古事記~神生み③ 原文対訳

神生み② 古事記
上巻 第一部
イザナギとイザナミ
神生み③
カグツチ
原文 書き下し
(武田祐吉)
現代語訳
(武田祐吉)
次生
神名
 次に生みたまふ
神の名は、
 次にお生みになつた
神の名は
鳥之
石楠船神
鳥の
石楠船
いはくすぶねの神、
トリノ
イハクスブネの神、
亦名謂
天鳥船神。
またの名は
天の鳥船とりぶね
といふ。
この神はまたの名を
天あめの鳥船とりふね
といいます。
次生
大宜都比賣神。
〈此神名以音〉
次に
大宜都比賣
おほげつひめの神を
生みたまひ、
次に
オホゲツ姫の神を
お生みになり、
次生
火之
夜藝速男神。
〈夜藝二字以音〉
次に
火ほの
夜藝速男
やぎはやをの神を
生みたまひき。
次に
ホノ
ヤギハヤヲの神、
亦名謂
火之
炫毘古神。
またの名は
火ほの
炫毘古
かがびこの神といひ、
またの名を
ホノ
カガ彦の神、
亦名謂
火之
迦具土神。
〈加具二字以音〉
またの名は
火ほの
迦具土かぐつちの神といふ。
またの名を
ホノ
カグツチの神といいます。
     

生此子。
この子を
生みたまひしによりて、
この子こを
お生みになつたために
美蕃登
〈此三字以音〉
見炙而
病臥在。
御陰みほと
やかえて
病やみ臥こやせり。
イザナミの命は
御陰みほとが燒かれて
御病氣になりました。
     
多具理邇
〈此四字以音〉
生神名。
たぐりに
生なりませる
神の名は
その嘔吐へどで
できた神の名は
金山毘古神。
〈訓金云迦那。
下效此〉
金山毘古
かなやまびこの神。
カナヤマ彦の神と
次金山毘賣神。 次に
金山毘賣
かなやまびめの神。
カナヤマ姫の神、
次於
屎成神名
次に
屎くそに成りませる
神の名は、
屎くそでできた
神の名は
波邇夜須毘古神。
〈此神名以音〉
波邇夜須毘古
はにやすびこの神。
ハニヤス彦の神と

波邇夜須毘賣神。
〈此神名亦以音〉
次に
波邇夜須毘賣
はにやすびめの神。
ハニヤス姫の神、
次於
尿成神名
次に
尿ゆまりに成りませる
神の名は
小便でできた
神の名は
彌都波能賣神。 彌都波能賣
みつはのめの神。
ミツハノメの神と

和久產巢日神。
次に
和久産巣日
わくむすびの神。
ワクムスビの神です。
此神之子謂
豐宇氣毘賣神。
〈自宇以下
四字以音〉
この神の子は
豐宇氣毘賣
とようけびめの神といふ。
この神の子は
トヨウケ姫の神
といいます。
     

伊邪那美神者。
かれ
伊耶那美いざなみの神は、
かような次第で
イザナミの命は
因生
火神。
火の神を
生みたまひしに因りて、
火の神を
お生みになつたために

神避坐也。
遂に
神避かむさりたまひき。
遂ついに
お隱かくれになりました。
     
〈自天鳥船
至豐宇氣毘賣神。
并八神〉
(天の鳥船より
豐宇氣毘賣の神まで
并はせて八神。)
天の鳥船から
トヨウケ姫の神まで
合わせて八神です。
     

伊邪那岐
伊邪那美
二神。
およそ
伊耶那岐いざなぎ
伊耶那美の
二神、
 すべて
イザナギ・
イザナミの
お二方の神が、
共所生嶋
壹拾肆嶋。
共に生みたまふ島
壹拾とをまり四島よしま、
共にお生みになつた
島の數は十四、

參拾伍神。

參拾みそぢまり
五神いつはしら。
神は
三十五神であります。
     
〈是伊邪那美神 (こは伊耶那美の神、 これはイザナミの神が
未神避以前
所生。
いまだ神避りまさざりし前に
生みたまひき。
まだお隱れになりませんでした前に
お生みになりました。
唯意能碁呂嶋者。
非所生。
ただ意能碁呂島は
生みたまへるにあらず、
ただオノゴロ島は
お生みになつたのではありません。

姪子與淡嶋
不入子之例也〉
また
蛭子と淡島とは
子の例に入らず。)
また
水蛭子ひること淡島とは
子の中に入れません。

 

神生み② 古事記
上巻 第一部
イザナギとイザナミ
神生み③
カグツチ