尺ばかりあがりたる程に
立ち連ねたり。
つちより五尺計あがりたるほどに
たちつらねたり。
       
〔1118〕 これを見て、内外(うちと)なる人の心ども、 是をみて內外なる人の心ども。
〔1119〕 物におそはるゝやうにて、 物におそはるゝやうにして。
〔1120〕 相戰はん心もなかりけり。 あひたゝかはむ心もなかりけり。
〔1121〕 辛うじて からうじて。
〔1122〕 思ひ起して、 思ひおこして。
〔1123〕 弓矢をとりたてんとすれども、 弓矢を取たてむとすれども。
〔1124〕 手に力もなくなりて、
痿(な)え屈(かゞま)りたる中(うち)に、
手に力もなく
成てなへかゞ・[まイ]りたる中に。
〔1125〕 心さかしき者、
ねんじて射んとすれども、
心ざしさかしきもの
ねんじていむとすれども。
〔1126〕 外ざまへいきければ、 ほかざまへいきければ。
〔1127〕 あれも戰はで、 あれもたゝかはで。
〔1128〕 心地たゞしれにしれて守りあへり。 こゝちたゞしれにしれて守あへり。
       
〔1129〕 立てる人どもは、
裝束(さうぞく)の清らなること物にも似ず。
たてる人共は
さうぞくのきよらなること物にもにず。
〔1130〕 飛車(とぶくるま)一つ具したり。 とぶ飛車ひとつぐしたり。
〔1131〕 羅蓋さしたり。 らがい(羅蓋)さしたり。
     

解説

 
 
 ここでの様子が、い(射)ても立っても居られない。