古事記 天の岩戸~原文対訳

クソまき 古事記
上巻 第二部
天照の受難
天の岩戸
天安河原
原文 書き下し
(武田祐吉)
現代語訳
(武田祐吉)
天照大御神。 天照らす大御神の 天照らす大神が

忌服屋而。
忌服屋いみはたやに
ましまして
清らかな機織場はたおりばに
おいでになつて
令織
神御衣之時。
神御衣かむみそ
織らしめたまふ時に、
神樣の御衣服おめしものを
織らせておいでになる時に、
穿其服屋之頂。 その服屋はたやの頂むねを穿ちて、 その機織場の屋根に穴をあけて
逆剥
天斑馬剥而。
天の斑馬むちこまを
逆剥さかはぎに剥ぎて
斑駒まだらごまの
皮をむいて
所墮入時。 墮し入るる時に、 墮おとし入れたので、
天衣織女見驚而。 天の衣織女みそおりめ見驚きて 機織女はたおりめが驚いて
於梭衝陰上
而死。
〈訓陰上云富登〉
梭ひに
陰上ほとを衝きて
死にき。
機織りに使う板で
陰ほとをついて
死んでしまいました。
     
故於是
天照大御神見畏。
かれここに
天照らす大御神見み畏かしこみて、
そこで
天照らす大神もこれを嫌つて、
閇天石屋戶而。 天の石屋戸いはやどを開きて 天あめの岩屋戸いわやとをあけて
刺許母理〈此三字以音〉坐也。 さし隱こもりましき。 中にお隱れになりました。
     

高天原皆暗。
ここに
高天たかまの原皆暗く、
それですから
天がまつくらになり、
葦原中國悉闇。 葦原あしはらの中つ國
悉に闇し。
下の世界も
ことごとく闇くらくなりました。
因此而常夜往。 これに因りて、常夜とこよ往く。 永久に夜が續いて行つたのです。
於是萬神之聲者。 ここに萬よろづの神の聲おとなひは、 そこで多くの神々の騷ぐ聲は
狹蠅那須
〈此二字以音〉
皆滿。
さ蠅ばへなす
滿ち、
夏の蠅のように
いつぱいになり、
萬妖悉發。 萬の妖わざはひ
悉に發おこりき。
あらゆる妖わざわいが
すべて起りました。
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