枕草子70段 おぼつかなきもの

歌の題は 枕草子
上巻中
70段
おぼつかなき
たとしへなき

(旧)大系:70段
新大系:67段、新編全集:68段
(以上全て三巻本系列本。しかし後二本の構成は2/3が一致せず、混乱を招くので、三巻本理論の根本たる『(旧)大系』に準拠すべきと思う)
(旧)全集=能因本:71段
 


 
 おぼつかなきもの 十二年の山ごもりの法師の女親。
 知らぬ所に、闇なるにいきたるに、あらはにもぞあるとて、火もともさで、さすがに並みゐたる。いま出で来たる者の心も知らぬに、やむごとなき物持たせて、人のもとにやりたるに、おそく帰る。
 物もまだいはぬちごの、そりくつがへり、人にもいだかれず泣きたる。