枕草子293段 つねに文おこする人の

成信の中将 枕草子
下巻下
293段
つねに文
今朝は

(旧)大系:293段
新大系:274段、新編全集:275段
(以上全て三巻本系列本。しかし後二本の構成は2/3が一致せず混乱を招くので、以後は最も索引性に優れ三巻本理論の根本たる『(旧)大系』に準拠すべきと思う)
(旧)全集=能因本:272段
 


 
 つねに文おこする人の、「なにかは。いふにもかひなし。いまは」といひて、またの日音もせねば、さすがに、明けたてばさし出づる文の見えぬこそさうざうしけれ、と思ひて、「さても、きはきはしかりける心かな」といひてくらしつ。
 

 またの日、雨のいたく降る、昼間で音もせねば、「むげに思ひ絶えにける」などいひて、端のかたにゐたる、夕ぐれに、かささしたる者の持て来たる文を、つねよりもとくあけて見れば、ただ、「水増す雨の」とある、いと多くよみ出だしつる歌どもよりもをかし。
 
 

成信の中将 枕草子
下巻下
293段
つねに文
今朝は