古事記 猪甘老人再び~原文対訳

置目慕う歌 古事記
下巻⑧
23代 顕宗天皇
猪甘老人再び
雄略陵の堀
原文 書き下し
(武田祐吉)
現代語訳
(武田祐吉)
初天皇。  初め天皇、  初め天皇が
逢難
逃時。
難わざはひに逢ひて、
逃げましし時に、
災難に逢つて
逃げておいでになつた時に、

奪其御粮
猪甘老人。
その御粮かれひを奪とりし
猪甘ゐかひの老人おきなを
求まぎたまひき。
その乾飯ほしいを奪つた
豚飼ぶたかいの老人

お求めになりました。
     
是得求。 ここに求ぎ得て、 そこで求め得ましたのを
喚上而。 喚び上げて、 喚び出して
斬於
飛鳥河之河原。
飛鳥河の河原に
斬りて、
飛鳥河の河原で
斬つて、
皆斷其族之
膝筋。
みなその族やからどもの
膝の筋を斷ちたまひき。
またその一族どもの
膝の筋をお切りになりました。
     
是以至今。 ここを以ちて今に至るまで、 それで今に至るまで
其子孫上於倭之日。 その子孫こども倭に上る日、 その子孫が大和に上る日には
必自
跛也。
かならずおのづから
跛あしなへくなり。
きつと
びつこになるのです。
     

能見志米岐。
其老所在。
〈志米岐
三字以音〉
かれ
その老の所在ありかを
能く見しめき。
その老人の所在を
よく御覽になりましたから、

故其地謂
志米須也。
かれ其處そこを
志米須しめすといふ。
其處を
シメスといいます。
置目慕う歌 古事記
下巻⑧
23代 顕宗天皇
猪甘老人再び
雄略陵の堀