古事記 女鳥王の歌物語~原文対訳

八田の菅原 古事記
下巻①
16代 仁徳天皇
女鳥王の歌物語
1 女鳥王
雲雀の歌
原文 書き下し
(武田祐吉)
現代語訳
(武田祐吉)

大雀→隼→女鳥

     
亦天皇。  また天皇、  また天皇は、
以其弟
速總別王。
爲媒而。
その弟
速總別の王を
媒なかだちとして、
弟の
ハヤブサワケの王を
媒人なこうどとして

庶妹
女鳥王。
庶妹ままいも
女鳥めとりの王を
乞ひたまひき。
メトリの王を
お求めになりました。
     
爾女鳥王。 ここに女鳥の王、 しかるにメトリの王が

速總別王曰。
速總別の王に
語りて曰はく、
ハヤブサワケの王に
言われますには、
因大后之強。 「大后の強おずきに因りて、 「皇后樣を憚かつて、
不治賜
八田若郎女。
八田の若郎女を
治めたまはず。
ヤタの若郎女をも
お召しになりませんのですから、
故思不仕奉。 かれ仕へまつらじと思ふ。 わたくしもお仕え申しますまい。
吾爲
汝命之妻。
吾あは
汝が命の妻めにならむ」
といひて、
わたくしは
あなた樣の妻になろうと思います」
と言つて
即相婚。 すなはち婚あひましつ。 結婚なさいました。
     
是以
速總別王。
不復奏。
ここを以ちて
速總別の王
復奏かへりごとまをさざりき。
それですから
ハヤブサワケの王は
御返事申しませんでした。
     

それおれの?

     
爾天皇。 ここに天皇、 ここに天皇は
直幸
女鳥王之
所坐而。
直ただに
女鳥の王の
います所にいでまして、
直接に
メトリの王の
おいでになる處に行かれて、
坐其殿戶之閾上。 その殿戸の
閾しきみの上にいましき。
その戸口の
閾しきいの上においでになりました。
     
於是女鳥王。
坐機而
織服。
ここに女鳥の王
機はたにまして、
服みそ織りたまふ。
その時メトリの王は
機はたにいて
織物を織つておいでになりました。
     
爾天皇歌曰。 ここに天皇、歌よみしたまひしく、 天皇のお歌いになりました御歌は、
     
賣杼理能 女鳥の メトリの女王の
和賀意富岐美能 吾が王おほきみの  
淤呂須波多 織おろす機はた、 織つていらつしやる機はたは、
他賀多泥呂迦母 誰たが料たねろかも。 誰の料でしようかね。
     

ちゃう・雀はさがっとれー

     
女鳥王答歌曰。  女鳥の王、答へ歌ひたまひしく、  メトリの王の御返事の歌、
     
多迦由久夜 高行くや  大空おおぞら高たかく飛とぶ
波夜夫佐和氣能 速總別の ハヤブサワケの王の
美淤須比賀泥 みおすひがね。 お羽織の料です。
     
故天皇。  かれ天皇、  それで天皇は
知其情。 その心を知らして、 その心を御承知になつて、
還入於宮。 宮に還り入りましき。 宮にお還りになりました。
八田の菅原 古事記
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女鳥王の歌物語
1 女鳥王
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