徒然草12段 同じ心ならん人と:原文

神無月のころ 徒然草
第一部
12段
同じ心
ひとり灯

 同じ心ならん人としめやかに物語して、をかしきことも、世のはかなきことも、うらなく言ひ慰まんこそうれしかるべきに、さる人あるまじければ、つゆ違はざらんと向かひゐたらんは、ひとりある心地やせん。
 

 互ひに言はんほどのことをば、「げに」と聞くかひあるものから、いささか違ふところもあらん人こそ、「我はさやは思ふ」など言ひ争み、「さるから、さぞ」ともうち語らば、つれづれ慰まめと思へど、げには、少しかこつ方も、我と等からざらん人は、おほかたのよしなしごと言はんほどこそあらめ、まめやかの心のともには、はるかに隔たる所のありぬべきぞ、わびしきや。