紫式部集 第五部:転機

詳解
定家本
和歌 人物
49 世とともに 荒き風吹く 西の海も
 磯辺には 寄せずとや見し
門叩き帰りにける人
50 かへりては 思ひ知りぬや 岩角に
 浮きて寄りける 岸のあだ
紫式部
51 誰が里の 春の便りに 鴬の
 霞に閉づる 宿を訪ふらむ
紫式部

異52
折からを ひとへにめづる 花の色は
 薄きつつ 薄きとも
52
異53
消えぬ間の 身をも知る知る 朝顔の
 露と争ふ を嘆くかな
紫式部
53
異54
若竹の 生ひゆく末を 祈るかな
 このを憂しと 厭ふものから
紫式部
54
異55
数ならぬ をば まかせねど
 にしたがふは なりけり
紫式部
55
異56
だに
 いかなるにか かなふらむ
 思ひ知れども 思ひ知られず
紫式部