伊勢物語 7段:かへる浪 あらすじ・原文・現代語訳

第6段
芥河
伊勢物語
第一部
第7段
かへる浪
第8段
浅間の嶽

 
 目次
 
 ・あらすじ(大意)
 
 ・原文対照 
 
 ・現代語訳(逐語解説)
 
 

あらすじ

 
 
 むかし男が京を発ち、伊勢と尾張の間の海面(伊勢湾)を行くとき、浪がいと白く立つのをみて、いとどしく(更に東にかけた)の歌を詠んだ。
 

 かへる浪かな≒かえろうかな。ザッツオール。
 
 でもオールじゃなくてセイルやねん。ほぉ~。 
 
 その心は、誰もよーせん(洋船)。
 
 

原文対照

男女
及び
和歌
定家本 武田本
(定家系)
朱雀院塗籠本
(群書類従本)
  第7段 かへる浪 尾張のあはひ
   
 むかし、男ありけり。  むかし、おとこありけり。  昔男ありけり。
  京にありわびて東にいきけるに、 京にありわびて、あづまにいきけるに、 京にありわびて。あづまへゆきけるに。
  伊勢・尾張のあはひの海づらを行くに、 伊勢おはりのあはひのうみづらをゆくに、 伊勢おはりのあはひの海づらをゆくに。
  浪のいと白くたつを見て、 なみのいとしろくたつを見て、 なみのいとしろくたちかへるを見て。
      おもふ事なきならねば。おとこ。
       
♪8 いとゞしく
過ぎ行く方の恋しきに
いとゞしく
すぎゆく方のこひしきに
いとゝしく
過行かたの戀しきに
 うらやましくも
 かへる浪かな
 うらやましくも
 かへるなみ哉
 うらやましくも
 かへる浪哉
       
   となむよめける。 となむよめりける。  
   

現代語訳

 
 

むかし、男ありけり。
京にありわびて東にいきけるに、
伊勢・尾張のあはひの海づらを行くに、浪のいと白くたつを見て、

 

 むかし、男がいた。京にいることが、わびさびしくてとかけ、気落ちして都落ちという心で、あずましく(居心地が良いように)と東に行ったが、
(※あずましくは冗談。普通にみれば、仕事で行っている。任地が三河になった時の話。9段:東下りはそのくだり。○平とは無関係。前段参照)
 

 伊勢と尾張の間の海づら(海面つまり伊勢湾)を行くに、波のいと白く立つのを見て
(なにを意図したか)
 

いとゞしく 過ぎ行く方の 恋しきに うらやましくも かへる浪かな
 
となむよめける。

 
 いとどしく(更に東に・いさましく) 過ぎ行く方の (肩越しの) 
 (湊と都の) 恋しさに 裏ではやましく 帰る心の涙こと 
 

 などと、浪といとどにかけてよんだ。いかがだろうか、並だったろうかと、そんなことを問いかける人もいない。
 ちなみに、湊とは人が集まるところという意味。そしてもちろん津という港にもかけている。
 

 「かえる浪かな」=かえ(る)ろうかな。
 なん津って。ジョークじゃなくてマジでござるよ。マジ=真剣を逆にして剣心。だから普段は不真面目。え、すごくない? (返事がない…)
 っつーことは。著者も普段はふつーにしていたが、本気出した時マジ無双すると。それがこの物語のレベル。だから誰も身元を特定できないわけ。
 しかしその実力の片鱗が、地味~な役人なのになぜか六歌仙。貴族や坊主などの支持母体もなくこの名称。最高の実力者しかありえない。片鱗でこれ。
 そら、伊勢やら伊勢湾やら書けるわけ。実に自然。どこにも無理がない。○平はこの物語で勝手に騒がれ、勝手についてきたオマケ。それが前段の話。