奥の細道 武隈の松:原文対照

笠島 奥の細道
武隈の松
仙台・宮城野


『おくのほそ道』
素龍清書原本 校訂
『新釈奥の細道』
   岩沼に宿る。 岩沼にやどる
  武隈の松にこそ目さむる心地はすれ。 武隈の松にこそ目さむる心地すれ
  根は土際より二木に分かれて、 根は土際より二木木一本本トアリにわかれて
  昔の姿失はずと知らる。 昔のすがたうしなはずとしらる
     
  まづ能因法師思ひ出づ。 先能因法し一本し師トアリ一本づトアリおもひ出
  往昔、陸奥守にて下りし人、 往昔陸奧守にて下りし人
  この木を伐りて 此木を伐て
  名取川の橋杭にせられたることなどあればにや、 名とり川の橋杭にせられたるなどあればにや
  「松はこのたび跡もなし」とはよみたり。 松は此たび跡もなしとは詠みたり
  代々、あるは伐り、 代々あるは伐り
  あるいは植ゑ継ぎなどせし あるひは一本ひナシ植づきなどせし
  と聞くに、 と聞くに
  今はた千歳の形整ひて、 今はた千歲のかたちとゞのほひて
  めでたき松の気色になん侍りし。 めでたき松のけしきになん侍し
     

19
 武隈の 松見せ申せ 遅桜  武隈の 松みや申せ 遲さくら  擧白
     
  と、挙白といふ者の餞別

とせんべち

一本擧白といふものゝせんへち云々トアリ

  したりければ、 したりければ
     

20
 桜より 松は二木を 三月越し  櫻より 松は二木を 三月こし
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武隈の松
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