むかし男が京を発ち、伊勢と尾張の間の海面(伊勢湾)を行くとき、浪がいと白く立つのをみて、いとどしく
(更に東にかけた)の歌を詠んだ。
かへる浪かな
≒かえろうかな。ザッツオール。
でもオールじゃなくてセイルやねん。ほぉ~。
その心は、誰もよーせん(洋船)。
男女 及び 和歌 |
定家本 |
武田本 (定家系) |
朱雀院塗籠本 (群書類従本) |
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第7段 かへる浪 尾張のあはひ | |||
♂ | むかし、男ありけり。 | むかし、おとこありけり。 | 昔男ありけり。 |
京にありわびて東にいきけるに、 | 京にありわびて、あづまにいきけるに、 | 京にありわびて。あづまへゆきけるに。 | |
伊勢・尾張のあはひの海づらを行くに、 | 伊勢おはりのあはひのうみづらをゆくに、 | 伊勢おはりのあはひの海づらをゆくに。 | |
浪のいと白くたつを見て、 | なみのいとしろくたつを見て、 | なみのいとしろくたちかへるを見て。 | |
おもふ事なきならねば。おとこ。 | |||
♪8 |
いとゞしく 過ぎ行く方の恋しきに |
いとゞしく すぎゆく方のこひしきに |
いとゝしく 過行かたの戀しきに |
うらやましくも かへる浪かな |
うらやましくも かへるなみ哉 |
うらやましくも かへる浪哉 |
|
となむよめける。 | となむよめりける。 | ||
むかし、男ありけり。
京にありわびて東にいきけるに、
伊勢・尾張のあはひの海づらを行くに、浪のいと白くたつを見て、
むかし、男がいた。京にいることが、わびさびしくてとかけ、気落ちして都落ちという心で、あずましく(居心地が良いように)と東に行ったが、
(※あずましくは冗談。普通にみれば、仕事で行っている。任地が三河になった時の話。9段:東下りはそのくだり。○平とは無関係。前段参照)
伊勢と尾張の間の海づら(海面つまり伊勢湾)を行くに、波のいと白く立つのを見て
(なにを意図したか)
いとゞしく 過ぎ行く方の 恋しきに うらやましくも かへる浪かな
となむよめける。
いとどしく(更に東に・いさましく) 過ぎ行く方の (肩越しの)
(湊と都の) 恋しさに 裏ではやましく 帰る心の涙こと
などと、浪といとどにかけてよんだ。いかがだろうか、並だったろうかと、そんなことを問いかける人もいない。
ちなみに、湊とは人が集まるところという意味。そしてもちろん津という港にもかけている。
「かえる浪かな」=かえ(る)ろうかな。
なん津って。ジョークじゃなくてマジでござるよ。マジ=真剣を逆にして剣心。だから普段は不真面目。え、すごくない? (返事がない…)
っつーことは。著者も普段はふつーにしていたが、本気出した時マジ無双すると。それがこの物語のレベル。だから誰も身元を特定できないわけ。
しかしその実力の片鱗が、地味~な役人なのになぜか六歌仙。貴族や坊主などの支持母体もなくこの名称。最高の実力者しかありえない。片鱗でこれ。
そら、伊勢やら伊勢湾やら書けるわけ。実に自然。どこにも無理がない。○平はこの物語で勝手に騒がれ、勝手についてきたオマケ。それが前段の話。