奥の細道 金沢:原文対照



『おくのほそ道』
素龍清書原本 校訂
『新釈奥の細道』
   卯の花山、くりからが谷を越えて、 卯花山くりから谷を越て
  金沢は七月中の五日なり。 金澤は七月中の五日也
  ここに大坂より通ふ商人、 爰に大坂よりかよふ商人
  何処といふ者あり。 何處處ハ某ノ誤リナリといふ者は一本いふ者ありトアリ
  それが旅宿をともにす。 それが旅宿をともにす
     
  一笑といふ者は、 一笑といふもの一本はヲ入レタリ
  この道に好ける名の、ほのぼの聞こえて、 此道にすける者のほの〴〵聞へて
  世に知る人も侍りしに、 世にしる人も待しに
  去年の冬早世したりとて、 去年の冬早世したりとて
  その兄追善を催すに、 其兄追善をもよほすに

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 塚も動け 我が泣く声は 秋の風  塚も動け 我泣聲は 秋の風
  ある草庵にいざなはれて ある艸庵にいざなはれて

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 秋涼し 手ごとにむけや うりなすび  秋凉し 手每にむけや 瓜茄子
  途中吟 途中吟

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 あかあかと 日はつれなくも 秋の風  あか〳〵と 日はつれなくも 秋の風
  小松といふ所にて 小松といふ所にて

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 しをらしき 名や小松 吹く萩薄  しほらしき 名や小松 吹萩薄