古事記 兄姫弟姫と大碓小碓~原文対訳

三太子 古事記
中巻⑤
12代 景行天皇
ヤマトタケルの物語
①兄姫弟姫と大碓小碓
野蛮×獰猛=倭建
原文 書き下し
(武田祐吉)
現代語訳
(武田祐吉)
於是天皇。  ここに天皇、  ここに天皇は、
聞看定
三野國造之祖。
神大根王之女。

兄比賣。
弟比賣二孃子。
其容姿麗美而。
三野みのの國の造の祖、
大根おほねの王八が女、
名は
兄比賣えひめ
弟比賣おとひめ二孃子ふたをとめ、
それ容姿麗美かほよしと
きこしめし定めて、
三野の國の造の祖先の
オホネの王の女の
兄姫えひめ
弟姫おとひめの
二人の孃子が美しいということを
お聞きになつて、
     
遣其御子
大碓命以喚上。
その御子
大碓おほうすの命を遣して、
喚めし上げたまひき。
その御子の
オホウスの命を遣わして、
お召しになりました。
故其所遣
大碓命。
かれその遣さえたる
大碓の命、
しかるにその遣わされた
オホウスの命が
勿召上而。 召し上げずて、 召しあげないで、
即己自
婚其孃子。
すなはちおのれみづから
その二孃子に婚ひて、
自分が
その二人の孃子と結婚して、
更求他女人。 更に他あだし女をみなを求まぎて、 更に別の女を求めて、
詐名其孃女
而貢上。
その孃子と詐り名づけて
貢上たてまつりき。
その孃子だと僞つて
獻りました。
     
於是天皇。 ここに天皇 そこで天皇は、
知其他嬢。 それ他あだし女を
みななることを知らしめして、
それが別の女であることを
お知りになつて、
恒令經長眼。 恆に長眼を經しめ、 いつも見守らせるだけで、
亦勿婚
而惚也。
また婚あひもせずて、
惚たしなめたまひき。
結婚をしないで
苦しめられました。
     

大碓=兄=兄姫

     
故其大碓命。 かれその大碓おほうすの命、 それでそのオホウスの命が

兄比賣。生子。
押黒之兄日子王。
兄比賣えひめに娶ひて
生みませる子、
押黒おしくろの兄日子の王。
兄姫と結婚して
生んだ子が
オシクロのエ彦の王で、
     
〈此者。三野之
宇泥須和氣之祖〉
こは三野の
宇泥須和氣が祖なり。
これは三野の
宇泥須うねすの別の祖先です。
     

大碓→弟姫(死亡フラグ。倭建の妻=弟橘)

     
亦娶
弟比賣。生子。
押黒弟日子王。
また弟比賣に娶ひて
生みませる子、
押黒の弟日子の王。
また弟姫と結婚して
生んだ子は、
オシクロのオト彦の王で、
〈此者。
牟宜都君等之祖〉
こは
牟宜都の君等が祖なり。
これは
牟宜都むげつの君等の祖先です。
     
此之御世。 この御世に この御世に

田部。
田部たべを定め、 田部を
お定めになり、
又定
東之淡水門。
また東あづまの
淡あはの水門みなとを定め、
また東國の
安房の水門みなとをお定めになり、
又定
膳之大伴部。
また膳かしはでの
大伴部おほともべを定め、
また膳かしわでの
大伴部をお定めになり、
又定
倭屯家。
また倭やまとの
屯家みやけを定めたまひ、
また大和の
役所をお定めになり、
又作坂手池。 また坂手さかての池を作りて、 また坂手の池を作つて
即竹植
其堤也。
すなはちその堤に
竹を植ゑしめたまひき。
その堤に
竹を植えさせなさいました。
三太子 古事記
中巻⑤
12代 景行天皇
ヤマトタケルの物語
①兄姫弟姫と大碓小碓
野蛮×獰猛=倭建