古事記 当芸野・杖衝坂~原文対訳

白猪と居寤清泉 古事記
中巻⑤
12代 景行天皇
倭建の歌物語
4 当芸野・杖衝坂
尾津前の一松の歌
原文 書き下し
(武田祐吉)
現代語訳
(武田祐吉)

當藝野上=トゲの上

     
自其處發。  其處そこより發たたして、  其處からお立ちになつて
到當藝野上之時。 當藝たぎの野のの上に
到ります時に、
當藝たぎの野の上に
おいでになつた時に
詔者。 詔りたまはくは、 仰せられますには、
     
吾心
恆念
自虚翔行然。
「吾が心、
恆は虚そらよ翔かけり行かむ
と念ひつるを、
「わたしの心は
いつも空を飛んで行くと
思つていたが、
今吾足不得歩。 今吾が足え歩かず、 今は歩くことができなくなつて、
成當藝斯玖。
〈自當下六字以音〉
たぎたぎしくなりぬ」
とのりたまひき。
足がぎくぎくする」
と仰せられました。
     
故號其地。 かれ其地そこに名づけて 依つて其處を
謂當藝也。 當藝たぎといふ。 當藝たぎといいます。
     

杖衝坂

     
自其地。 其地そこより 其處から
差少幸行。 ややすこし幸でますに、 なお少しおいでになりますのに、
因甚疲
衝御杖。
いたく疲れませるに因りて、
御杖を衝つかして、
非常にお疲れなさいましたので、
杖をおつきになつて
稍歩。 ややに歩みたまひき。 ゆるゆるとお歩きになりました。
故號其地。 かれ其地そこに名づけて そこでその地を
謂杖衝坂也。 杖衝坂つゑつきざかといふ。 杖衝つえつき坂といいます。
白猪と居寤清泉 古事記
中巻⑤
12代 景行天皇
倭建の歌物語
4 当芸野・杖衝坂
尾津前の一松の歌