枕草子259段 さかしきもの

ことば 枕草子
下巻上
259段
さかしき
ただ過ぎに

(旧)大系:259段
新大系:240段、新編全集:241段
(以上全て三巻本系列本。しかし後二本の構成は2/3が一致せず混乱を招くので、以後は最も索引性に優れ三巻本理論の根本たる『(旧)大系』に準拠すべきと思う)
(旧)全集=能因本:234段
 


 
 さかしきもの 今様の三歳児。ちごの祈りし、腹などとる女。
 

 ものの具ども請ひ出でて、祈り物作る、紙をあまたおし重ねて、いとにぶき刀して切るさまは、一重だに断つべくもあらぬに、さるものの具となりにければ、おのが口をさへひきゆがめておし切り、目多かるものどもして、かけ竹うち割りなどして、いと神々しうしたてて、うち振るひ祈ることども、いとさかし。
 かつは、「なにの宮、その殿の若君、いみじうおはせしを、かい拭ひたるやうにやめたてまつりしかば、禄を多く賜りしこと。その人かの人召したりけれど、験なかりければ、いまに嫗をなむ召す。御徳をなむ見る」など語りをる顔もあやし。
 

 下衆の家の女あるじ。痴れたる者、それしもさかしうて、まことにさかしき人を教へなどすかし。
 
 

ことば 枕草子
下巻上
259段
さかしき
ただ過ぎに